士業専用ダイヤル
1/26に国税庁から新型コロナの影響による
路線価の減額補正が発表されました。
大阪市中央区の3地点については
7〜9月の地価変動補正率が「0.96」となり、
路線価×0.96×面積=価格となります。
<減額補正3地点>
・心斎橋筋2丁目
・宗右衛門町
・道頓堀1丁目
日経新聞では「景気変動では初」と掲載され、
「1955年の制度開始以来、大規模災害時を除き初めて」
コロナ禍によるインバウンド激減の影響が
いかに大きいかを物語っています。
【実務での対応】
相続は時点を選ぶことはできませんが、
売買や贈与を検討されている際には、
いつの時点で契約するか慎重にご検討ください。
また、減額補正の対象地域でなくても、
個別物件の状況(テナント入居状況等)によっては
価格が大きく変わることもあります。
単純に「減額補正の地域かどうか」だけで
一律に決めてしまうと、
適正な価格での譲渡ができていないかもしれません。
【路線価の減額補正】
国税庁ホームページによると、
「令和2年分の路線価等に係る地価変動補正率は、
路線価等が時価を上回る状況が確認された地域について、
路線価等を補正するために用います。」
路線価は時価の80%となっていますので、
令和2年1月1日時点から
時価が20%を超えて下落した地域について
減額補正が行われることになります。
■令和2年1月〜6月
基準地価の発表では、最大の下落率として
ミナミ戎橋付近で半年間▲18.8%となりましたが、
▲20%を超えてはいないため、
減額補正はありませんでした。
■令和2年7月〜9月
今回の減額補正です。
大阪市中央区の3地点のみ「0.96」となり、
令和2年1月1日時点から
時価が▲24%下落した地域ということになります。
■令和2年10月〜12月
国税庁からは、以下の地域についても、
今後減額補正の可能性があるとのことです。
いずれも都市部の商業地であり、
住宅地が概ね横ばい傾向にあることと比較すると、
用途や地域によってコロナ禍の影響の程度が
大きく違うことがわかります。
<減額補正の可能性あり>
・名古屋市中区 錦3丁目
・大阪市中央区 千日前1・2丁目
道頓堀2丁目
難波1・3丁目
難波千日前
日本橋1・2丁目
南船場3丁目
12/11の日経新聞の記事
「固定資産税、地価上昇でも負担増回避
コロナ禍に配慮」についてです。
「商業地や住宅地など全ての土地を対象に、
2021年度に限って固定資産税の負担増を
回避する特例措置を講じる。」
「地価の上昇で税額が増える場合は
20年度と同じ税額に据え置き、
地価が下落し税額が減少するなら
そのまま少ない税額を適用する。」
「新型コロナウイルスの感染拡大による
影響を配慮し、企業や家計の負担増を避ける。」
とのことです。
【固定資産税の評価替え】
固定資産税は3年に1度評価の見直しを行います。
地価上昇(税額アップ)の影響は3年に1度のみ。
地価下落(税額ダウン)は毎年反映されます。
来年度(令和3年度)がちょうど評価替えの年で、
コロナ禍で厳しい中での税額アップが見込まれていました。
【令和3年度税制改正大綱】
与党税制調査会の令和3年度税制改正大綱によると、
「令和3年限りの措置」として、
「宅地等及び農地については、
令和3年度の課税標準額を
令和2年度の課税標準額と同額とする」
とされています。
措置が延長されない限り、
3年に1度の評価替え(税額アップ)が
1年先延ばしにされたということになります。
さらに、R2.7.1〜R3.7.1の間で
地価下落があった場合は、
R3年度の税額据え置き分だけではなく、
R4年度の税額アップも少なくて済むことになります。
特に、インバウンドの影響が大きかった
都心部の商業地や外国人に人気の観光地等では、
据え置きの効果が非常に大きいと考えられます。
【鑑定士としての感想】
「課税標準額」を据え置くとされていますので、
「固定資産評価額」は評価替えを反映した上で、
課税標準額を同額とするのかなと思います。
固定資産評価額は、遺産分割・相続税評価・
株価算定・M&A・登録免許税など
様々な分野で大きな影響があります。
詳細はこれから見ていく必要がありますが、
その評価額がどのような前提(いつ時点)で
算定されているか、しっかり確認する必要があります。
また、R2課税標準額に据え置くとされていますが、
これまで田んぼだったところに新しく造成された住宅団地や
再開発等で複数の土地が1つになった新築マンションなど、
直近にできたばかりで適正なR2課税標準額が無い場合は
どのようにしていくのか興味があります。
【据え置きの影響】
日経新聞によると、
「21年度の固定資産税は
数百億円規模の減収になると見込まれる。」
となっています。
仮に減収を500億円とすると、税率1.4%ですので、
全国で約3.6兆円(直近3年間・課税標準額ベース)
も地価が上昇した計算になるのでしょうか。
大阪府から11/18に
「府内市町村の基準宅地に係る路線価等(令和3年度)」
が発表されました。
http://www.pref.osaka.lg.jp/shichoson/zei/rosen02.html
路線価と言えば、国税庁の相続税路線価ですが、
固定資産税にも、独自の路線価があります。
税務署に特定路線価の設定を申請した場合、
市の税務課さんに問い合わせがあったり、
市の路線価を参考にされたり、
相続税路線価と固定資産路線価は密接な関係があります。
【基準宅地とは】
その市町村における最も価格が高い宅地のことです。
一般的には、駅前一等地が該当することが多く、
この基準宅地を価格の頂点として、
市町村内の価格バランスを図っていくことになります。
【大阪府の動向】
「令和3年度の府内市町村(大阪市を含む43市町村)
における基準宅地の路線価等の評価額は、
令和2年度からの変動割合は、単純平均でプラス11.9%
平成30年度(前回評価替え)からの3年間の変動割合は、
単純平均でプラス11.4%」
とのことです。
前回評価替え(R29.7.1価格)とR2.7.1価格との比較では、
■上昇 28市町
1位 豊中市 新千里東町一丁目(駅前通り)
2位 吹田市 豊津町(国道479号線)
3位 大阪市 北区角田町(御堂筋)
■下落 13市町村
1位 千早赤坂村 小吹台(バス停前通り)
2位 岬 町 淡輪(府道淡輪停車場線)
3位 豊能町 東ときわ台三丁目(町道吉川中央線)
なお、これまでも負担調整措置があるほか、
この上昇率が来年度そのまま税額アップに
直結するということにはなりません。
【固定資産評価額と地価動向】
固定資産評価額は、
地価上昇補正は3年に一度の評価替えのみ。
地価下落補正は毎年反映されることになっています。
地価上昇の場合の例を挙げると、
実際の地価動向 固定資産評価額
初年度 100 100
1年目 110 100
2年目 120 100
評価替 130 130
また、地価下落の場合は、以下のとおりです。
実際の地価動向 固定資産評価額
初年度 100 100
1年目 90 90
2年目 80 80
評価替 70 70
実務でもよく見かける固定資産評価額、
どのように算定されているのか、
どこまでの地価動向が反映されているのか、
しっかり把握しておくことをご提案いたします。
11/10の日経新聞に
「関経連、21年度予算でコロナ対策を要望」
という記事が掲載されていました。
その中で、固定資産税についての記載がありましたので、
内容を見ていきたいと思います。
【関経連の意見】
「新しい経済・社会を見据えた税財政に関する意見
〜コロナ感染拡大防止と経済活動の両立、
その先の未来に向けて〜」として、
11/10に公益社団法人関西経済連合会が
プレスリリースを出しました。
この中のⅢ.1.(1)a)固定資産税・都市計画税で
「2021年度は固定資産税の評価替えの年にあたり、
2020年1月1日の公示地価をもとに
今後3年間の固定資産税・都市計画税が算出される。
基準時期が新型コロナウイルスの感染が拡大する前であり、
商業地をはじめコロナ禍を経た評価額変動は大きいと考えられる。
そのため、評価替えによって税負担額が増加する場合においては、
例えば 2017年時点の評価額に据え置くなど、
評価額の適正化を図るべきである。」
【総務省の対応】
総税評第57号(令和2年09月30日)
「令和3年度固定資産の評価替えに関する
留意事項について(追加)」が出ています。
「土地の評価替えの実施に当たっては、
新型コロナウイルス感染症による影響その他の要因により
地価動向が変化している場合には、
各市町村の区域内の地価動向を的確に把握し、
改正予定の固定資産評価基準に基づく下落修正を行うなど、
適正な評価事務の執行に努めてください。」
そして、上記改正予定の固定資産評価基準では、
基準地価の動向、不動産鑑定士の鑑定評価等を活用し、
R2.1.1〜R2.7.1の下落状況を把握するとしています。
【実務への影響】
これまでも固定資産税の評価替えの際には、
価格調査基準日である1/1時点価格を
そのまま採用するのではなく、
1/1〜7/1までの価格変動(下落修正分)を把握し、
適切に下落修正を反映しています。
不動産鑑定士も「標準宅地の時点修正業務」として
毎年市町村と契約を結んで地価動向を報告しています。
そのため、今回もコロナ禍の影響が無い
R2.1.1時点のまま評価替えされた額が出るのではなく、
R2.1.1〜R2.7.1までのコロナ禍の影響が織り込まれた
新しい評価額が出ることになります。
とはいえ、特に市街地中心部など、これまでの
3年分の地価上昇のほうが大きい地域も多いため、
結果として評価額=税額上昇となる地域が増えそうです。
(5%+5%+5%−5%=10%上昇というイメージ)
なお、R2.7.1〜R3.7.1の地価動向(下落修正)は
令和4年度の評価額で反映されることになりますので、
来年の令和3年度の評価額に対するコロナ禍による影響は
R2.1.1〜R2.7.1までの分ということになります。
現在の2017年度評価額のまま据え置くのか、
動向を注視していきたいです。
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