中古で取得した建物の簿価は、
取引により取得した価格をベースにしているため
簿価≒時価と考えてもよいでしょうか。
このようなご質問もよく頂きます。
もちろん直近に取得した中古建物で、
適正な時価で取引されている場合や、
適正に土地建物の按分をされている場合は
簿価≒時価のことも多いです。
しかし、以下のような場合は
必ずしも簿価≒時価とはならないこともありますので
十分にご注意ください。
【売買価格が正常ではなかった場合】
個々の取引には、売り急ぎや買い進みなど
様々な事情が含まれていることがほとんどです。
適正な価格帯の範囲内であれば問題ありませんが、
適正な価格帯から大きく乖離している場合は、
簿価≒時価とならないことがあります。
どうしても欲しいから高値を承知で買った。
先方から頼まれて、しかたなく安く買った。
地域の相場を知らず、高値で買ったor安値で売った。
このようなことありませんでしょうか。
【建物価格を適正に按分できていない場合】
売買契約書に土地建物の総額のみ記載され、
別途土地建物価格の按分が必要な場合があります。
このような場合、適正に按分されていれば問題ありません。
しかし、機械的に固定資産評価額で按分する等
適正に按分できていなかった場合、
そもそものスタートから簿価と時価が
乖離してしまっていることがあります。
【経済的減価が発生している場合】
建物の減価の要因には、
物理的要因、機能的要因、経済的要因の3つがあります。
物理的要因は、時間の経過に伴うもの。
機能的減価は、建物機能の陳腐化や旧式化など。
これらはいわゆる減価償却の概念の中に含まれます。
一方、経済的減価は、地域の衰退や市場性による減価です。
同じ建物でも、需要が高い駅前に立地する場合と
需要がほとんどない山の中にあるのでは市場価格は異なります。
また、建物取得時は繁華していたエリアでも、
現在は人通りもなく空き店舗が増えている場合など
市場価格(時価)が大きく変わってしまうことがあります。
このような経済的減価は、
経年で一律に減価する減価償却では
適正に減価しきれていない場合もあります。
【まとめ】
以上、代表的な3つを挙げてみました。
他にも簿価≠時価となるケースはありますし、
新築建物であっても簿価≒時価とならないこともあります。
その簿価はどのような根拠で現在の数字なのか。
しっかり見ていくことが大切です。