士業専用ダイヤル
弁護士さんから頂く最も多いご相談は、
「相手方から出てきた鑑定評価書を見てほしい」です。
その中でも、特に共有物件の評価について。
古きよき伝統的な論点ではありますが、
今でも多く目にする共有減価と裁判上の評価について
検討していきたいと思います。
【原 則】
共有持分を評価する場合は、
使用・収益・処分の制約や
共有物分割の時間的・経済的負担を考慮した
共有減価(市場性の減退)を考慮します。
【例 外】
共有持分の併合、全面的価格賠償の場合は、
共有減価を行いません。
下記の書籍にも、共有減価を行わない旨の記載があります。
■「家庭裁判所における遺産分割遺留分の実務(第3版)」
片岡武/管野眞一(編著) 日本加除出版株式会社
「不動産の共有持分(1/2)を有する相続人が
被相続人の共有持分(1/2)を代償取得する場合、
あるいはすべての共有持分を一括売却する場合などは、
共有減価は行わない。」
「なぜなら、共有持分どうしが併合し、
完全所有権(共有持分100%)を取得するので
いわゆる併合利益が生まれ、
共有持分減価は消滅するからである。」
■「共有不動産の紛争解決の実務(第2版)」
三平聡史著 民事法研究会
「全面的価格賠償においては、結果として
共有を脱する(単独所有になる)ことになる、
つまり、共有による制約・不都合はなくなります。
そこでの賠償額の算定においては
共有減価を適用しないのが一般的です。
(東京地判平成25・7・19判例集未登載、
東京地判平成17・10・19WLJ)」
【鑑定評価書の内容】
不動産鑑定士は、通常「正常価格」を評価するため、
上記原則に基づき、共有減価を考慮した
鑑定評価を行っていることが多いです。
正常価格とは、「市場性を有する不動産について、
現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる
条件を満たす市場で形成されるであろう
市場価値を表示する適正な価格」です。
そのため、他の共有者のためだけの価格ではなく、
正常な市場で成立する価格を出しています。
【不動産鑑定士との連携】
不動産鑑定士に鑑定依頼をされる際には、
どのような目的での評価なのか、
しっかり連携していくことが大切です。
認めてもらえない共有減価を考慮して価格が下がっても、
最終的には共有減価無しの価格になってしまったりすると、
依頼者との信頼関係も崩れてしまいかねません。
令和3年公示地価の結果について
近畿圏の状況を見ていきたいと思います。
各府県の代表的な地点をピックアップします。
【概 況】
コロナ禍により、これまで上昇傾向にあった
地価動向が一変した1年(R2.1.1〜R3.1.1)でした。
商業地のほうが住宅地より影響が大きく、
都市部のほうが地方(郊外)より影響が大きくなっています。
全国の変動率上昇トップ10に
近畿は1地点も入っていません。
逆に、全国の変動率下落トップ10では、
住宅地:兵庫県(香美・赤穂)の2地点
商業地:大阪ミナミが8地点、京都祇園1地点と
ワースト10地点中9地点が入っています。
近畿の商業地は、全国で最も大きな変化がありました。
年間変動率(R2.1.1〜R3.1.1)は
新聞やインターネットですぐ検索できますので、
このブログでは半年毎の地価動向を見ていきます。
全体的に、前半(R2.1.1〜R2.7.1)は下落が大きく、
後半(R2.7.1〜R3.1.1)は下落幅が縮小している傾向です。
【滋賀県】
■大津市・JR大津駅前(商業地)
R2.1.1 354,000円/㎡
R2.7.1 349,000円/㎡(▲1.4%)
R3.1.1 349,000円/㎡(±0.0%)
大津駅前は、年間変動率は▲1.4%ですが、
前半はマイナス、後半は横ばいとなっています。
後半は地価下落が無く、持ち直した形です。
【京都府】
■京都市東山区・祇園(商業地)
R2.1.1 3,500,000円/㎡
R2.7.1 3,220,000円/㎡(▲8.0%)
R3.1.1 3,200,000円/㎡(▲0.6%)
祇園の四条通沿いは、年間変動率は▲8.6%ですが、
半年毎の変動では下落幅が大きく縮小しています。
一方、花見小路通沿いの地点は、
年間▲13.9%となり、全国ワースト10位です。
■京都市中京区・地下鉄丸太町駅付近(商業地)
R2.1.1 880,000円/㎡
R2.7.1 865,000円/㎡(▲1.7%)
R3.1.1 860,000円/㎡(▲0.6%)
御所南エリアでも、年間変動率は▲2.3%ですが、
半年毎の変動では下落幅が半減しています。
【大阪府】
■大阪市北区・グランフロント(商業地)
R2.1.1 25,000,000円/㎡
R2.7.1 23,600,000円/㎡(▲5.6%)
R3.1.1 22,900,000円/㎡(▲3.0%)
大阪キタは、年間変動率は▲8.4%ですが、
半年毎の変動では下落幅が半減しています。
■大阪市中央区・ミナミ戎橋付近(商業地)
R2.1.1 28,700,000円/㎡
R2.7.1 23,300,000円/㎡(▲18.8%)
R3.1.1 21,100,000円/㎡(▲9.4%)
大阪ミナミは、年間変動率は▲26.5%と大きいですが、
半年毎の変動では下落幅が半減しています。
一方、すぐ近くの道頓堀の地点は、
年間▲28.0%となり、全国ワースト1位です。
【兵庫県】
■神戸市中央区・三ノ宮駅前(商業地)
R2.1.1 7,200,000円/㎡
R2.7.1 6,700,000円/㎡(▲6.9%)
R3.1.1 6,500,000円/㎡(▲3.0%)
三ノ宮駅前は、年間変動率は▲9.7%と大きいですが、
半年毎の変動では下落幅が半減しています。
【奈良県】
■奈良市・近鉄奈良駅前(商業地)
R2.1.1 830,000円/㎡
R2.7.1 745,000円/㎡(▲10.2%)
R3.1.1 730,000円/㎡(▲2.0%)
近鉄奈良は、年間変動率は▲12.0%と大きいですが、
半年毎の変動では下落幅が大きく縮小しています。
【和歌山県】
■和歌山市・JR和歌山駅前(商業地)
R2.1.1 442,000円/㎡
R2.7.1 442,000円/㎡(±0.0%)
R3.1.1 442,000円/㎡(±0.0%)
JR和歌山駅前は、年間変動率±0.0%と横ばいです。
前半後半とも±0.0%で、地価下落はありません。
相続税路線価は時価の80%となっています。
これっていつからなのでしょうか?
また、どのような経緯で80%になったのでしょうか。
色々調べてみました。
【令和2年路線価】
国税庁ホームページでは、
「路線価等は、1月1日を評価時点として、
1年間の地価変動などを考慮し、
地価公示価格等を基にした価格(時価)の80%程度を
目途に評価しています。」
とされています。
【いつから80%になったのか】
平成4年分の路線価からです。
平成3年分までは70%水準で評価されていました。
割り戻すための割合が異なりますので、
価格の連続性に注意が必要です。
路線価図の説明を読むと、平成4年分からは
路線価評定の基に「公示価格」が加わっています。
(平成3年分 路線価設定地域図)
「売買実例価額、精通者意見価格等を基として評定」
(平成4年分 路線価図)
「売買実例価額、公示価格、精通者意見価格等を基として評定」
【平成4年度の税制改正に関する答申】
平成3年12月に出された税制調査会の
「平成4年度の税制改正に関する答申」によると、
「平成4年分の評価から、
㋑評価時点をこれまでの前年7月1日から
地価公示価格の評価時点である当年1月1日に変更するとともに、
㋺評価割合を地価公示価格水準の80%程度に引き上げる
ことによりその適正化を図ること」
と記載されています。
「平成4年から実施される土地の相続税評価の適正化は
このような観点を踏まえ、金融資産に比べ土地が有利になるという
相続税課税上の歪みを是正し、土地の資産としての
有利性を縮減することにその眼目がある」とのことです。
【平7.1.31裁決、裁決事例集No.49 408頁】
平成3年分路線価について「判断」で、
「地価公示価格、売買実例価額及び
不動産鑑定士等の精通者意見価格等を基に、
公示価格水準の70パーセント程度により評価されている。」
「この評価水準は、相続税等の課税に当たって
路線価が1年間適用されることから、
その間の地価変動にも耐え得るものであることの必要性など
評価上の安全等を考慮して取り入れられているものと認められる。」
【坪単価表示】
昭和47年分路線価までは、
「路線価は3.3平方メートル当りとし、1,000円単位で表示した。」
昭和48年分路線価からは
「路線価は1平方メートル当りとし、1,000円単位で表示した。」
となっていますので、路線価の見方には注意が必要です。
【固定資産評価額】
固定資産評価額については、
平成6年以降は地価公示の水準の7割程度となっています。
そのため、平成5年以前との価格の連続性に注意が必要です。
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