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  1. 士業に役立つ不動産評価まめ知識
 

士業に役立つ不動産評価まめ知識

2021/05/24
「競売の評価書の評価額を
時価と考えてもよいでしょうか」

このようなご質問も良く頂きます。

【競売の評価額≠時価】

競売の評価額を、
時価として取り扱うことはできません。

競売不動産の評価は、競売市場における
売却基準価額を定めるためのものですので、
一般の鑑定での正常価格(時価)とは異なり、
競売特有の価格形成要因を考慮する必要があります。

競売の評価書では、評価の最後に
「競売市場修正」がなされていることが
最も大きな違いです。
(途中までの評価は一般の鑑定と同様です。)

【競売市場修正】

地域や物件により異なりますが、
概ね▲30%〜▲50%程度の減価がされています。

通常評価 1,000万円=時価
競売評価 1,000万円×0.60(競売市場修正)=600万円
というイメージです。

 ① 事前に立ち入って内部を確認できないこと
 ② 売主(所有者)の協力が得られないこと
 ③ 引渡しを受けるために法定の手続きが必要な場合があること
 ④ 早期売却のため売出し期間が限られること
 ⑤ 保証金の提供、短期間に代金全額を納付する必要があること

このような理由により、競売の評価は、
一般の評価(時価)とは異なることになります。

「民事執行の実務 不動産執行編 上」
東京地方裁判所民事執行センター実務研究会編著
金融財政事情研究会発行でも、下記のとおり記載があります。

「競売不動産の評価は,競売市場における最低売却価額
(平成16年法改正前)を定めるためのものであるから,
一般の鑑定におけるいわゆる正常価格
(一般市場において形成される価格)とは異なり,
競売特有の価格形成要因を考慮する必要がある。」

【正常価格(時価)とは?

不動産鑑定評価基準によると、下記のとおりです。
競売市場の前提とは異なっていることがわかります。

正常価格とは、市場性を有する不動産について、
現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる
条件を満たす市場で形成されるであろう
市場価値を表示する適正な価格をいう。

この場合において、現実の社会経済情勢の下で
合理的と考えられる条件を満たす市場とは、
以下の条件を満たす市場をいう。

(1)市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加し、
   参入、退出が自由であること。
(2)取引形態が、市場参加者が制約されたり、
   売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような
   特別なものではないこと。
(3)対象不動産が相当の期間市場に公開されていること


2021/05/20
「相続と売買がようやく終わったのに、
公衆用道路で非課税になっていた
私道が出てきてしまいました。
どうしたらいいでしょうか?」

【固定資産評価証明書】

非課税の私道の場合、
固定資産評価証明書(課税明細書等)に
載っていないことがあります。
(市町村により異なります)

非課税についても記載するよう申請するか、
全物件が載っている名寄帳等を見る必要があります。

売買や相続等の場合、非課税私道を失念し、
私道以外の不動産だけで
手続きを進めてしまうことにもなりかねません。

後から気が付いてビックリ!どうしよう…。
というのは、けっこう“あるある”です。

【私道の評価】

後から気が付いて私道だけの譲渡をする場合、
今度はいくらにすれば良いのかが問題になります。

「土地価格比準表」(七次改訂・地価調査研究会編著)
によると、標準住宅地域の私道減価として
以下のとおり記載されています。

準公道的私道  ▲80%以上
共用私道    ▲50%〜▲80%
専用私道    減価の記載なし

普通に考えると、私道なんて全く価値が無く、
ゼロでいいじゃないかと思ってしまいますし、
実際の取引ではそのような場合も多いです。

今回の場合は、公衆用道路になっているため、
不特定多数の者の通行の用に供されていることが推認されますので、
準公道的私道もしくは共用私道に該当する可能性が高いです。

ただ、私道といってもいろんな種類があり、
すぐに宅地に戻して普通に宅地利用できる私道もあれば、
将来的にずっと道路になっている私道もあります。

将来的にずっと私道ならゼロ評価でしょうが、
すぐに宅地に戻せる私道がゼロっておかしいですよね。

このような「宅地転化の可能性」によって
私道の価値は大きく変わってきます。

建築基準法上の道路かどうか、
どのような道路に指定されているかで
宅地転化の可能性がどれくらいか調べることができます。


2021/05/19
「地代家賃の増減額請求をしたいのですが、
直近合意時点とは何ですか?」

現在の地代家賃を増額・減額したい場合、
直近合意時点から現時点までの
経済情勢等の変動を考慮して、改定賃料が決まります。

そのため、直近合意時点がいつになるかは
改定賃料に大きな影響があります。

なお、この場合の賃料の鑑定評価を
「継続賃料」の鑑定評価といいます。

【直近合意時点】

直近合意時点とは、契約当事者間で
現行賃料を合意しそれを適用した時点です。

「継続賃料の鑑定評価は、原則として、
直近合意時点から価格時点までの事情変更を考慮
するものであり、直近合意時点は
事情変更を考慮する起点となるものである。」
とされています。

しかし、「現行賃料を定めた時点」の
判断基準が必ずしも明確ではなく
時点の捉え方次第で
結果が大きく異なることがありました。

実務上では、「合意」とまでいえるか微妙な
「確認書」や「覚書」「念書」など色々あります。
契約書の文言を見ていくと、さらに複雑になってきます。

30年前が直近合意時点だと思っていたら、
別の書面が出てきて2年前が直近合意時点になったり、
賃料評価に大きな影響が出てくることも珍しくありません。

【実務上の注意点】

何十年も続く賃貸借契約の場合、
途中の経緯がわからないことがあったりもしますが、
最も大切なのは直近合意時点です。

直近合意時点が覆ってしまうと、
当初想定していた地代家賃の増減額請求が
できなくなってしまうこともあり得ます。

契約書、賃料振込の通帳履歴、当事者ヒアリングなど
できる限りの調査をしておくことが重要です。

さらに、継続賃料評価は、新規賃料100として、
いきなり200→100、10→100の水準になったりせず、
少しずつ徐々に本来の水準に近づいていくことになります。

少しずつしか変わらないなら、
手間がかかって面倒だからやめておくというのではなく、
早め早めからしっかり行動していくことが大切です。

何もしなければそのままの賃料が続くことになり、
月額ならそれほどの金額でもなくても、
何年、何十年と積み重なると大きな差になってしまいます。


2021/05/18
「建物のアスベストの有無を
どのように調べたらよいでしょうか。」

アスベストは、減価要因です。
アスベスト含有建材の除去費用相当額
不動産価格から減額されます。

売買等で買主から減額を求められることもあり、
詳細がわからないほどリスクとして
除去費用以上の減額をされることもあります。

鑑定評価においては、建物の個別的要因として
「有害な物質の使用の有無及びその状態」があるため、
アスベスト調査が必要になります。

企業会計基準においても、資産除去債務として
原状回復のために必要な将来のアスベスト含有建材の
処分費用を負債として評価することが必要です。

もちろん詳細な調査については
専門業者に個別具体的に依頼する必要がありますが、
下記のとおり概要を調べることができます。

【新築年次による可能性】

新築年次により、概ね以下のとおり分類できます。

飛散性の高い吹付けアスベストは昭和50年頃以前、
石綿含有吹付けロックウールは平成2年頃以前の建物に
多く使われている可能性があります。

昭和50年10月のアスベスト含有量5重量%超の
 吹付アスベスト原則禁止前の建築物

昭和50年10月以降のアスベスト含有量5重量%超の
 吹付アスベスト原則禁止以降の建築物

昭和55年の日本石綿協会の自主規制による
 アスベスト含有ロックウール製造禁止以降の建築物

平成元年の建設省通則個別指定の
 石綿含有吹付け材の製造中止以降の建築物

平成7年4月の特定化学物質等障害予防規則改定による
 アスベスト含有量1重量%超の建材禁止以降の建築物

平成18年9月の石綿障害予防規則改正による
 アスベスト含有量0.1重量%超の建材禁止以降の建築物

【アスベスト対策費用の目安】

処理面積や場所、建材の状況等により異なりますが、
平成20年に国土交通省が公表した目安は以下のとおりです。
面積が大きくなるほど、単価は下がる傾向にあります。

処理面積         費用の目安
300㎡未満      20千円/㎡〜85千円/㎡
300〜1,000㎡未満   15千円/㎡〜45千円/㎡
1,000㎡以上     10千円/㎡〜30千円/㎡

【不動産鑑定評価基準運用上の留意事項】

■有害な物質の使用の有無及びその状態
建設資材としてのアスベストの使用の有無及び
飛散防止等の措置の実施状況並びに
ポリ塩化ビフェニル(PCB)の使用状況及び保管状況に
特に留意する必要がある。


2021/05/17
登記面積で計算すると、
この建物は建蔽率・容積率オーバーなので
違反建築物ではないでしょうか」

このようなご質問もよく頂きます。

【ご回答】

登記面積で計算してオーバーとなっても、
すぐに違反建築物と判断することはできず、
建物の適法性に問題があるとは限りません。

適法性に問題があると、売買やM&Aで買主が躊躇したり、
金融機関での融資の際に問題になることがあります。

建築計画概要書で詳細を確認し、
現地で書面との異同をしっかり把握することが大切です。

【建築計画概要書】

その建物が建蔽率・容積率オーバーかどうかは、
建築確認・完了検査の数値で判断する必要があります。

具体的には、市役所の建築担当課において
建築計画概要書を閲覧ないし取得して確認することになります。

実務では、概要書記載の面積に基づいてチェックされています。
また、登記面積の求め方と、建築基準法上の面積の求め方は
異なっている部分もあるからです。

ただ、概要書も、完了検査後の増改築の適法性まで
担保しているわけではありませんので、
現地においてしっかり異同を調査することが大切です。

【具体例】

仮に、建蔽率60%・容積率200%として、
土地 登記面積 100㎡
建物 登記面積 1F 65㎡ 延べ 130㎡(2階建)の場合。

建蔽率  65㎡ ÷ 100㎡ =  65% > 60%
容積率 130㎡ ÷ 100㎡ = 130% < 200%
登記面積から見ると建蔽率オーバーの建物となっています。

しかし、建築計画概要書において
土地 実測110㎡となっている場合、
建蔽率  65㎡ ÷ 110㎡ ≒  59.09% < 60%
容積率 130㎡ ÷ 110㎡ ≒ 118.18% < 200%
となり、建蔽率もオーバーせず適法となります。

【建蔽率・容積率】

建蔽率:建築面積の敷地面積に対する割合
容積率:建物延床面積の敷地面積に対する割合です。

住宅系の用途であれば、建蔽率60%・容積率200%。
商業系の用途であれば、建蔽率80%・容積率400%。
このような指定が一般的には多くなっています。

指定(基準)建蔽率・容積率を超えている場合、
建蔽率・容積率オーバーとして
適法性(遵法性)に問題がある建物ということになります。

この場合、角地や二方路などによる建蔽率の緩和、
その他特例による容積率の緩和などに注意が必要です。

また、建築当初は適法で、その後規制が変更となった
既存不適格建物の場合もあります。

2021/05/10
今年度も納税通知書が
お手元に届いている時期ではないでしょうか。

新型コロナウイルスによる影響で
今年度は税額据え置きとなっていますが、
やはり気になるのが固定資産税額・都市計画税額ですよね。

今回は「固定資産税に気を付けろ!」
週刊エコノミスト5/18号からです。

課税ミスは全国で多発
「結局、市町村から送られる納税通知書の
税額は〝言い値〟に過ぎず、
今なお表面化していない課税の誤り
無数にあるに違いない。」と書かれています。

さらに、
「税理士でも固定資産税を熟知している人は
ごく少数と、頼れる専門家も限られる。
そうであればこそ、納税者は少しでも
知識を蓄えることで自己防衛するしかない。」とも。

【固定資産評価と不動産鑑定士】

固定資産評価額の基礎となる
固定資産税標準宅地の鑑定評価は、
全国の市町村で不動産鑑定士が行っています。

不動産鑑定士の鑑定評価に基づいて、
各市町村が専用のシステムで
それぞれの土地の評価額を算定しています。

そのため、不動産鑑定士は
固定資産評価に関して詳しいと言えるでしょう。

【審査申出と課税説明】

■審査申出
固定資産評価額に不服がある場合は、
審査申出をすることができます。

ただ、3年に一度の評価替え年度しかできず、
申出できる人や事項についても決まっています。

ちょうど今年度(令和3年度)は、評価替え年度です。
今年度と言いながら、1年中できるのではなく
数ヶ月間しか期間がありません。

■課税説明
一方、固定資産評価額がどのように算定されているかという
「課税説明」については、いつでも可能です。
評価替え年度に縛られることはなく、
委任状があれば代理人でも課税説明を受けることができます。

【不動産鑑定士をご活用ください】

不動産鑑定士はそもそも不動産評価の専門家であり、
さらに固定資産評価も担っているわけですので、
ご自身で難しい固定資産評価について一から学ばなくても、
気になるところはしっかり調査できます。

不動産鑑定士が課税説明を受ければ、
適正に評価されているか確実に調べることができます。

必要なものは、その不動産の名義人の委任状です。
ご相続が発生している場合は、
戸籍謄本や相続関係説明図等が必要なこともあります。

【士業の先生限定】

士業の先生であれば、
当事務所の“ちょい聞きサービス(無料)”
固定資産評価額についてのご相談をお受けしています。
お気軽にお申し付けください。
(もし詳細調査が必要な場合は、別途お見積りいたします。)


2021/05/07
今回は当事務所のコダワリである
鑑定評価の「見える化」
評価の“オープンキッチン化”についてです。

【評価の前提となる情報・資料】

評価の前提となる情報や資料には様々なものがあります。

取引事例では高値、安値、特殊事情の有無。
実勢価格と公示地価や路線価等との開差の有無。
賃料水準、費用項目、利回りをどう考えるか。
どのような経済指標を採用するか。等々

採用する資料や情報が少し変わるだけで、
最終結果である鑑定評価額に大きく影響することも多いです。

【評価のオープンキッチン化】

「様々な資料や情報がありますが、
この資料から試算するとこうなります。
一方、こちらの情報に基づくと逆にこうなります。
今回はこの資料が最も説得力があるのでこれを重視しましょうか。」

このように評価の過程を全て「見える化」することで、
より深い理解とご依頼目的達成のための
お手伝いをしています。

クローズされたキッチンで勝手に料理を完成させるのではなく、
オープンキッチンで楽しく話しながら一緒に料理を作っていく。
そんなイメージと言えば少しはわかりやすいでしょうか。

いきなり結果だけ「○○万円です」と言われても、
よくわからなかったり、ご依頼目的に合わないことも出てきます。

もちろん最終的にご提出する鑑定評価書・意見書には
評価の過程が明確に記載されているのですが、
どうしても専門的な内容となり、読みにくいのも実情です。

ご相談の段階から様々な試算を行い、
複数のシミュレーションをわかりやすく行うことによって、
自分の立場だけではなく、
相手側の立場や中立的な立場に立った目線
一緒に検討していくことができます。

【不動産鑑定評価基準】

不動産の価格は、多数の要因の相互作用の結果
として形成されるものであるが、
要因それ自体も常に変動する傾向を持っている。

価格形成要因を市場参加者の観点から明確に把握し、かつ、
その推移及び動向並びに諸要因間の相互関係を十分に分析して、
前記三者(※)に及ぼすその影響を判定することが必要である。
(※不動産の効用、相対的稀少性、不動産に対する有効需要)


2021/05/06
中古で取得した建物の簿価は、
取引により取得した価格をベースにしているため
簿価≒時価と考えてもよいでしょうか。

このようなご質問もよく頂きます。

もちろん直近に取得した中古建物で、
適正な時価で取引されている場合や、
適正に土地建物の按分をされている場合は
簿価≒時価のことも多いです。

しかし、以下のような場合は
必ずしも簿価≒時価とはならないこともありますので
十分にご注意ください。

【売買価格が正常ではなかった場合】

個々の取引には、売り急ぎや買い進みなど
様々な事情が含まれていることがほとんどです。

適正な価格帯の範囲内であれば問題ありませんが、
適正な価格帯から大きく乖離している場合は、
簿価≒時価とならないことがあります。

どうしても欲しいから高値を承知で買った。
先方から頼まれて、しかたなく安く買った。
地域の相場を知らず、高値で買ったor安値で売った。
このようなことありませんでしょうか。

【建物価格を適正に按分できていない場合】

売買契約書に土地建物の総額のみ記載され、
別途土地建物価格の按分が必要な場合があります。

このような場合、適正に按分されていれば問題ありません。

しかし、機械的に固定資産評価額で按分する等
適正に按分できていなかった場合、
そもそものスタートから簿価と時価が
乖離してしまっていることがあります。

【経済的減価が発生している場合】

建物の減価の要因には、
物理的要因、機能的要因、経済的要因の3つがあります。

物理的要因は、時間の経過に伴うもの。
機能的減価は、建物機能の陳腐化や旧式化など。
これらはいわゆる減価償却の概念の中に含まれます。

一方、経済的減価は、地域の衰退や市場性による減価です。
同じ建物でも、需要が高い駅前に立地する場合と
需要がほとんどない山の中にあるのでは市場価格は異なります。

また、建物取得時は繁華していたエリアでも、
現在は人通りもなく空き店舗が増えている場合など
市場価格(時価)が大きく変わってしまうことがあります。

このような経済的減価は、
経年で一律に減価する減価償却では
適正に減価しきれていない場合もあります。

【まとめ】

以上、代表的な3つを挙げてみました。
他にも簿価≠時価となるケースはありますし、
新築建物であっても簿価≒時価とならないこともあります。

その簿価はどのような根拠で現在の数字なのか。
しっかり見ていくことが大切です。

士業の先生の不動産評価に関するご相談、お待ちしています

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