士業専用ダイヤル
国土交通省から8月21日に発表された
地価LOOK令和2年第2四半期(4/1〜7/1)、
近畿圏についてもう少し詳しく見ていこうと思います。
概況には、以下のような調査結果がありました。
「用途別では、商業系が
住宅系より下落地区の割合が高く、
地域別では、大都市圏が地方圏より
下落地区の割合がやや高くなった。」
「マンションやオフィスの需給バランスに
大きな変化は見られていない。」
実際に近畿圏ではどのようになっているのでしょうか?
■滋賀県
住宅地 南草津駅周辺 0%横ばい
商業地 調査地区設定なし
■京都府
住宅地 下鴨 0%横ばい
桂 0%横ばい
二条 0〜3%下落
商業地 京都駅周辺 0〜3%下落
河原町 0〜3%下落
烏丸 0〜3%下落
■大阪府
住宅地 豊中 0%横ばい
天王寺 0%横ばい
福島 0〜3%下落
商業地 西梅田 0〜3%下落
中之島西 0〜3%下落
北浜 0〜3%下落
OBP 0〜3%下落
新大阪 0〜3%下落
阿倍野 0〜3%下落
江坂 0〜3%下落
茶屋町 3〜6%下落
心斎橋 3〜6%下落
なんば 3〜6%下落
■兵庫県
住宅地 六甲 0%横ばい
甲子園口 0%横ばい
芦屋 0%横ばい
商業地 西宮北口 0〜3%下落
三宮駅前 3〜6%下落
■奈良県
住宅地 奈良登美ヶ丘 0%横ばい
商業地 調査地区設定なし
■和歌山県
調査地区設定なし
近畿圏の動向
住宅地は0%横ばい地点が多く、
下落傾向でも0〜3%下落まででした。
一方、商業地は0%横ばい地点が無く、
大阪の茶屋町・心斎橋・なんばと
兵庫の三宮駅前は3〜6%下落と
商業地の中でも大きな下落になっています。
四半期で3%下落ということは、
単純に年間ベースだと
12%も下落している計算になります。
長期政権が終わり、これからの経済情勢や
地価動向からますます目が離せなくなってきますね。
価格を求める基本的な3手法「原価法」の中で、
建物の経年減価等を考慮する「減価修正」についてです。
減価償却≠減価修正
会計士さん・税理士さんが使う「減価償却」と
同じような部分と異なっている部分があります。
基本となる経年減価については同じなのですが、
減価修正は経年減価以外にも考慮する項目があります。
経年減価だけが減価修正じゃないんだよと
お伝えすることが今回の目的です。
経年減価だけじゃないということは、
新築でもマイナスになる部分があるかもしれず、
中古でも簿価以上にマイナスになる部分があるかもしれず、
価格が変わってくるかもしれませんということです。
そして、価格が変わると、売買価格、税額、株価など
様々なことが変わってくることになります。
減価修正
「減価の要因に基づき発生した減価額を、
対象不動産の再調達原価から控除して、
価格時点における適正な積算価格を求めること」です。
この減価の要因は3つに分けられます。
■物理的要因
使用による摩滅及び破損、時の経過による老朽化等です。
いわゆる経年減価とほぼ同じイメージですが、
経年劣化のほか、自然災害での偶発的な損傷等も含まれます。
■機能的要因
型式の旧式化、設備の能率低下等です。
建物設備の型式が古くなったり機能が劣ったり、
マンションの間取りが時代に合わなくなったり。
耐用年数自体はまだまだ残存年数があったとしても、
このような機能的な要因も減価になります。
■経済的要因
地域の衰退、環境との不適合、市場性の減退等です。
たとえば、新築の建物が建っているとしても、
山の中の誰も買わないような場所にあったとしたら、
新築の価格より値段は下がってしまうことになります。
減価修正の方法
減価修正の方法には以下の2つがあります。
■耐用年数に基づく方法
定額法と定率法があり、定額法が主流です。
少し前のブログでテーマにした「建物の耐用年数」は、
ここで大きなウエイトを占めることになります。
経済的残存耐用年数をどう判断するかにより、
価格が大きく変わってくることになります。
■観察減価法
実態を調査して、減価額を直接求める方法です。
耐用年数に基づく方法と併用することになります。
経年減価だけでは把握しきれない建物の実態を
しっかり評価に反映さそうというものです。
鑑定評価書では、上記耐用年数に基づく方法に続いて、
さらに5%、10%、20%など減価をしていることが多いです。
このように減価償却と減価修正は
同じような部分と異なっている部分があります。
経年減価だけでは、簿価と実際の価格に
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身振り手振りなどどのようにしてお伝えするか。
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根気強くご指導くださった先生には
本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
伝えたいこと
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これまでは国・都道府県・市町村など
公共の仕事が中心だったためか、
鑑定評価をどう活用すればよいかわからないと
おっしゃる方がとても多いです。
鑑定評価を活用してくださった先生方は、
一度使えばもう“麻薬”のようなイメージで
何度でもリピートして頂けるのですが、
どうしてもよくわからないものには手を出しづらい。
士業の先生方のコンサルティング力アップに
こんなに使えるものはないのにといつも思います。
そんな状況を打破し、不動産鑑定士として
もっともっと社会貢献できるように
これからも研修会講師のスキルを磨いていきたいです。
コロナで地価下落
国土交通省から8月21日に地価LOOKレポート
令和2年第2四半期(4/1〜7/1)が発表されました。
調査100地区のうち、上昇は1地区のみ(前回73)、
横ばい61地区(前回23)、下落38地区(前回4)となり、
ほとんどの地区で横ばいないし下落となりました。
「需要者の様子見など取引の停滞が広がるとともに、
ホテルや店舗を中心に収益性低下への懸念から
需要の減退が一部では見られる。」
「リーマンショック時の地価下落の主因となった、
マンションやオフィスの需給バランスに
大きな変化は見られていない。」とのことです。
令和2年第1四半期(1/1〜4/1)は、
コロナの影響が無い期間がありましたが、
この第2四半期(4/1〜7/1)は
期間全てがコロナの影響下にあります。
全国で1地区だけの上昇地区
全国で1地区だけ上昇したのは仙台でした。
■宮城県仙台市青葉区(中央一丁目・商業地)
0〜3%上昇(前期0〜3%上昇)
「一時的な経済活動の停滞等の影響はあるものの、
当地区に対する在京投資家等の投資意欲は依然として認められ、
当期の地価動向はやや上昇傾向で推移した。」
「駅前の大型商業施設の再開発計画や
都市機能向上を目指す「せんだい都心再構築プロジェクト」の
建替え促進助成制度等の影響から、仙台駅周辺では依然として
オフィスビル・ホテル等の開発機運の高まりが予想される。」
とされています。
各地域の地価動向
■滋賀県(草津市・南草津駅周辺・住宅地)
0%横ばい(前期0〜3%上昇)
「土地取引自体が停滞し、取引価格はほぼ横ばい傾向と
なったことから、当期の地価動向は横ばいで推移した。」
■京都市中京区(烏丸・商業地)
0〜3%下落(前期0〜3%上昇)
「過熱気味であった不動産市場が沈静化し、
ホテル用地等の観光関連施設用地の
取引需要に陰りが見え始めたため、
取引価格が緩やかな下落傾向に転じたことから、
当期の地価動向はやや下落で推移した。」
■大阪市北区(西梅田・商業地)
0〜3%下落(前期3〜6%上昇)
「来街者数は減少し、店舗賃料は下落傾向となった。
市場参加者によるオフィス賃料の将来予測が保守的になって、
取引価格は下落傾向となった。
以上から、当期の地価動向はやや下落傾向で推移した。
■神戸市中央区(三宮駅前・商業地)
3〜6%下落(前期0〜3%上昇)
「店舗の退去増加により賃貸需給が一時的に
緩和している事から、店舗賃料はやや下落傾向に転じた。
加えて、これまで地価上昇を牽引してきた
ホテル用地の需要は、ホテルの稼働率悪化から、
新規出店意欲が減退して弱まっており、
取引価格は下落傾向に転じた。
以上の市況の変化から、当期の地価動向は下落で推移した。」
■奈良県(奈良市・奈良登美ヶ丘)
0%横ばい(前期0〜3%上昇)
「サラリーマンを中心とした需要層の
所得減少懸念が聞かれるなかで
マンション分譲価格も横ばい傾向が続き、
デベロッパーの開発素地取得意欲の低下も見られる。
以上から、取引価格は横ばい傾向となり、
当期の地価動向は横ばいで推移した。」
価格を求める基本的な3手法「原価法」の中で、
前回の「建物の再調達原価」に続き、
「建物の耐用年数」についてです。
こちらも裁判上の評価でよく争点になります。
耐用年数が長ければ、建物価格は高くなり、
耐用年数が短ければ、建物価格は低くなります。
建物の耐用年数
法定耐用年数、物理的耐用年数、経済的耐用年数など
様々な耐用年数が存在します。
■法定耐用年数
国税庁が主な減価償却資産の耐用年数として、
建物及び建物附属設備の耐用年数を定めています。
会計士さんや税理士さんは
構造・用途・細目別の耐用年数を使って
日々の業務をされていることと思います。
■物理的耐用年数
鉄筋コンクリート造(RC造)について、
上記の法定耐用年数では
最大でも50年となっていますが、
物理的な耐久性だけであれば
もっと耐用年数は長くなります。
現実的には、建物の機能や設備、間取り等が
時代にそぐわなくなって取り壊されることが多いですが、
物理的に存在するという意味ではとても頑丈です。
■経済的耐用年数
建物が経済的に価値を有する年数です。
上記の物理的耐用年数より短いのが通常です。
鑑定評価における耐用年数
鑑定評価では、経過年数よりも
経済的“残存”耐用年数に重点を置いて評価します。
また、法定耐用年数のように
木造住宅22年、RC造事務所50年など
年数が定まっているわけではありません。
そのため、木造であれば25〜35年程度、
RC造であれば40〜50年程度など一定の幅が存在します。
また、大規模修繕などがされていると、
耐用年数を延長して評価することも可能です。
もちろん、木造が50年でRC造が20年のように
完全に逆転するような耐用年数の判断はできませんが、
合理的に説明できる一定の幅があるということは、
建物の価格に大きな影響があるということになります。
同じ建物でも、経済的残存耐用年数が
5年と15年であれば、3倍近い価格差となり、
仮に5年が1,000万円なら、15年は3,000万円となるなど
耐用年数1つで大きな価格差が生まれてしまいます。
このように、建物の耐用年数と言っても、
どのような根拠に基づいて、
どのように評価主体が判断するかによって
大きく変わってくることがあります。
価格を求める基本的な3手法のうち
「原価法」について、
裁判上の評価でよく争点になる
「建物の再調達原価」についてです。
再調達原価が高ければ、建物価格は高くなり、
再調達原価が低ければ、建物価格は低くなります。
建物の再調達原価
「対象不動産を価格時点において
新たに再調達することを想定した場合において
必要とされる適正な原価の総額をいう。」
建物の建築費は千差万別です。
パッと見は同じような建物であっても、
実際は倍半分の差があったりします。
鑑定士も実務経験を積み重ねることにより、
建物のグレードや構造・工法、建築費等について
ある程度の知識を深めてはいますが、
建築士さんのような完全な専門家ではありません。
そのため、様々な資料に基づいて
評価の対象となる建物の再調達原価を査定します。
■実際の建築費
建物建築請負契約書や固定資産台帳等から
実際の建築費を調べる方法です。
対象建物の建築費実額ですので、
個別具体性があり、説得力は非常に強いです。
ただ、価格時点と建築時期の違いをどう調整するのか、
(一般的には建築費指数等で時点修正します。)
特別な事情で割高・割安な建築費になっていないか
しっかり確認することが必要です。
■国税・標準的な建築価額表
国税が毎年の標準的な建築価額を公表しているもので、
SRC・RC・S・W造など構造別に数値が出ています。
国税の数字ですので、一定の信頼感はありますが、
年と構造のみで建築費単価が出ていますので、
地域別・個別の建築費や事情が
十分に反映されないことに注意が必要です。
■JBCI(ジャパン・ビルディング・コスト・インフォメーション)
実際の契約価格を分析対象としているため、
建物の取引価格について信頼度の高い価格傾向を把握できます。
地域別・構造別などで検索できるのですが、
対象建物の個別具体的な部分は反映されません。
■建物の鑑定評価必携 建物実例データ集
「建物鑑定評価」の資料集です。
建物鑑定評価の方法論について、
その基礎的な事項が体系的に書かれています。
鑑定士だと、非常になじみ深い書籍です。
様々な建物が掲載されていますが、
どの建物を基準にするかによって
再調達原価が変わってくることもあります。
資本的支出・大規模修繕・耐震性能等
建物建築後、通常の維持管理のみされている場合は
あまり関係ないのですが、
大規模修繕や資本的支出、増改築などがあった場合、
適切に反映していく必要があります。
このように、建物の再調達原価と言っても、
どのような資料に基づいて、
どのように評価主体が判断するかによって
大きく変わってくることがあります。
鑑定評価ってどんな計算をするの?
どうやって価格を決めているの?
なんとなく“職人芸”のようなところもあり、
あまり知られていないのではないでしょうか。
価格を求める基本的な3手法には、
原価法、取引事例比較法、収益還元法の3つがあります。
今回は、そのうち「原価法」についてお話します。
原価法
コストアプローチとも言われます。
その不動産をもう一度作った場合にいくらかかるのか。
コストから不動産の価格を求める手法です。
建物が一番わかりやすいと思うのですが、
この建物を今建てるといくらかかるのか(再調達原価)、
築後何年経過し、どのような減価があるのか(減価修正)
ということから、価格を求める手法です。
たとえば、もう一度建てるとすると3,000万円かかる。
築後10年経過して、1,000万円の減価が認められる。
3,000万円−1,000万円=2,000万円
というような流れです。
土地の場合でも、
材料を2,000万円で仕入れる(田んぼを購入する)
材料を1,000万円で加工する(田んぼを造成して宅地にする)
販管費・開発利潤として500万円を見込む。
仕入れ+加工費+販管費・開発利潤=3,500万円という流れです。
このように、土地は新しく造成された場合に
原価法を適用することができます。
一方、既成市街地や古くからの既成住宅地域では、
当初の“仕入れ価格”や“加工費”がわからないため、
適用を断念することになります。
そのため、鑑定評価書において、
土地の価格を原価法で求めるケースはほとんどなく、
次回お話する取引事例比較法で求めることが大半です。
■再調達原価
建物の場合、もう一度建てる場合にいくらかかるのか
現地で一見しただけでは建築費がわからないことが多く、
裁判上の評価などでも争点の1つとなることが多いです。
同じ築年数であれば、再調達原価が高い方が
結果として現時点の価格も高くなりますので、
実際の建築費、建築費指数、国税の標準的な建築価額表、
JBCI(ジャパン・ビルディング・コスト・インフォメーション)など
様々な資料を用いて説得力ある再調達原価を求めることが大切です。
■減価修正
いわゆる減価償却のような経年減価だけではなく、
実際に現地で建物を観察して減価の程度を把握します。
雨漏りやクラックのような物理的減価、
設備や機能の陳腐化をはじめとする機能的減価、
都心より山奥の方が市場性は劣るという経済的減価
をしっかり調査分析することが大切です。
商業地の固定資産税の据え置き検討
8月14日の日経新聞1面に
「商業地 固定資産税上げず」
という記事が掲載されました。
「公示地価の上昇により
企業が新型コロナウイルス禍で
増税に陥る懸念があることに対応する。」
とされています。
詳細は2021年度税制改正とのことですが、
鑑定士的に感じたことを書いていこうと思います。
3年に1度の評価替え
固定資産税は、3年に1度評価替えを行います。
直近だと平成30年度に行われ、
次の評価替えは令和3年度となっています。
そのため、来年4月〜5月頃には、
評価替済みの納税通知書がお手元に届きます。
地価上昇・地価下落
地価が下落している地域は、
3年に1度の評価替えだけではなく、
毎年下落修正を行って評価額に反映しています。
一方、地価が上昇している地域は、
評価替えの際に3年分の地価上昇が一気に反映され、
中間年度は評価額が据え置かれます。
直近3年間の地価動向(商業地)
直近3年間は、景況感やインバウンドの影響で、
市街地中心部や観光地などで大きな地価上昇がありました。
年間数十%上昇した地域もけっこうあり、
3年間の累積だと倍になっているところもあります。
日経記事では、北海道のニセコは3.4倍になったとも。
ここで問題点
固定資産評価額は、裁判上・会計上・税務上の評価で
簡易に土地の評価がわかる指標として活用されています。
しかし、地価上昇分の反映が3年に1度だと、
地価上昇著しい地域などでは、
実勢価格と大きく乖離してしまうことになります。
さらに、今回の商業地の固定資産税据え置き報道、
どのような形で据え置くのか非常に興味深いです。
仮定をつけて、以下検討してみたいと思います。
据え置き方法
まず、「評価額」を据え置く場合です。
来年の評価替えで、評価額そのものを据え置いたとしたら、
現在の評価額がそのままとなり、
結果として平成30年度の価格が「時価」として
表示されることになります。
平成30年から3年分の地価上昇が反映されないだけでなく、
次の評価替え(令和6年)までこの評価額が続くことになります。
(地価下落修正は除きます。)
一方、「課税標準額」を据え置く場合です。
評価額は地価上昇を反映して、最新のものにするが、
税額を計算する時に使う課税標準額は据え置くとする場合です。
この場合だと、評価額は最新となり、
課税標準額のみがそのまま据え置かれるので、
評価額を用いて不動産の価格を概算する場合、
実勢価格に近い数字となります。
なんとなく、こちらのほうがしっくりくる気がします。
最後に
「据え置き」はどこかで終わるので、
終了後は急激な評価額の変動=税額の変動を避けるため、
現在もある負担調整措置等を活用するのでしょうか。
なお、建物の評価額も3年に1度の見直しです。
ですので、令和3年の評価替えの際に、
平成30年からの3年分“減価償却”されたものが
評価額としてお手元に届くことになります。
今回は土砂災害(特別)警戒区域についてです。
最近は異常気象で災害が頻発することが多く、
土砂災害についても関心が高まっていると思います。
土砂災害(特別)警戒区域って?
イエローゾーンとレッドゾーンに分かれ、
“特別警戒”のレッドゾーンのほうが
土地利用規制や価格への影響が大きくなっています。
地図で等高線が密集しているところや、
現地で急な山がすぐ近くにある場合等には
しっかり確認することが大切です。
指定の有無は、都道府県や市町村の
ホームページなどで確認することができます。
■土砂災害警戒区域
通称イエローゾーンです。
「土砂災害が発生した場合に、住民の生命または
身体に危害が生ずるおそれがあると認められる区域で、
土砂災害を防止するために
警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域」です。
土石流、地すべり、急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)
の3つに分けられます。
■土砂災害特別警戒区域
通称レッドゾーンです。
「土砂災害が発生した場合に、建築物の損壊が生じ
住民等の生命又は身体に著しい危害が
生ずるおそれがあると認められる区域」です。
土地価格への影響
■固定資産評価
イエローゾーンに対して減額補正はありません。
一方、レッドゾーンの場合には、評価額に対して
▲30%の減額補正をされることが多いです。
市町村によって減額補正の有無や減額割合が
異なる場合もありますので、
詳細は各市町村の固定資産税担当課でご確認ください。
■相続税評価
「土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価」
として、通達が出ています。
イエローゾーンについては、「区域指定以前から
当該危険性の存在は認識されている場合が多く、
また、土砂災害発生の危険性は警戒区域内外にわたり
比較的広範囲に及んでいることから、
土地価格の水準に既に織り込まれているとも考えられる。」
とされていて、減価補正はありません。
「既に織り込まれている」かどうか、
鑑定士的には疑問が残る地域もありますが…。
レッドゾーンについては、「特別警戒区域補正率表」で
面積割合によって▲10%〜▲30%の補正が入ります。
■鑑定評価
土地利用規制があり、需要にも影響がありますので、
価格にはマイナスに作用します。
イエローゾーンでも、地域の価格水準に
既に織り込まれておらず、需要に影響があれば
一定のマイナスをすることも考えられます。
レッドゾーンの場合は、上記と同じように
ある程度しっかりとした減額割合となることが多いです。
レッドゾーンと開発許可(宅地転用)
レッドゾーンに指定されていると、
それだけで開発許可を得られない要件に該当し、
宅地転用できない場合が多いです。
特に、市街地山林などの場合、
安易に通達評価に従い、前面路線価や造成費等を用いて
転用前提で評価することには注意が必要です。
そもそも開発許可が得られない土地は、
転用見込みが無いと判断されることも考えられます。
この場合、過大な評価額で申告することになってしまいます。
今回は評価単位についてです。
区画整然とした住宅団地の戸建住宅であれば、
1筆の土地の上に1棟の建物が建っているので、
この土地建物で1つの評価単位となるのは
とてもわかりやすいと思います。
しかし、複数筆の土地の上に、
共同住宅、戸建住宅、駐車場などが混在していると、
全部を一括して1つの評価単位とするのか、
共同住宅、戸建住宅、駐車場と3つに分けるのか。
これだけでも評価の前提が異なってきますので、
3つに分けて評価した場合の総合計が、
一括して1つで評価した価格と一致するとは限りません。
評価単位はそれぞれ異なる
鑑定評価における評価単位、
国税の評価通達における評価単位、
固定資産評価における評価単位、
現況の土地利用状況は、
それぞれ必ずしも一致するとは限りません。
評価単位が異なると、
規模、接道状況、形状などが異なってくるため、
結果として価格も変わってくることになります。
鑑定評価
基本的には、売却単位=評価単位です。
評価の対象となる不動産のみで売却可能かどうか。
現況、地目、土地利用状況等を踏まえて判断します。
とはいえ、これまでお話しした通り、
「鑑定評価の条件」で様々な評価単位を設定できます。
最も柔軟に決められるのが鑑定評価ではないでしょうか。
上記の例では、一括して1つで評価もできますし、
3つに分けて評価することもできます。
どちらも正しいことなので、問題はありません。
評価通達(相続税)
「No.4603 宅地の評価単位」に記載されています。
ここで大切なことは、
相続税評価を不動産鑑定士にご依頼される場合、
税務上の評価単位と鑑定評価上の評価単位が
一致しているかどうかをご確認ください。
「評価下がりそうですか?」と聞かれて、
異なった評価単位を前提に「下がります!」と
不動産鑑定士が回答している場合があるからです。
上記の例では、税務上は3つに分けないとダメなのに、
鑑定評価上は一括して1つで評価をすると、
土地利用状況や規模等から評価が下がるという場合です。
これはどちらが悪いというわけではなく、
それぞれの考え方や制度の違いによるものです。
しかし、評価単位が違っていると、
将来的な税務リスクが非常に高くなってしまいます。
固定資産評価
評価単位を決めることは「画地認定」と言います。
基本的には地目、土地利用状況、所有者等で決まります。
鑑定評価や評価通達と異なることは、
所有者が別であっても、1つの評価単位として
認定される場合があるということです。
A土地にA店舗建物、B土地にB店舗建物があり、
それぞれ所有者はAさん、Bさんだとします。
しかし、ABは駐車場を共有し、出入口も同じで
一体的に利用されているような場合は、
ABの土地をセットで1評価単位となることもあります。
また、自宅に隣接する駐車場についても、
柵などで明確に区分されているかどうかで
駐車場を含む1つの自宅敷地となるか、
自宅1つと駐車場1つの
2つの評価単位になるか決まったりします。
市町村によって取り扱いが
微妙に異なる場合がありますので、
気になる場合はご確認頂くとよいと思います。
今回は公簿面積と実測面積が異なる場合です。
面積は総額の大小に直結します。
普段は単価ばかりに目が行きがちですが、
単価×面積=総額もしっかり見てください。
実際の売買代金は、この総額になります。
公簿と実測
公簿面積とは、登記記録(登記簿)記載の面積のことです。
公簿が最近測量して登記されたものであれば、
実測面積とほぼ一致します。
しかし、昔からの地積をそのまま引き継いでいる場合や
分筆した残地として面積が計算されている場合は、
実測面積と大きく異なることも珍しくありません。
また、縄伸び縄縮みが大きい地域もあります。
仮に、公簿150㎡なのに、実測300㎡だと、
同じ100,000円/㎡という土地単価が正しくても、
総額が1,500万円と3,000万円とで大きく異なってきます。
単価と総額
たとえば、新築戸建の相場が3,500万円とした場合、
土地1,500万円であれば2,000万円の建物を建てられます。
一方、土地3,000万円では、総額3,500万円では足らず、
少なくとも総額4,500万円〜5,000万円程度の
物件になってしまいます。
総額3,500万円であれば、
平均的なサラリーマンが買えるとしても、
総額5,000万円となると
平均以上の高所得者でないと手が出せないかもしれません。
このように面積は総額と密接に関連しているため、
単価だけではなく、単価に面積を乗じた
総額にもしっかり目を配ることが大切です。
山林に注意
山林はそもそもの公簿が大きいほか、
さらに実測面積と大きく異なることが多いです。
特に、単価が高くなる市街地山林だと、
総額に及ぼす影響は甚大です。
仮に山奥の山林で単価が10円/㎡であれば、
総額10,000円と50,000円なので大勢に影響ありません。
しかし、市街地山林で30,000円/㎡だとすると、
3,000万円と1億5千万円というように
一気に総額に跳ね返ってきます。
単価だけの算定で満足することなく、
総額としても妥当であるかの検討が大切です。
単価と総額の関連
不動産鑑定評価基準では、以下のとおり規定されています。
「鑑定評価の手順の各段階について、
客観的、批判的に再吟味し、その結果を踏まえた
各試算価格又は各試算賃料が有する説得力の違いを
適切に反映することによりこれを行うものとする。」
「特に次の事項に留意すべき」として、
「単価と総額との関連の適否」が挙がっています。
相手からこんなに高い(安い)価格が出てきた。
どうしてこんな価格なのか。おかしい!
価格時点に続いての第2弾は「更地として」です。
実際は土地の上に建物があるのに、
評価の条件を付けて、建物が無い
「更地として」評価する場合のことです。
ここもちょっと見るだけでわかるポイントです。
同じ土俵で比べましょう
鑑定評価書がお手元に届いた時には、
「鑑定評価の条件」欄を
評価額や地図・写真と同じくらいすぐ見てください。
この条件をどのように設定するかによって、
結果としての価格も大きく変わってきます。
更地と古家付物件
仮に、築後相当年数が経っていて、
取り壊すしかない老朽建物(古家)があったとします。
建物を取り壊すには、
当たり前ですが取り壊し費用が必要です。
この土地建物を「現状のまま」評価する場合は、
「土地価格−取り壊し費用=評価額」となります。
1,000万円−200万円=800万円というイメージです。
しかし、評価条件を付けて、
老朽建物が無いものとした「更地として」だと、
建物の取り壊し費用が必要ないので、
土地価格1,000万円=評価額となります。
評価の対象となる不動産が同じでも、
条件次第で800万円と1,000万円というように
価格に差が出てくることになります。
そして、どちらの評価が正しいのか?
前提条件が違うだけなので、
どちらも正しいということになります。
実務でも常に評価条件を念頭に
裁判上の評価であっても、
「更地として」という評価条件が付いているのに、
相手側から「古い建物が建っている土地だから、
駅近くであっても価格は低い」というような
主張が出てくることがあったりします。
裁判官にも、どのような条件で
どのような価格を出しているか、
しっかりわかりやすく伝えることが大切です。
どうしても目の前の老朽建物に
目がいってしまいそうになりますが、
評価条件が「更地として」であれば、
その老朽建物は心の中で消してください。
価格が一番の関心事なのはもちろんですが、
少し落ち着いてすぐ近くを見てみると、
相手の価格との違いは
思いのほかこんな簡単な理由だったりします。
相手からこんなに高い(安い)価格が出てきた。
どうしてこんな価格なのか。おかしい!
このようなご質問も良く頂きます。
評価の考え方や数値が違うために
大きな差が出ている場合も多いのですが、
実はもっと単純なところで違っていたりします。
一見すればわかる
評価の対象となる不動産は同じ。
地番も地目も面積も同じ。
それなのにどうして?
いえいえ、もっと簡単に
違いがわかるところがあります。
それは「鑑定評価の条件」欄です。
それ、いつの値段?
不動産の価格は、時の流れとともに変わります。
昭和のはじめはとても安かったですが、
バブルの頃は非常に高く、
同じ物件でも大きく価格が異なります。
鑑定評価書にも、評価の前提条件として
“いつ時点の価格なのか”という
「価格時点」が必ず記載されています。
昭和と平成で価格が違うのは極端としても、
平成20年では@200万円だったものが、
平成30年には@350万円というように、
5〜10年の差でも大きく変わってくることがあります。
評価額だけを見て、いつ時点の価格か見ていないと、
ついつい「今(現在時点)の価格」だと思い込み、
今はもっと高い(安い)のに!と思ってしまいます。
ご相談を頂いた場合も、けっこうな割合で
評価の前提となる「価格時点」が異なっていたりします。
同じ土俵(同じ評価条件)にあったとしても、
不動産の価格には適正な“幅”があるのに、
価格時点まで異なってしまっては、
その開差はさらに広がるばかりです。
相手の価格時点は間違っていないか。
現在時点の価格とはどれくらい違うのか。
このあたりもしっかりチェックする必要があります。
過去、現在、将来の価格
不動産鑑定士は、過去時点、現在時点、将来時点
それぞれの価格を評価することができます。
(将来時点の評価は限定された場合のみ)
価格が一番の関心事なのはもちろんですが、
少し落ち着いてすぐ近くを見てみると、
相手の価格との違いは
思いのほかこんな簡単な理由だったりします。
借家人は強い!
借家人(テナント)に立ち退いてもらいたいけど、
いくら提示すればよいかわからない。
逆に、相手から法外な立退料を要求されている。
このようなご相談もよく頂きます。
今回は、借家の立退料について書いてみたいと思います。
立退料の算定方法
当事者間で直接平和的に合意するのが一番ですが、
基準となる数字を出すためには以下の方法があります。
どちらか一方だけではなく、両者を併用する場合もあり、
正当事由の補完の必要性の程度でも大きく変わってきます。
■損失補償の観点から算定する方法
居住用であれば、「引っ越し実費」と「家賃差額」の補償で済みますが、
営業用であれば、さらに「営業損失」も補償が必要となります。
居住用の家賃差額補償は2年分程度であることが多いですが、
営業用であれば、業種・売上・移転先の状況など
個々の事情によって変動幅が大きいです。
また、営業用でも、飲食店などの場合は、
それぞれの実費項目についても、
お互いが自分に有利な見積もりを出し合ったり、
かなりの差が出てくることが多いです。
■借家権価格をもとに算定する方法
ざっくり言うと、賃借人としての地位に対する価格です。
ここに住める、営業できるなど、
使用収益できる権利に対する対価というイメージです。
借家権価格 = 更地価格 × 借地権価格 × 借家権価格 となります。
更地価格 : 賃借している建物の敷地部分の価格です。
借地権割合 : 相続税路線価に記載されている借地権割合
借家権割合 : 借地権割合と同じですが、ほぼ30%です。
仮に、更地価格5,000万円、借地権割合60%とすると、
5,000万円 × 60% × 30% = 900万円 となります。
路線価図の借地権割合は30%〜90%まであり、
一般的に市街地では借地権割合50%〜80%が多いです。
そのため、50%×30%=15%、80%×30%=24%となり、
借家権価格は、概ね更地価格の15〜25%程度であることが多いです。
「わたくしみち」
前回は道路の種類について整理しましたが、
今回は特に問題点やトラブルが多く、
よくご相談を頂く「私道」について取り上げます。
所有する土地の前の道路が「私道」になっていると、
今後どんなことが予想されるのか。
具体的に教えてほしいとのご相談が多いです。
なお、「私道」「市道」どちらも「しどう」ですので、
実務では「わたくしみち」「いちどう」と
使い分けることが多いです。
よくある問題点
私道は民間人(民間法人)が所有する道路です。
所有者との間で様々なトラブルが起こる可能性があります。
■通行料請求
ここは自分の所有地だから、
通行したい場合は月○万円払えという
請求をされる場合があります。
住んでいる限りずっと払い続ける必要があり、
大きな負担になってしまいます。
■通行拒否
上記からさらに発展して、
ここは自分の所有地だから通行させないと
通行自体を拒否される場合があります。
ブロックや車止めなどで
物理的に通行できないようにされることも。
特に、別荘地などでは道路がどうなっているか
チェックしておかないと大きな問題になります。
■建物建築への同意
接道状況によっては、私道所有者の同意が無いと
建物を建築(建て替え)できない場合があります。
また、同意に際し、同意料(ハンコ代)が必要なことも。
■上下水道ガスなどの埋設の同意
新しく上下水道の管を道路に敷設する場合や、
既存の老朽管を取り替える場合など
工事の際に同意が必要になる場合があります。
■アスファルト舗装の維持管理
私道の管理は原則的に所有者が行います。
維持管理をちゃんとしていないと、
アスファルトのひび割れや穴あきなど
通行に支障が出てくる場合があります。
舗装が古くなって管理ができなくなってから
市に寄付をしようとしても、
舗装を新しくやり直したり、道路を再整備した後でないと
市への移管を認めてもらえない場合もあります。
建築基準法上の道路かどうか
私道は民間人(民間法人)が所有していますので、
建築基準法上の道路として指定されていない私道だと、
ある日いきなり道路としての用途を廃止し、
道路でなくなってしまう可能性もあります。
そのため、ちゃんと指定のある道路だと
上記のようなトラブルは少ないですが、
指定のない道ではトラブルが多い傾向にあります。
相続の際に要注意
市区町村によって取り扱いが異なりますが、
私道が「公衆用道路」として非課税になっている場合、
毎年送られてくる課税明細書や固定資産評価証明書に
私道(地番)が載っていないことがあります。
ご相続の場合など、土地の所有関係に詳しくない場合、
知らないうちに私道が抜けてしまっていて、
相続登記ができていないことがあります。
できるだけ早いうちに気が付かないと、
多数の所有者の共有になっていることもあり、
将来的に大きな問題になる場合もあります。
士業の先生の不動産評価に関するご相談、お待ちしています
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