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  1. 士業に役立つ不動産評価まめ知識
 

士業に役立つ不動産評価まめ知識

2021/05/17
登記面積で計算すると、
この建物は建蔽率・容積率オーバーなので
違反建築物ではないでしょうか」

このようなご質問もよく頂きます。

【ご回答】

登記面積で計算してオーバーとなっても、
すぐに違反建築物と判断することはできず、
建物の適法性に問題があるとは限りません。

適法性に問題があると、売買やM&Aで買主が躊躇したり、
金融機関での融資の際に問題になることがあります。

建築計画概要書で詳細を確認し、
現地で書面との異同をしっかり把握することが大切です。

【建築計画概要書】

その建物が建蔽率・容積率オーバーかどうかは、
建築確認・完了検査の数値で判断する必要があります。

具体的には、市役所の建築担当課において
建築計画概要書を閲覧ないし取得して確認することになります。

実務では、概要書記載の面積に基づいてチェックされています。
また、登記面積の求め方と、建築基準法上の面積の求め方は
異なっている部分もあるからです。

ただ、概要書も、完了検査後の増改築の適法性まで
担保しているわけではありませんので、
現地においてしっかり異同を調査することが大切です。

【具体例】

仮に、建蔽率60%・容積率200%として、
土地 登記面積 100㎡
建物 登記面積 1F 65㎡ 延べ 130㎡(2階建)の場合。

建蔽率  65㎡ ÷ 100㎡ =  65% > 60%
容積率 130㎡ ÷ 100㎡ = 130% < 200%
登記面積から見ると建蔽率オーバーの建物となっています。

しかし、建築計画概要書において
土地 実測110㎡となっている場合、
建蔽率  65㎡ ÷ 110㎡ ≒  59.09% < 60%
容積率 130㎡ ÷ 110㎡ ≒ 118.18% < 200%
となり、建蔽率もオーバーせず適法となります。

【建蔽率・容積率】

建蔽率:建築面積の敷地面積に対する割合
容積率:建物延床面積の敷地面積に対する割合です。

住宅系の用途であれば、建蔽率60%・容積率200%。
商業系の用途であれば、建蔽率80%・容積率400%。
このような指定が一般的には多くなっています。

指定(基準)建蔽率・容積率を超えている場合、
建蔽率・容積率オーバーとして
適法性(遵法性)に問題がある建物ということになります。

この場合、角地や二方路などによる建蔽率の緩和、
その他特例による容積率の緩和などに注意が必要です。

また、建築当初は適法で、その後規制が変更となった
既存不適格建物の場合もあります。

2021/05/10
今年度も納税通知書が
お手元に届いている時期ではないでしょうか。

新型コロナウイルスによる影響で
今年度は税額据え置きとなっていますが、
やはり気になるのが固定資産税額・都市計画税額ですよね。

今回は「固定資産税に気を付けろ!」
週刊エコノミスト5/18号からです。

課税ミスは全国で多発
「結局、市町村から送られる納税通知書の
税額は〝言い値〟に過ぎず、
今なお表面化していない課税の誤り
無数にあるに違いない。」と書かれています。

さらに、
「税理士でも固定資産税を熟知している人は
ごく少数と、頼れる専門家も限られる。
そうであればこそ、納税者は少しでも
知識を蓄えることで自己防衛するしかない。」とも。

【固定資産評価と不動産鑑定士】

固定資産評価額の基礎となる
固定資産税標準宅地の鑑定評価は、
全国の市町村で不動産鑑定士が行っています。

不動産鑑定士の鑑定評価に基づいて、
各市町村が専用のシステムで
それぞれの土地の評価額を算定しています。

そのため、不動産鑑定士は
固定資産評価に関して詳しいと言えるでしょう。

【審査申出と課税説明】

■審査申出
固定資産評価額に不服がある場合は、
審査申出をすることができます。

ただ、3年に一度の評価替え年度しかできず、
申出できる人や事項についても決まっています。

ちょうど今年度(令和3年度)は、評価替え年度です。
今年度と言いながら、1年中できるのではなく
数ヶ月間しか期間がありません。

■課税説明
一方、固定資産評価額がどのように算定されているかという
「課税説明」については、いつでも可能です。
評価替え年度に縛られることはなく、
委任状があれば代理人でも課税説明を受けることができます。

【不動産鑑定士をご活用ください】

不動産鑑定士はそもそも不動産評価の専門家であり、
さらに固定資産評価も担っているわけですので、
ご自身で難しい固定資産評価について一から学ばなくても、
気になるところはしっかり調査できます。

不動産鑑定士が課税説明を受ければ、
適正に評価されているか確実に調べることができます。

必要なものは、その不動産の名義人の委任状です。
ご相続が発生している場合は、
戸籍謄本や相続関係説明図等が必要なこともあります。

【士業の先生限定】

士業の先生であれば、
当事務所の“ちょい聞きサービス(無料)”
固定資産評価額についてのご相談をお受けしています。
お気軽にお申し付けください。
(もし詳細調査が必要な場合は、別途お見積りいたします。)


2021/05/07
今回は当事務所のコダワリである
鑑定評価の「見える化」
評価の“オープンキッチン化”についてです。

【評価の前提となる情報・資料】

評価の前提となる情報や資料には様々なものがあります。

取引事例では高値、安値、特殊事情の有無。
実勢価格と公示地価や路線価等との開差の有無。
賃料水準、費用項目、利回りをどう考えるか。
どのような経済指標を採用するか。等々

採用する資料や情報が少し変わるだけで、
最終結果である鑑定評価額に大きく影響することも多いです。

【評価のオープンキッチン化】

「様々な資料や情報がありますが、
この資料から試算するとこうなります。
一方、こちらの情報に基づくと逆にこうなります。
今回はこの資料が最も説得力があるのでこれを重視しましょうか。」

このように評価の過程を全て「見える化」することで、
より深い理解とご依頼目的達成のための
お手伝いをしています。

クローズされたキッチンで勝手に料理を完成させるのではなく、
オープンキッチンで楽しく話しながら一緒に料理を作っていく。
そんなイメージと言えば少しはわかりやすいでしょうか。

いきなり結果だけ「○○万円です」と言われても、
よくわからなかったり、ご依頼目的に合わないことも出てきます。

もちろん最終的にご提出する鑑定評価書・意見書には
評価の過程が明確に記載されているのですが、
どうしても専門的な内容となり、読みにくいのも実情です。

ご相談の段階から様々な試算を行い、
複数のシミュレーションをわかりやすく行うことによって、
自分の立場だけではなく、
相手側の立場や中立的な立場に立った目線
一緒に検討していくことができます。

【不動産鑑定評価基準】

不動産の価格は、多数の要因の相互作用の結果
として形成されるものであるが、
要因それ自体も常に変動する傾向を持っている。

価格形成要因を市場参加者の観点から明確に把握し、かつ、
その推移及び動向並びに諸要因間の相互関係を十分に分析して、
前記三者(※)に及ぼすその影響を判定することが必要である。
(※不動産の効用、相対的稀少性、不動産に対する有効需要)


2021/05/06
中古で取得した建物の簿価は、
取引により取得した価格をベースにしているため
簿価≒時価と考えてもよいでしょうか。

このようなご質問もよく頂きます。

もちろん直近に取得した中古建物で、
適正な時価で取引されている場合や、
適正に土地建物の按分をされている場合は
簿価≒時価のことも多いです。

しかし、以下のような場合は
必ずしも簿価≒時価とはならないこともありますので
十分にご注意ください。

【売買価格が正常ではなかった場合】

個々の取引には、売り急ぎや買い進みなど
様々な事情が含まれていることがほとんどです。

適正な価格帯の範囲内であれば問題ありませんが、
適正な価格帯から大きく乖離している場合は、
簿価≒時価とならないことがあります。

どうしても欲しいから高値を承知で買った。
先方から頼まれて、しかたなく安く買った。
地域の相場を知らず、高値で買ったor安値で売った。
このようなことありませんでしょうか。

【建物価格を適正に按分できていない場合】

売買契約書に土地建物の総額のみ記載され、
別途土地建物価格の按分が必要な場合があります。

このような場合、適正に按分されていれば問題ありません。

しかし、機械的に固定資産評価額で按分する等
適正に按分できていなかった場合、
そもそものスタートから簿価と時価が
乖離してしまっていることがあります。

【経済的減価が発生している場合】

建物の減価の要因には、
物理的要因、機能的要因、経済的要因の3つがあります。

物理的要因は、時間の経過に伴うもの。
機能的減価は、建物機能の陳腐化や旧式化など。
これらはいわゆる減価償却の概念の中に含まれます。

一方、経済的減価は、地域の衰退や市場性による減価です。
同じ建物でも、需要が高い駅前に立地する場合と
需要がほとんどない山の中にあるのでは市場価格は異なります。

また、建物取得時は繁華していたエリアでも、
現在は人通りもなく空き店舗が増えている場合など
市場価格(時価)が大きく変わってしまうことがあります。

このような経済的減価は、
経年で一律に減価する減価償却では
適正に減価しきれていない場合もあります。

【まとめ】

以上、代表的な3つを挙げてみました。
他にも簿価≠時価となるケースはありますし、
新築建物であっても簿価≒時価とならないこともあります。

その簿価はどのような根拠で現在の数字なのか。
しっかり見ていくことが大切です。


2021/04/30
不動産の価格は、
最有効使用が何かによって決まります。

住宅地、商業地、工業地。
戸建住宅、賃貸マンション、
店舗、事務所、工場、倉庫など。

ここでいう「最有効使用」とは何なのか。
よく誤解されることがありますので、
改めて見ていきたいと思います。

【最有効使用とは】

不動産鑑定評価基準によると、
「不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用」
とされています。

この言葉だけを見ると、
もう最高でベストでNo.1で、
これ以上ないスゴイ使い方…というイメージを
持つこともあるかもしれません。

でも、実際のところは、
“フツーの人がフツーに考えるフツーの使い方”です。

No.1にならなくてもいいんです。
もともと特別なOnly Oneじゃなくてもいいんです。

【最有効使用判定のチェックポイント】

■良識と通常の使用能力を持つ人が採用するであろう
 と考えられる使用方法であること。

オレだったらこの不動産の収益を何倍にもできる!
だから評価を高くしてくれ!
と、頼まれたとします。

しかし、「通常の使用能力」を前提としていますので、
この方ならではのスゴイ使用方法は、
その人個人に属する“属人的”なものとなり、
評価の前提にすることはできません。

■使用収益が将来相当の期間にわたって
 持続し得る使用方法であること。

この1年だけはミラクルでめちゃくちゃ儲かった。
これを前提に評価してくれ!

この場合も、収益の安定性・持続性がないため、
ミラクル前提での評価はできません。
不動産の評価でも「サステイナビリティ」は重要です。

■効用を十分に発揮し得る時点が
 予測し得ない将来でないこと。

いつかここは一大リゾート地になる!
見込みは無いけど、開発許可さえ取れれば…。

この場合も、具体的なリゾート地の事業計画や
開発許可の取得など、
リゾート地になる時点が予測できる将来でないと
評価の前提にすることはできません。

【コンサルティングの活用】

とはいえ、理想は高く、夢はでっかく。
事業の採算性を検討したい場合もあります。

このような場合は、不動産鑑定評価書ではなく、
前提条件を付記した上で、
不動産のコンサルティングレポートとして
どのような試算結果になるかをご報告することが可能です。

【最有効使用の原則】

不動産の価格は、その不動産の効用が
最高度に発揮される可能性に最も富む使用
(以下「最有効使用」という。)を前提として
把握される価格を標準として形成される。

この場合の最有効使用は、
現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、
良識と通常の使用能力を持つ人による
合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。

なお、ある不動産についての現実の使用方法は、
必ずしも最有効使用に基づいているものではなく、
不合理な又は個人的な事情による使用方法のために、
当該不動産が十分な効用を発揮していない場合が
あることに留意すべきである。

※最有効使用の判定上の留意点※

不動産の最有効使用の判定に当たっては、
次の事項に留意すべきである。

(1)良識と通常の使用能力を持つ人が採用するであろう
   と考えられる使用方法であること。

(2)使用収益が将来相当の期間にわたって
   持続し得る使用方法であること。

(3)効用を十分に発揮し得る時点が
   予測し得ない将来でないこと。


2021/04/27
「どの建物価格が正しいのでしょうか?」
というご質問をよく頂きます。

期末簿価、鑑定評価額、固定資産評価額etc.
どれもちゃんとした根拠に基づいているのに、
価格が異なっていることが多いです。

【評価実例】

実際の評価実例に基づいて見てみましょう。
築約30年の鉄骨造工場・倉庫です。

■期末帳簿価格   70,000,000円
■鑑定評価額    65,000,000円
■固定資産評価額 200,000,000円

期末簿価と鑑定評価額は概ね近似していますが、
固定資産評価額は倍以上の差があります。

どの価格を建物価格として採用するかによって、
影響はかなり大きく違ってきます。

【期末簿価】

固定資産台帳における
「建物」及び「建物付属設備」が該当します。
取得価格は実際の建築費でした。

その後の修繕費等も適切に計上され、
減価償却も適切になされています。

経年減価のみで、目視等により確認できる
偶発的な損傷や劣化等は考慮されていないものの、
なんといっても「実額」ですので説得力は大きいです。

【鑑定評価額】

不動産鑑定評価基準に則って、
建物を躯体・仕上・設備に区分し、
再調達原価や経済的残存耐用年数も適切です。

期末簿価より低くなったのは、
経年減価以外の物理的・機能的・経済的減価
考慮したためです。

【固定資産評価額】

固定資産評価基準に則り、
再建築費(価格)を基準として評価する方法
(再建築価格方式)を採用して適切に評価されています。

ただ、建物を躯体・設備に分けず、
設備も躯体と同じ耐用年数となり、
どれだけ築年を経ても残価率20%です。

さらに、3年に1度しか価格の見直しを行わず、
前年度の評価額に据え置かれる措置(※)もあります。
この場合、経年劣化しているはずなのに、
価格がずっと変わらないこともあります。

【建物価格の比較】

このようにそれぞれの根拠に基づき
適切に評価されている“正しい価格”であるものの、
建物価格は大きく異なることがあります。

評価実例では固定資産評価額が
期末簿価や鑑定評価額より高くなっていますが、
新築から概ね10〜15年程度までは
固定資産評価額のほうが低くなっている場合が多いです。

売買・相続・裁判・株価評価等、
いずれの場面でどの価格を建物価格として採用するか。
しっかり見極めていくことが重要だと考えます。

※【前年度の評価額に据え置かれる措置】※

新基準年度の評価額と前年度の評価額とを比較し、
新基準年度の評価額が前年度の評価額を下回る場合は、
新基準年度の評価額として算定された額が
それ以降の課税年度の評価額となります。

しかし、新基準年度の評価額が前年度の評価額を上回る場合は、
前年度の評価額に据え置かれる措置が採られています。

また、家屋の評価替えは、
「建築物価の変動(再建築費評点補正率)」と
「家屋の建築後の経過年数に応じた減価(経年減点補正率)」
を考慮して全国一律に3年に一度行い
経年減点補正率は、構造及び用途等の区分に応じて、
下限(最終残価率)が2割として設定されています。


2021/04/17
「鑑定評価書で採用された取引事例について、
地番を含む詳しい内容を知ることはできますか?」

このようなお問い合わせを頂くことがあります。
依頼者というより、交渉の相手方など
鑑定評価書の内容を精査したい方からが大半です。

【取引事例の情報開示】

しかし、取引事例の情報開示については、
公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会の
「資料の収集・管理・閲覧・利用に関する規程」
によって制限されています。

何かやましいことがあって開示しないのではなく、
ちゃんとしたルールで定められています。

一方、鑑定評価書で採用した
地価公示標準地価格、地価調査基準地価格については
国土交通省や都道府県においても公開されていますので、
詳しい内容をお伝えすることができます。

【資料の収集・管理・閲覧・利用に関する規程】

(鑑定評価書等における資料の表示方法等)
第32条
事例資料を鑑定評価等業務の成果物に登載する場合は、
当該成果物の名称のいかんを問わず
次の事項を記載してはならない。

(1)地番又は住居表示
(2)事例の位置を特定できる図面
(3)取引当事者名、居住者名、店舗・ビル名等
(4)事例資料作成者名
(5)事例収集源

2 事例資料は、鑑定評価等業務の成果物に、
その名称を問わずいかなる場合にも、
そのまま又は再謄写して添付してはならない。

3 前項の成果物に事例地の位置等を
示した図面を添付する場合は、
1万分の1以下の縮尺の図面を用い、
その位置が特定できないようにしなければならない。

4 依頼者が使用目的を特定した
国又は地方公共団体、その他の公的機関であって、
当該事例資料の当事者から
当該第三者提供に関する同意を取り付ける等
個保法において認められる場合に限り、
第1項の規定にかかわらず、
第1項第1号から第3号に規定する事項を
別途資料として提供することができる。


2021/04/02

土地に関する基本法である土地基本法。


令和241日に改正土地基本法が施行され、

土地基本方針に不動産鑑定士が登場しています。

 

あまり知名度がない不動産鑑定士ですが、

こうやって載せて頂けることは本当にうれしいです。

 

【不動産市場を支えるインフラ】

 

「不動産の鑑定評価の専門家の存在自体が、

不動産市場を支えるインフラである」

 

土地基本法が定める土地基本方針の中で、

不動産鑑定士の役割について明記されています。

 

単なる知る人ぞ知る国家資格ではなく、

不動産市場を支えるインフラとして

これからもより一層精進していきます。

 

【土地基本方針】

 

令和2526日閣議決定

土地基本法(平成元年法律第84号)第21条第1項の

規定に基づき、土地基本方針を別紙のとおり定める。

 

2.不動産市場情報の整備の推進

 

「現在の地価公示等を通じた地価情報の発信や、

不動産取引価格情報の提供、不動産取引価格指数

(住宅、商業用不動産)の公表に加え、

既存住宅販売量に関する指数・不動産の賃料に関する指標の整備、

官民連携した面的な市場情報の整備等を行うなど、

不動産市場の動向を的確に把握する統計の整備と

データの提供を充実化することにより、

不動産市場のより一層の透明化を図り、円滑な不動産取引を推進する。

 

さらに、地価公示等についても、

地価の個別化・多極化に対応した調査方法の見直しを行うなど、

よりきめ細やかに地価動向を把握・発信する。

 

また、不動産の鑑定評価の専門家の存在自体が、

不動産市場を支えるインフラであることから、

不動産鑑定業者の能力に着目した業者選定に向けた

依頼者への情報提供等の支援や、

不当鑑定等に対する監督の強化を通じ、

不動産鑑定評価の品質の維持・向上を図る。」

 

【土地基本法第21条】

 

「政府は、土地についての基本理念にのっとり、

前章に定める土地の利用及び管理、土地の取引、

土地の調査並びに土地に関する情報の提供に関する

基本的施策その他の土地に関する施策の総合的な推進を図るため、

土地に関する基本的な方針を定めなければならない。」


2021/03/26

弁護士さんから頂く最も多いご相談は、

「相手方から出てきた鑑定評価書を見てほしい」です。

 

その中でも、特に共有物件の評価について。

古きよき伝統的な論点ではありますが、

今でも多く目にする共有減価と裁判上の評価について

検討していきたいと思います。

 

【原 則】

 

共有持分を評価する場合は、

使用・収益・処分の制約や

共有物分割の時間的・経済的負担を考慮した

共有減価(市場性の減退)を考慮します。

 

【例 外】

 

共有持分の併合、全面的価格賠償の場合は、

共有減価を行いません。

 

下記の書籍にも、共有減価を行わない旨の記載があります。

 

■「家庭裁判所における遺産分割遺留分の実務(第3版)」

  片岡武/管野眞一(編著) 日本加除出版株式会社

 

「不動産の共有持分(1/2)を有する相続人が

被相続人の共有持分(1/2)を代償取得する場合、

あるいはすべての共有持分を一括売却する場合などは、

共有減価は行わない。

 

「なぜなら、共有持分どうしが併合し、

完全所有権(共有持分100%)を取得するので

いわゆる併合利益が生まれ、

共有持分減価は消滅するからである。」

 

■「共有不動産の紛争解決の実務(第2版)」

  三平聡史著 民事法研究会

 

「全面的価格賠償においては、結果として

共有を脱する(単独所有になる)ことになる、

つまり、共有による制約・不都合はなくなります。

そこでの賠償額の算定においては

共有減価を適用しないのが一般的です。

(東京地判平成25719判例集未登載、

東京地判平成171019WLJ)」

 

【鑑定評価書の内容】

 

不動産鑑定士は、通常「正常価格」を評価するため、

上記原則に基づき、共有減価を考慮した

鑑定評価を行っていることが多いです。

 

正常価格とは、「市場性を有する不動産について、

現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる

条件を満たす市場で形成されるであろう

市場価値を表示する適正な価格」です。

 

そのため、他の共有者のためだけの価格ではなく、

正常な市場で成立する価格を出しています。

 

【不動産鑑定士との連携】

 

不動産鑑定士に鑑定依頼をされる際には、

どのような目的での評価なのか、

しっかり連携していくことが大切です。

 

認めてもらえない共有減価を考慮して価格が下がっても、

最終的には共有減価無しの価格になってしまったりすると、

依頼者との信頼関係も崩れてしまいかねません。


2021/03/24

令和3年公示地価の結果について

近畿圏の状況を見ていきたいと思います。

各府県の代表的な地点をピックアップします。

 

【概 況】


コロナ禍により、これまで上昇傾向にあった

地価動向が一変した1年(R2.1.1R3.1.1)でした。

商業地のほうが住宅地より影響が大きく、

都市部のほうが地方(郊外)より影響が大きくなっています。

 

全国の変動率上昇トップ10

近畿は1地点も入っていません。

 

逆に、全国の変動率下落トップ10では、

住宅地:兵庫県(香美・赤穂)の2地点

商業地:大阪ミナミが8地点、京都祇園1地点と

ワースト10地点中9地点が入っています。

近畿の商業地は、全国で最も大きな変化がありました。

 

年間変動率(R2.1.1R3.1.1)は

新聞やインターネットですぐ検索できますので、

このブログでは半年毎の地価動向を見ていきます。

 

全体的に、前半(R2.1.1R2.7.1)は下落が大きく

後半(R2.7.1R3.1.1)は下落幅が縮小している傾向です。

 

【滋賀県】

 

■大津市・JR大津駅前(商業地)

R2.1.1 354,000/

R2.7.1 349,000/㎡(▲1.4%)

R3.1.1 349,000/㎡(±0.0%)

 

大津駅前は、年間変動率は▲1.4%ですが、

前半はマイナス、後半は横ばいとなっています。

後半は地価下落が無く、持ち直した形です。

 

【京都府】

 

■京都市東山区・祇園(商業地)

R2.1.1 3,500,000/

R2.7.1 3,220,000/㎡(▲8.0%)

R3.1.1 3,200,000/㎡(▲0.6%)

 

祇園の四条通沿いは、年間変動率は▲8.6%ですが、

半年毎の変動では下落幅が大きく縮小しています。

一方、花見小路通沿いの地点は、

年間▲13.9%となり、全国ワースト10位です。

 

■京都市中京区・地下鉄丸太町駅付近(商業地)

R2.1.1 880,000/

R2.7.1 865,000/㎡(▲1.7%)

R3.1.1 860,000/㎡(▲0.6%)

 

御所南エリアでも、年間変動率は▲2.3%ですが、

半年毎の変動では下落幅が半減しています。

 

【大阪府】

 

■大阪市北区・グランフロント(商業地)

R2.1.1 25,000,000/

R2.7.1 23,600,000/㎡(▲5.6%)

R3.1.1 22,900,000/㎡(▲3.0%)

 

大阪キタは、年間変動率は▲8.4%ですが、

半年毎の変動では下落幅が半減しています。

 

■大阪市中央区・ミナミ戎橋付近(商業地)

R2.1.1 28,700,000/

R2.7.1 23,300,000/㎡(▲18.8%)

R3.1.1 21,100,000/㎡(▲9.4%)

 

大阪ミナミは、年間変動率は▲26.5%と大きいですが、

半年毎の変動では下落幅が半減しています。

一方、すぐ近くの道頓堀の地点は、

年間▲28.0%となり、全国ワースト1位です。

 

【兵庫県】

 

■神戸市中央区・三ノ宮駅前(商業地)

R2.1.1 7,200,000/

R2.7.1 6,700,000/㎡(▲6.9%)

R3.1.1 6,500,000/㎡(▲3.0%)

 

三ノ宮駅前は、年間変動率は▲9.7%と大きいですが、

半年毎の変動では下落幅が半減しています。

 

【奈良県】

 

■奈良市・近鉄奈良駅前(商業地)

R2.1.1 830,000/

R2.7.1 745,000/㎡(▲10.2%)

R3.1.1 730,000/㎡(▲2.0%)

 

近鉄奈良は、年間変動率は▲12.0%と大きいですが、

半年毎の変動では下落幅が大きく縮小しています。

 

【和歌山県】

 

■和歌山市・JR和歌山駅前(商業地)

R2.1.1 442,000/

R2.7.1 442,000/㎡(±0.0%)

R3.1.1 442,000/㎡(±0.0%)

 

JR和歌山駅前は、年間変動率±0.0%と横ばいです。

前半後半とも±0.0%で、地価下落はありません。

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