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  1. 士業に役立つ不動産評価まめ知識
 

士業に役立つ不動産評価まめ知識

2021/06/30
6/29の日経新聞に
「電通グループ、本社ビル売却益890億円」
という記事が掲載されていました。

「東京・汐留の「電通本社ビル」の売却の検討に入った」

「営業損益で約870億円、
最終損益で約590億円の押し上げ要因になる」

売却後も11年間の賃貸借契約を結び、
ビルの大部分は電通グループが使い続ける予定」
とのことです。

【セールアンドリースバック】

自社ビル等の不動産や機械設備等を売却し、
その買手から当該物件のリースを受ける取引です。

■キャッシュフローや資本効率の向上
 借り入れをせずに手元資金を確保でき、
 バランスシートのスリム化等も期待できます。

■物件の継続使用・事業の継続が可能
 売却とリースバックの契約を同時に結ぶため、
 そのままこれまでとおり物件の継続使用ができます。

■売却損益の計上
 売却損益が出ますので、決算に大きな影響があります。

中小企業の場合でも、
セールアンドリースバックは普通に検討され、
売却損益の計上で決算(税額)が大きく変わることが
インパクトとして受け止められることが多いです。

また、売却先の選定や賃料の設定如何で、
事業承継・相続対策として活用されるケースも見られます。

【鑑定士的な視点から】

 簿 価    譲渡益   売買価格
1,790億円 + 890億円 = 2,680億円

別の記事でも、
「東証1部2部上場企業の不動産売却調査では、
2001年以降、売却額で国内最大規模
と記載されていて、
どのように価格決定されたのか非常に興味深いです。

不動産鑑定士は、適正な売却価格の評価
リースバックの適正賃料の評価を行います。

どんな資料や利回りに基づいて評価したのか、
見られるものなら見てみたいと思います。

【個人の住宅でも】

似たような仕組みとして
「リバースモーゲージ」があります。

自宅に住み続けながら、
その自宅を担保に老後資金を借りることができる
というものです。

リバースモーゲージの担保評価も
不動産鑑定士が関与することがあります。

2021/06/29
6/28の日経新聞に
「中小M&A仲介にルール
登録制や自主規制で悪質業者排除」
という記事が掲載されていました。

「後継者不足などで企業再編の需要が高まるが、
悪質な仲介業者によるトラブルも目立つ。」

提示された買い取り価格は訪問のたびに上がり、
いつの間にか当初の3倍になったが、逆に不信感が募った。
価格の算出方法などわからないことだらけ。
買い手のことしか考えていないようにみえた」。」

【不動産評価の現状】

一般的には会計士さんや税理士さん等がメインとなり、
会計・税務・財務面の検討は
詳細に行われていることが多いですが、
不動産の評価まで詳細に行われていることは少ないです。

■固定資産評価額を活用するケース
・土地建物とも、評価額そのままを採用。
・土地は0.7で割り戻し、建物はそのまま。

■相続税評価額を活用するケース
・土地は、財産評価基本通達に基づき評価(8割評価)。
・建物は、通達に従い、固定資産評価額を採用。

【不動産評価の問題点】

固定資産評価額や相続税評価額には、
以下のような問題点があります。

不動産がほとんどない会社や、
あったとしてもわずかな場合は影響も軽微ですが、
不動産取引を目的とするM&A(不動産M&A)
社歴が古く不動産を多数所有する会社などでは
M&A価格に大きく影響してしまうことがあります。

・土地を時価水準に割り戻ししていない。
 固定資産評価額は7割、相続税評価額は8割水準です。
都市部の土地は、実勢価格より安く、割安傾向。
地方の農家集落地等は、実勢価格より高く、割高傾向。
・建物は、新築時ほど割安で、古くなるほど割高になっている。
大規模修繕の有無維持管理の良否が全く反映されていない。
・収益物件であっても、賃貸収入の多寡が全く反映されていない。
・土地建物それぞれに算出しているだけで、
 複合不動産として一体的な目線での検討が行われていない。

このような問題点を洗い出して精査してみると、
不動産の評価が倍半分以上変わることも
決して珍しくありません。

【まとめ】

相互の信頼関係を構築するためには、
適切な評価を行うことが大切です。

M&A(株価)であっても、
なぜその価格になっているのか。
しっかり前提条件と算定内訳を見ていくことが重要です。

2021/06/28
近年は日本の農業が見直され、
法人の農業への参画も増えてきています。

今回は傾斜地勢の農業用施設用地の評価について、
相続税評価額と現実の売買価格(時価)を
比較してみようと思います。

通達評価は画一評価であるため、
相続税評価額と時価が大きく乖離してしまい、
問題となるケースがあります。

今回はやや特殊なケースではありますが、
その評価額が時価として妥当性を有するかどうか
常に確認することが大切です。

【農業用施設用地とは?】

農業用施設の用に供されている宅地です。

農業用施設には、畜舎、蚕室、温室、
農産物集出荷施設、農機具収納施設などが該当します。

【財産評価基本通達24-5】

通達評価では、
農地としての価格+宅地造成費=農業用施設用地の価格
となります。

<試算例>
・通常の農地としての価格:500円/㎡
・地 積:3,000㎡

<通常の農地としての価格>
 500円/㎡ × 3,000㎡ = 1,500,000円

<農業用施設用地としての価格>
・傾斜度:3度超5度以下
 (500円/㎡ + 18,600円/㎡)× 3,000㎡ = 57,300,000円

・傾斜度:25度超30度以下
 (500円/㎡ + 59,100円/㎡)× 3,000㎡ = 178,800,000円

農業用施設用地として評価をすると、
通常の農地としての価格よりはるかに高い評価額になります。

ここで注目して頂きたいのは、
傾斜度が大きいほど宅地造成費が高くなり、
結果として相続税評価額が高くなっています。

しかし、現実の売買価格(時価)としてはどうでしょうか。
傾斜度が大きいほど利用効率が悪くて需要が無く、
現実の売買価格(時価)は逆に低くなることの方が
多いのではないでしょうか。

【まとめ】

財産評価基本通達はよくできていますが、
どうしても画一化された評価であるため、
現実とかけ離れた評価になることもあります。

通達だから大丈夫と安易に評価してしまうと、
過大な評価額(税額)となる場合もあり、
時価として妥当かどうかのチェックが大切です。


2021/06/25
6/23の日経新聞1面に
「土砂崩れ、市街地に危険」
という記事が掲載されていました。

全国の「市街地にある住宅92万戸
土砂災害を警戒すべき区域に建っている」

「日本は近年、気候変動の影響で
頻繁に豪雨に見舞われて」いる。

「土砂災害警戒区域に指定されても、
新たな開発への規制はない。
危険度の高い「特別警戒区域」でも、
安全対策などの規制をクリアすれば
開発は許可されてきた。」

「北九州市は土砂災害の
恐れがある斜面の住宅地について、
現状は市街化区域であっても、
住宅建設を規制する「市街化調整区域」へと
見直す方針を打ち出した。」

【土砂災害(特別)警戒区域】

■土砂災害警戒区域(イエローゾーン)
評価における減価率は、±0〜▲10%が中心です。

固定資産評価でも±0〜▲10%までが大半ではないでしょうか。

一方、国税の通達では、減額補正はありません。

土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価では、
宅地としての利用は法的に制限されない
土地価格の水準に既に織り込まれている
との理由が記載されています。

仮に、土地価格の水準に
織り込まれていない場合はどうなるのか。
路線価図だけでは織り込み有無の判断は難しいですが、
適用の余地はわずかながら残るのかもしれません。

現実の取引であれば、
イエローゾーンであっても、
指定の有無は一定の影響があると思われます。

■土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)
評価における減価率は、▲30%程度が中心です。

固定資産評価では、敷地の一部でも
レッドゾーンに指定されていたら、
敷地全体について減価を適用するところが多いです。

国税の通達では、面積割合に応じて▲10%〜▲30%
がけ地補正率も乗じた最大で▲50%です。

開発指導要綱等で
現実的には開発不可の場合も多く、
そもそも宅地の価格から減価をするのではなく、
実質的に市街地山林と同視できる場合もあります。

【区域の指定】

以前は指定されていなくても、
指定区域はどんどん増えていっていますので、
現在は指定されている可能性もあります。

また、現在指定されていなくても、
指定には地元との協議など時間がかかるので、
実質的にはイエローないしレッドゾーンに
該当する場合もありますので注意が必要です。

物件調査の際に、周辺に山や傾斜地があれば、
まずは土砂災害(特別)警戒区域の指定の有無を
調べることが大切です。

「○○市 土砂災害」と検索すれば、
ネットでも簡単に調べることができます。
(最新の指定状況ではないこともあります)


2021/06/22
6/11の京都新聞に
「観光客激減の京都、でもホテル開業ラッシュ
ワクチン進み攻めの投資」
という記事が掲載されていました。

「新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、
京都市内でホテルの新規開業が相次いでいる。
インバウンド(訪日外国人客)は激減して、
開店休業状態のホテルも多いが、
ワクチン接種が着実に進む状況を受け、
秋以降に観光需要が一定回復するとの見方が台頭。」

「各ホテルはコロナ後をにらみ、
国内観光需要の取り込み準備に余念が無い。」
とのことです。

【地価LOOKレポート(国土交通省)】

令和3年第1四半期(R3.1.1〜R3.4.1)の
京都の商業地については、

■京都駅周辺
新型コロナウイルス感染症収束後を見据えた
新規開設需要も見られるものの、
投資家等は今後の開発動向を視野に入れつつ
不動産市況を冷静に見ている。

■河原町
感染拡大収束後を見据えた
出店計画、収益ビルの取得需要も散見される。

■烏 丸
感染拡大収束後を見据えた店舗の出店や
オフィスの拠点設置等の動きが継続している。

【国内需要の取り込み】

地価LOOKによると、京都の商業地では
新型コロナウイルス感染症収束後を見据えた動き
随所に出てきています。

京都のホテルについても、
これまでのようなインバウンド需要のみではなく、
まずは国内需要を取り込み
将来的なインバウンド需要の回復を
期待する流れが基本となっているようです。

【伏見稲荷大社】

京都でインバウンド需要が強かった場所といえば
伏見稲荷大社が挙がるのではないでしょうか。

「外国人に人気の観光スポットランキング」等で
日本で最も訪日外国人に人気の観光地となっていました。

ホテルは攻めの姿勢(国内需要の取り込み)で
市内中心部の商業地の地価は横ばい傾向ですが、
インバウンド需要が特に強かった
伏見稲荷大社などの地域では、
引き続き需要が弱い状態が続くものと予想されます。


2021/06/18
国土交通省から令和3年6月に発表された
地価LOOK令和3年第1四半期(1/1〜4/1)
近畿圏について詳しく見ていこうと思います。

【全国概況】

「前期と比較すると、下落地区数及び
横ばい地区数が減少し、上昇地区数が増加した。」

令和2年第4四半期(10/1〜1/1)に続き、
地価は回復傾向が続いています。

「用途別では住宅系
商業系より上昇地区の割合が高くなった。」

「住宅地では、マンションの販売状況が堅調な中、
事業者の素地取得の動きが回復している地区が増加している。」

「商業地では、法人投資家等による取引の動きが戻り
横ばい・上昇に転じた地区が見られる。
新型コロナウイルス感染症の影響により、
店舗等の収益性が低下し下落が継続している地区があるものの、
下落地区数は減少した。」

住宅地は総じて引き続き堅調で、
商業地も需要の回復傾向が見えてきました。

まだ地価の下落が継続している地域はあるものの、
もう「コロナだから…」という安易な理由
地価下落と言えなくなってきています。

実際に近畿圏ではどのようになっているのでしょうか?

【近畿圏の動向】

■滋賀県
住宅地 南草津駅周辺 0%横ばい
商業地 調査地区設定なし

■京都府
住宅地 下鴨 0%横ばい
    桂  0%横ばい(前期0〜3%下落
    二条 0%横ばい(前期0〜3%下落

商業地 京都駅周辺 0%横ばい(前期0〜3%下落
    河原町   0%横ばい(前期0〜3%下落
    烏丸    0%横ばい(前期0〜3%下落

■大阪府
住宅地 豊中  0%横ばい
    天王寺 0〜3%上昇(前期0〜3%下落
    福島  0〜3%上昇(前期0〜3%下落

商業地 西梅田  0〜3%下落
    中之島西 0〜3%下落
    北浜   0〜3%下落
    OBP     0〜3%下落
    新大阪  0〜3%下落
    阿倍野  0〜3%下落
    江坂   0〜3%下落
    茶屋町  3〜6%下落
    心斎橋  3〜6%下落
    なんば  3〜6%下落

■兵庫県
住宅地 六甲   0〜3%上昇
    甲子園口 0〜3%上昇
    芦屋   0〜3%上昇

商業地 西宮北口 0〜3%上昇
    三宮駅前 0〜3%下落

■奈良県
住宅地 奈良登美ヶ丘 0%横ばい
商業地 調査地区設定なし

■和歌山県
調査地区設定なし

【前期からの変動】

近畿圏では、概ね前期(第4四半期)と
同じ地価動向の地区が多かったです。

一方、京都府では下落から横ばいに持ち直し、
大阪府では住宅地が下落から地価上昇傾向に反転し、
兵庫県は三宮駅前の商業地を除き
前期からの地価上昇傾向が継続しています。

<京都府>
前期0〜3%下落の地区が多かったですが、
今期は全て横ばいに持ち直しました。

住宅地は、そもそも新型コロナの影響は限定的で小さく
需給関係に大きな変化が見られない状況です。

商業地は、新型コロナの影響が継続しているものの、
感染終息後を見据えた店舗や事業所の出店、
投資や開発目的の需要がより顕在化してきています。

<大阪府>
福島と天王寺の住宅地が地価上昇傾向に転じました。

福島は「(仮称)うめきた2期地区開発事業」の工事や、
周辺の整備事業の進捗の影響もあり、
今後もマンション開発素地や商業施設用地の
需要は強くなると予想されます。

天王寺は根強い需要が認められるほか、
富裕層向けのマンション需要が旺盛で、
マンション開発素地としての需給が逼迫しています。

<兵庫県>
唯一の下落となった三ノ宮駅の商業地は、
立地条件の良さのため売り急ぐ動きは特に見られず、
取引は限定的な状態が続いています。

とはいえ、店舗賃料はやや下落傾向が続いており、
ホテルの稼働率悪化から、ホテル用地需要も
新規出店意欲が減退して弱まった状態が続いているため
やや下落した地価動向となりました。


2021/06/11
「相続税評価で、宅地の評価倍率が
1.1となっているのはどうしてですか?」

【評価倍率1.1の理由】

相続税評価額 :公示地価の80%水準
固定資産評価額:公示地価の70%水準

対象地の固定資産評価額を
相続税評価額の水準に合わせるために
70 × 1.1 = 77 ≒ 80
となるからです。

【公的価格バランス】

公示地価・基準地価を100=時価として、
相続税評価は80、固定資産評価は70
水準となっています。

■相続税路線価
路線価等は、1月1日を評価時点として、
1年間の地価変動などを考慮し、
地価公示価格等を基にした価格(時価)の
80%程度を目途に評価しています。

■固定資産評価
平成6年度の評価替えから、
土地基本法第16条や総合土地政策推進要綱等に基づく
「公的土地評価の均衡化・適正化」の要請により、
当時の相続税評価との均衡や、
昭和50年代の地価安定期における
地価公示価格に対する固定資産税の評価額の割合等から、
宅地の評価については地価公示価格等の
7割を目途に評価を行うこととされました。

【地目「雑種地」に注意】

雑種地の固定資産評価額に
そのまま宅地の評価倍率を乗じて
相続税評価額を出すことは、
適正な評価額とならない場合が多く、
否認されるリスクが非常に高くなります。

国税不服審判所平成16年3月31日裁決など、
雑種地の固定資産評価額に宅地の評価倍率を乗じて
否認された事例もあります。

<イメージ例>
宅地としての時価水準(100%水準)を
1,000万円とします。

宅地としての固定資産評価額(70%水準)は
1,000万円 × 70% = 700万円 となります。

雑種地としての固定資産評価額は、
仮に雑種地補正0.60とすると、
700万円 × 0.60(雑種地補正)= 420万円 です。
(利用状況や市町村によって減額割合は異なります)

宅地の評価倍率1.1倍を適用すると、
700万円 × 1.1倍 = 770万円(80%水準)
420万円 × 1.1倍 = 462万円(50%水準)

雑種地の固定資産評価額は、
地目補正が適用されて減額されているケースが多く、
雑種地の固定資産評価額に宅地の評価倍率を乗じると
このように大きな乖離が生じてしまいます。

特に、現況が宅地と類似する利用状況の場合や、
登記地目は「宅地」なのに、
課税地目が「雑種地」となっている場合など、
その固定資産評価額がどのように算定されているか
しっかり確認することが大切です。


2021/06/10
「不動産に抵当権が設定されているのですが、
評価に影響はありますか?」

【抵当権の評価への影響】

抵当権が設定されていることによる
鑑定評価額への影響は、基本的にありません。

「抵当権は減価要因ではない」ということです。

抵当権が交換価値を把握する権利で、
権利割合が変わるわけでもなく、
使用収益を制約するようなものでもないからです。

【登記簿乙区】

抵当権は価格に影響を及ぼさないため、
極論を言うと、評価にあたって
乙区欄の抵当権は読み飛ばしても大丈夫
ということになります。

一方、借地権(地上権・賃借権)、区分地上権、
地役権の設定の有無は価格に大きく影響するので、
しっかり確認する必要があります。

もちろん実務上は
抵当権を読み飛ばすことはなく、
各債権者の立ち位置や利害関係等について
確認することになります。

【金融機関(抵当権者)との関係】

抵当権が設定されていても、
不動産を自由に使うことができます。

処分も自由にできないわけではないですが、
実務的には優先弁済権を有する
金融機関と協議し、その同意を得た上で
売却することが一般的だと思います。

特に、共同担保となっている場合など
金融機関との協議が整わないと
現実的には売却困難となるケースもあります。

このような場合、
抵当権がない物件と抵当権がある物件で
現実的には差異があるようにも感じます。

【民法第369条】

「抵当権者は、債務者又は第三者が
占有を移転しないで
債務の担保に供した不動産について、
他の債権者に先立って
自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」


2021/06/09
6/7の朝日新聞で、
「関電、元助役側から高値で土地を賃借
という記事が掲載されていました。

「資機材置き場として
高値で借りていたことが分かった。
関係会社側が得る収入は相場の2倍超だった。
関電関係者によると、
社内で賃料の高さが指摘され、
関電はこの賃貸借契約を今年3月に解除した。」
とのことです。

関電に対して何か言いたいのではなく、
昔からの土地賃貸借契約についてのみ取り上げます。

【問題の所在】

昔からの土地賃貸借契約については、
改めて賃料をチェックした結果、
現在では適正とはいえない内容
なっている場合があります。

今後どのように見直していけばよいのか。
しっかり検討していく必要があります。

■契約当初は適正だったが、現在は不適正

契約当初は適正な地代となっていても、
その後の経済情勢の変動により、
割高・割安な地代となっていることがあります。

適正な範囲(幅)の間であればよいのですが、
著しく割高・割安の場合は見直しが必要です。

地代が割高・割安であることは、
当該土地価格(底地・借地権価格)に大きな影響があるほか、
地代支払いというキャッシュフローにも影響し、
最悪の場合は寄付や利益供与と言われるリスクも。

■契約当初から適正ではなく、現在も不適正

契約当初から、なんらかの事情や意図
割高・割安に地代が設定されているケースです。

本来は他の理由での金銭授受なのに、
土地賃貸借契約に含めてしまっていることがあります。

地代の定め方は下記のとおりですが、一般的には
適正な範囲を超えた土地価格or利回り
に基づいて地代が決まっています。

今回の関電のケースは、新聞報道によると
こちらの可能性があるということです。
(詳細の内容については不明です。)

【賃料の定め方】

地代の賃貸事例は、売買事例と違って
収集するのが難しく、そもそもの件数も少ないです。

そのため、新規地代の定め方としては、
鑑定評価における積算法を適用することが多いです。

土地価格 × 利回り + 公租公課 = 地代
土地価格 × 利回り(粗利回り) = 地代

とてもシンプルな計算式です。
土地価格も利回りも適正な範囲であれば、
求められる地代も適正な範囲となります。

問題が生じているケースは、
土地価格or利回りが、著しく高いor低い。
ここに集約されます。
(一時金を多額or少額にするケースもあります。)

【まとめ】

以前からの土地賃貸借契約について、
現時点で見ても適正な内容となっているか。
数年に一度はチェックすることをオススメします。


2021/06/07
「境界が未確定であることは、
土地の価格に影響がありますか?」

境界、筆界、所有権界など、
土地家屋調査士さんが活躍される分野です。

いわゆる境界が決まっていない、不明である、
明らかではない、境界紛争が起こっているなど、
土地の価格にどのような影響があるのでしょうか。

【価格への影響】

境界未確定であることは、
減価要因になる場合があります。

「場合がある」というのは、
個別的要因として個々の評価の際に減価する場合と、
地域の価格水準に織り込まれている等の理由から
個別的要因としては減価しない場合があるという意味です。

いずれにせよ、境界が確定している場合と比べ
境界未確定がマイナスの影響があることは明白です。

【評価に際しての考え方】

■周辺の不動産の境界が確定している場合

新しく分譲された住宅地や
地籍調査などで境界が確定している地域では、
標準的な土地(大半の土地)は境界確定しています。

このような地域の中にある境界未確定の土地は、
標準的な土地が境界確定されていることから、
個別的要因として個々の評価の際に減価が発生します。

■周辺の不動産も境界未確定の場合

古くからの農家集落地域などでは、
標準的な土地(大半の土地)は境界未確定です。

このような地域の中にある境界未確定の土地は、
標準的な土地も境界未確定であることから、
個別的要因としては評価の際に減価を行わないことが多いです。
地域の価格水準に既に織り込まれていると考えられるからです。

■境界紛争

境界紛争が起きているor起きる可能性が高い場合は、
通常の境界未確定の場合より減価の程度は大きくなります。

【相続税の物納】

境界未確定であることは、
地積増減の可能性、取引の際に問題が生じる可能性、
将来的な境界紛争の可能性など危険がいっぱいです。

さらに、相続税を払うために
土地を物納しようとしても、
境界未確定である場合は物納できません。

■国税庁 No.4214 相続税の物納
管理処分不適格財産
次に掲げるような財産は、物納に不適格な財産となります。
イ 不動産
(ハ) 境界が明らかでない土地

【まとめ】

以上のとおり、境界未確定であることは、
様々な問題が生じるリスクがあるため
土地の価格にマイナスの影響があります。

ただ、マイナスをどのように考慮するかは、
地域の標準的な土地と比べる必要があります。

みんなスーツを着ている中でパジャマは個性ですが、
みんなパジャマの中でパジャマを着ているのは普通です。

なお、境界問題で困った場合は、
不動産鑑定士ではなく、土地家屋調査士さんへ


2021/06/06
「そもそも鑑定評価ってなんですか?」

【鑑定評価とは】

鑑定評価とは、法律でも基準でも、
不動産の経済価値を判定し、
価格(賃料)として表示すること です。

ただ、これだけだと
誰でもできてしまうような気もしますよね。

■不動産の鑑定評価に関する法律(第2条)
不動産の鑑定評価とは、
「不動産の経済価値を判定し、
その結果を価額に表示することをいう。」

■不動産鑑定評価基準(総論・第1章第3節)
「不動産の鑑定評価は、
その対象である不動産の経済価値を判定し、
これを貨幣額をもって表示することである。」

【鑑定評価の手順】

鑑定評価の手順は、
不動産鑑定評価基準に定められています。

■不動産鑑定評価基準(総論・第8章)
① 鑑定評価の基本的事項の確定
② 依頼者、提出先等及び利害関係等の確認
③ 処理計画の策定
④ 対象不動産の確認
⑤ 資料の収集及び整理
⑥ 資料の検討及び価格形成要因の分析
⑦ 鑑定評価の手法の適用
⑧ 試算価格又は試算賃料の調整
⑨ 鑑定評価額の決定並びに鑑定評価報告書の作成

けっこういろんな手順があるんだなと
思って頂けるでしょうか。

どんな資料を集めるのか。
その資料や価格形成要因をどう分析するのか。
どのように鑑定評価の手法を適用するのか。

評価主体によって考え方が違う場合もあり、
これらの違いが結果の違いに直結していきます。

【練達堪能な専門家】

このような鑑定評価の手順を
適切に行って、適正な判定を行うためには、
やはり練達堪能な専門家である必要があります。

■不動産鑑定評価基準(総論・第1章第3節)
「鑑定評価は、高度な知識と豊富な経験及び
的確な判断力を持ち、さらに、
これらが有機的かつ総合的に発揮できる
練達堪能な専門家によってなされるとき、
初めて合理的であって、
客観的に論証できるものとなるのである。」

【まとめ】

“鉛筆なめなめ”などと
揶揄されることもある鑑定評価。

こうやって概要を見るだけでも、
様々な資料を集めて分析して、
しっかり評価していると思いませんか??


2021/06/03
「小規模宅地等の特例を適用する土地について、
鑑定評価で相続税評価額を
適正に見直すことはできますか?」

【小規模宅地等の特例は“天敵”】

小規模宅地等の特例を適用する土地は、
鑑定評価をするメリットが無いことがほとんどです。

小規模宅地等の特例は、
まさに「特例」として相続税評価額を下げるもので、
特例が適用されるからといって、
土壌汚染など具体的な減価があるわけではありません。

鑑定評価においては、
具体的な減価の要因がないものを
勝手に減価することはできないため、
小規模宅地等の特例は
鑑定評価の“天敵”となってしまうのです。

【小規模宅地等の特例の減額割合】

小規模宅地等の特例を適用するための要件は、
ざっくりいうと
被相続人または生計一親族の
事業用または居住用の宅地等で、
建物または構築物の敷地であること です。

この要件に該当すると、
限度面積はあるものの、
▲50%〜▲80%もの大きな減価となります。

しかし、鑑定評価においては、
被相続人等の事業用・居住用の建物敷地であることは
全く減価の要因にはなりません。
減額割合ゼロです。

【遺産分割における注意点】

小規模宅地等の特例は、
相続税評価額を下げる(相続税額を下げる)ためには
非常に大きな効果があるものです。

しかし、当該土地に
具体的な減価が発生しているわけではなく、
本来的な資産価値(時価)には全く影響がありません。

そのため、遺産分割をされる場合、
特に裁判や調停など分割方法でもめている場合は、
本来的な資産価値(時価)との乖離にご注意ください。

小規模宅地等の特例を適用した相続税評価額を
適正な「時価」であると主張されるケースも散見されます。

その価格(相続税評価額)が
どのような前提で評価されているのか、
しっかり見ていくことが大切です。

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