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  1. 士業に役立つ不動産評価まめ知識
 

士業に役立つ不動産評価まめ知識

2021/03/04

相続税路線価は時価の80%となっています。

これっていつからなのでしょうか?

また、どのような経緯で80%になったのでしょうか。

色々調べてみました。

 

【令和2年路線価】

 

国税庁ホームページでは、

「路線価等は、11日を評価時点として、

1年間の地価変動などを考慮し、

地価公示価格等を基にした価格(時価)の80%程度

目途に評価しています。」

とされています。

 

【いつから80%になったのか】

 

平成4年分の路線価からです。

平成3年分までは70%水準で評価されていました。

 

割り戻すための割合が異なりますので、

価格の連続性に注意が必要です。

 

路線価図の説明を読むと、平成4年分からは

路線価評定の基に「公示価格」が加わっています。

 

(平成3年分 路線価設定地域図)

「売買実例価額、精通者意見価格等を基として評定」

(平成4年分 路線価図)

「売買実例価額、公示価格、精通者意見価格等を基として評定」

 

【平成4年度の税制改正に関する答申】

 

平成312月に出された税制調査会の

「平成4年度の税制改正に関する答申」によると、

「平成4年分の評価から、

㋑評価時点をこれまでの前年71日から

 地価公示価格の評価時点である当年11日に変更するとともに、

㋺評価割合を地価公示価格水準の80%程度に引き上げる

ことによりその適正化を図ること」

と記載されています。

 

「平成4年から実施される土地の相続税評価の適正化は

このような観点を踏まえ、金融資産に比べ土地が有利になるという

相続税課税上の歪みを是正し、土地の資産としての

有利性を縮減することにその眼目がある」とのことです。

 

【平7.1.31裁決、裁決事例集No.49 408頁】

 

平成3年分路線価について「判断」で、

「地価公示価格、売買実例価額及び

不動産鑑定士等の精通者意見価格等を基に、

公示価格水準の70パーセント程度により評価されている。」

 

「この評価水準は、相続税等の課税に当たって

路線価が1年間適用されることから、

その間の地価変動にも耐え得るものであることの必要性など

評価上の安全等を考慮して取り入れられているものと認められる。」

 

【坪単価表示】

 

昭和47年分路線価までは、

「路線価は3.3平方メートル当りとし、1,000円単位で表示した。」

 

昭和48年分路線価からは

「路線価は1平方メートル当りとし、1,000円単位で表示した。」

となっていますので、路線価の見方には注意が必要です。

 

【固定資産評価額】

 

固定資産評価額については、

平成6年以降は地価公示の水準の7割程度となっています。

そのため、平成5年以前との価格の連続性に注意が必要です。


2021/02/25

国土交通省から224日に発表された

地価LOOK令和2年第4四半期(10/11/1

近畿圏について詳しく見ていこうと思います。

 

【全国概況】

 

「前期と比較すると、横ばい・下落地区数が減少し、

上昇地区数が増加した。」

 

「用途別では商業系が住宅系より下落地区の割合が高く、

地域別では大都市圏が地方圏より下落地区の割合がやや高くなった。」

 

「住宅地では、マンションの堅調な販売状況

事業者の素地取得の動きが回復したことにより、

需要が堅調な地区が見られる。」

 

「商業地では、再開発事業の進展等により、

需要の回復が一部の地区で見られる。」

 

「一方、商業地では、新型コロナウイルス感染症の影響により、

ホテルや店舗等の収益性の低下により下落が継続している地区や、

店舗やオフィスの空室が増加し新たに下落に転じた地区が見られる。」

 

住宅地は総じて堅調で、

商業地も需要の回復傾向がみられるものの、

ホテル、店舗、オフィスなど

収益性の低下や空室率が上昇した地区は

まだまだ地価の下落傾向が続いているようです。

 

実際に近畿圏ではどのようになっているのでしょうか?

 

【近畿圏の動向】

 

■滋賀県

住宅地 南草津駅周辺 0%横ばい

商業地 調査地区設定なし

 

■京都府

住宅地 下鴨 0%横ばい

    桂  03%下落
    二条 03%下落

 

商業地 京都駅周辺 03%下落

河原町   03%下落

烏丸    03%下落

 

■大阪府

住宅地 豊中  0%横ばい

    天王寺 0%横ばい

    福島  03%下落

 

商業地 西梅田  03%下落

    中之島西 03%下落

    北浜   03%下落

    OBP   03%下落

    新大阪  03%下落

    阿倍野  03%下落

    江坂   03%下落

    茶屋町  36%下落

    心斎橋  36%下落

    なんば  36%下落

 

■兵庫県

住宅地 六甲   03%上昇(前期0%横ばい

    甲子園口 03%上昇(前期0%横ばい

    芦屋   03%上昇(前期0%横ばい

 

商業地 西宮北口 03%上昇(前期03%下落

三宮駅前 03%下落

 

■奈良県

住宅地 奈良登美ヶ丘 0%横ばい

商業地 調査地区設定なし

 

■和歌山県

調査地区設定なし

 

【前期からの変動】

 

近畿圏では、兵庫県以外の府県は全て

前期(第三四半期)と同じ地価動向でした。

 

一方、兵庫県は地価の回復傾向が顕著です。

三宮駅前の商業地こそ前期と同じ傾向でしたが、

その他の地区では全て03%上昇」となっていて、

今後も地価上昇傾向が続くと予想されています。

 

<住宅地>

■六甲地区

先行き不透明感は、住宅需要に大きな影響を与えていないとし、

稀少性の高い物件には需要の競合が見られることから

取引価格は上昇に転じ、当期の地価動向はやや上昇で推移した。」

 

■甲子園口

より住環境を整備したいとする新たな需要も生まれており、

取引は回復傾向にある。」

住宅の投資物件としての安定性が改めて評価され、

貸家住宅素地の需要増加も確認される。

このような状況から取引価格は上昇傾向となり、

当期の地価動向はやや上昇に転じた。」

 

JR芦屋駅周辺

マンション開発素地等の需要には回復傾向が認められ、

稀少性の高い物件には需要の競合が見られることから

取引価格は緩やかな上昇に転じ、

当期の地価動向はやや上昇となった。」

 

<商業地>

■西宮北口

「大型商業施設等の人出は一層回復しており、

さらにテレワーク等により在宅時間が増加したことで、

比較的狭い商圏の近隣型の商業施設においても

売上げが増加する状況が確認されている。

以上のような市況から店舗賃料は上昇傾向となって

当期の地価動向はやや上昇に転じた。」


2021/02/19

「鑑定評価書を見て頂けないでしょうか?」

というご相談が増えてきています。

 

交渉相手から出てきた鑑定評価書等が

適正に評価されているかどうかはもちろんのこと、

どのような前提で、どのように評価されているか。

 

セカンドオピニオン「第二の意見」として

別の専門家の視点で内容を見てみると

新しい発見がたくさん出てくることが多いです。

 

【対象となる書類】

 

他の不動産鑑定士が作成した鑑定評価書のほか、

意見書、調査報告書、市場調査レポートなど。

不動産業者さんの査定書等も該当します。

 

不動産の価格・賃料が出ていて、

その価格・賃料の根拠が記載されている書類であれば

どのようなものでも確認することができます。

 

【どのような内容を確認するのか?】

 

■鑑定評価の条件

同じ土俵に立って評価しているかどうか。

評価対象、権利の種類、価格時点など、

そもそも前提条件が異なっているために

価格が異なっていることも多いです。

 

「この評価は間違っているのではないか?」

とおっしゃることも多いのですが、

ここの違いによる価格の違いが非常に多いです。

 

現地は建物があるが、建物が無い更地として。

所有権ではなく、借地権(底地)として。

土壌汚染があるが、土壌汚染が無いものとして。

現在時点ではなく、過去時点の価格としてetc…

 

例を挙げるだけでもたくさん出てきます。

 

■依頼目的

依頼目的も重要な確認項目です。

「担保評価」は保守的に評価される傾向にあります。

 

また、「売買の参考」であれば、固定資産評価額などの

公的価格水準と乖離があったとしても、

実際の不動産市場の動向を踏まえた価格が出ています。

 

■評価の内訳

採用されている取引事例、想定事項や各種利回りなど

いわゆる数字の部分を見ていきます。

 

ここでは単に数字だけを追っていくのではなく、

評価主体の考え方、評価対象に対する見方等を踏まえ、

どのような根拠でその数字を採用しているか

広い視点から内容を見ていくことになります。

 

不動産鑑定評価基準でも、鑑定評価は

「不動産の価格に関する専門家の判断であり、意見である」

とされていることからも、

評価主体の考え方を理解すること

鑑定評価書等の内容を理解していくための近道です。

 

【最後に】


単なる“粗探し”をするのではなく、

その鑑定評価書等の内容を適切に理解して、

最終的に納得できる問題解決のため

今後どうしていけばいいのかを

しっかりお話していくことが大切だと考えます。


※士業の先生であれば、
 “ちょい聞き”サービスで対応しています。

2021/02/12

「共有持分の不動産は、必ず共有減価するのですか?」

というご質問を頂くことがあります。

 

【共有持分の減価要因】

 

共有持分しかないことは、

完全な100%所有権(単独所有権)と比べ、

使用・収益・処分に制約があり、

共有物分割をするとしても時間的・経済的負担があります。

 

そのため、共有持分は売却困難物件として

市場性の減退(共有減価)が認められます。

 

【共有減価率】

 

様々な考え方がありますが、一般的には

10%〜▲40%程度が減価率の幅ではないでしょうか。

持分割合を乗じた価格から、さらに14割引するイメージです。

 

もちろん個々の不動産の実態や、

持分割合によっても異なってきますので、

ケースバイケースで判断していくことになります。

 

【減価される場合】

 

たしかに共有持分は制約があって売りにくいのですが、

どんな場合でも共有減価が適用されるわけではありません。

 

相続税や贈与税の評価をする場合、

遺産分割の裁判で評価をする場合、

単に内訳価格(按分価格)として求める場合など

共有減価をすることがふさわしくない場合も多々あります。

 

【他の共有者が取得する場合】

 

共有者が他の共有持分を取得する場合は、

完全所有権に復帰することになるため、

第三者が取得するより経済的メリットが大きい場合があります。

 

AB共有の土地について、

AさんがBさんの持分を取得すれば

Aさんの単独所有になります。

 

しかし、CさんがBさんの持分を買っても

AC共有の土地になるだけです。

 

この場合、AさんはCさんより高い価格で

B持分を買っても経済合理性が成り立つことになります。

 

【共有持分を買い取る悪質業者に注意】

 

相続で共有になった不動産、

共有者の1人はお金に困っているとします。

 

共有持分はなかなか売れませんが、

世の中にはそれを買い取ってくれる業者がいます。

 

悪質な業者であれば、当該共有持分を安く取得し、

他の共有者に高く売りつけたりすることもあります。

 

安易に法定相続分で共有にしたりすると、

後々問題が起こることもありますので、十分お気を付けください。


2021/01/27

1/26に国税庁から新型コロナの影響による

路線価の減額補正が発表されました。

 

大阪市中央区の3地点については

79月の地価変動補正率が「0.96となり、

路線価×0.96×面積=価格となります。

 

<減額補正3地点>

・心斎橋筋2丁目

・宗右衛門町

・道頓堀1丁目

 

日経新聞では「景気変動では初」と掲載され、

1955年の制度開始以来、大規模災害時を除き初めて」

コロナ禍によるインバウンド激減の影響が

いかに大きいかを物語っています。

 

【実務での対応】

 

相続は時点を選ぶことはできませんが、

売買や贈与を検討されている際には、

いつの時点で契約するか慎重にご検討ください。

 

また、減額補正の対象地域でなくても、

個別物件の状況(テナント入居状況等)によっては

価格が大きく変わることもあります。

 

単純に「減額補正の地域かどうか」だけで

一律に決めてしまうと、

適正な価格での譲渡ができていないかもしれません。

 

【路線価の減額補正】

 

国税庁ホームページによると、

「令和2年分の路線価等に係る地価変動補正率は、

路線価等が時価を上回る状況が確認された地域について、

路線価等を補正するために用います。」

 

路線価は時価の80となっていますので、

令和211日時点から

時価が20%を超えて下落した地域について

減額補正が行われることになります。

 

■令和21月〜6

基準地価の発表では、最大の下落率として

ミナミ戎橋付近で半年間▲18.8となりましたが、

20%を超えてはいないため、

減額補正はありませんでした。

 

■令和27月〜9

今回の減額補正です。

大阪市中央区の3地点のみ「0.96」となり、

令和211日時点から

時価が▲24%下落した地域ということになります。

 

■令和210月〜12

国税庁からは、以下の地域についても、

今後減額補正の可能性があるとのことです。

 

いずれも都市部の商業地であり、

住宅地が概ね横ばい傾向にあることと比較すると、

用途や地域によってコロナ禍の影響の程度が

大きく違うことがわかります。

 

<減額補正の可能性あり>

・名古屋市中区 錦3丁目

・大阪市中央区 千日前12丁目

        道頓堀2丁目

        難波13丁目

        難波千日前

        日本橋12丁目

        南船場3丁目


2020/12/18

100ブログ達成】

 

6/1からブログをはじめて、

2日に1回のペースで無事に100回目

なんとか途切れず続けることができました。

 

これもブログを読んでくださったり、

応援してくださったみなさんのおかげです。

本当にありがとうございます!!

 

自分だけだったら絶対に続かなかったです。

ブログを書くと宣言をして、

みなさんに見守って頂いたからこそ。

 

なんでも宣言してみるものだなと思いました()

 

【ふり返って】

 

周りで100ブログチャレンジをはじめる方が多く、

コロナ禍で夜の飲み会も減ったので、

これを機会にブログ発信してみようと

思ったことがきっかけです。

 

鑑定評価という、ただでさえニッチな分野

100回もブログネタあるんだろうか?

 

最初は10個以上ネタがすぐ思いついたのですが、

4060回くらいの時は、

このままではネタが尽きるのでは??

とドキドキした時期もありました。

 

とはいえ、100回を達成して、

今ではまだブログネタの余力がある。

不思議な感じです。

 

【自分自身の変化】

 

ブログを書くということは、

研修講師などと同じように、

当たり前のことでも

「本当にそうだったか?」

改めて見直し&考え直す機会になりました。

 

ブログネタ確保のために

情報アンテナも以前より敏感になり、

興味の範囲が増えました。

 

弁護士・会計士・税理士さんはもちろん、

司法書士さんや調査士さんetc.

なにより同業の鑑定士さんからも

様々なご相談やご連絡を頂けたことが

とてもうれしかったです。

 

特に、尊敬する先生からだと喜びもひとしお。

ブログを書く励みになりました。

 

【今後について】

 

これまでの2日に1回のペースではなく、

週に1回程度ブログを続けていこうと思います。

 

なんでも継続することは大切ですし、

100ブログチャレンジも

ブログを習慣付けるためのきっかけだったと思うので。

 

日々の業務で気が付いたこと、

興味深い時事ネタ鑑定士として考えること

引き続き温かく見守って頂けるとうれしいです。

 

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


2020/12/15

6/1から始めた100回ブログ、

いよいよ100回目を迎えることができました。

 

これまでのブログを通じて、

不動産鑑定士を少しでも身近に感じて頂くことが

できましたら幸いです。

 

アップしたテーマ毎に振り返ってみたいと思います。

 

【時事ネタ・トピックス】

 

時事ネタ・トピックスでは、

地価動向や公的評価について取り上げました。

 

特に、今年は新型コロナウイルスの影響で

地価動向が大きく変わった1でした。

 

3月に公示地価7月に相続税路線価9月に基準地価

新聞の1面に載る公的評価についてご紹介させて頂きました。

 

その他にも、四半期毎の地価LOOKレポートや、

固定資産税に関するニュースなども取り上げました。

 

【士業の先生方との連携】

 

弁護士さんは、相手方との交渉や裁判上の評価に。

会計士さんは、MAをはじめとする会計上の評価に。

税理士さんは、相続税だけではなく、関与先へのコンサルに。

 

どんな場合に、どのように頼んでよいかわからないと

お伺いすることが多かったので、取り上げてみました。

 

ご相談頂く際にお願いしたい資料、

どんな場合に鑑定評価がお役に立つか、

どのように鑑定評価を行っているか、

鑑定評価によってどのようなメリットがあるか 等。

 

少しは具体的なイメージを持って頂けたでしょうか。

 

士業特化が当事務所の特徴です。

士業の先生方を通じて社会のニーズに応え、

これまでの業務はもちろんのこと、

もっと新しいニーズを掘り起こしていきたいです。

 

【鑑定評価の実務】

 

どのような理論で、どのような資料に基づいて、

どのように評価をしているのか。

 

鑑定士が何を見て、

どう考えているかを取り上げてみました。

 

評価の過程をご紹介することによって

価格についての相互理解が深まると、

より一層緊密な連携ができると考えます。

 

また、鑑定の見るべきポイントがわかれば、

業務の中で出てくる鑑定士の書類も

少しは見やすくなるのではないでしょうか。

 

【ちょい聞きチャンス】

 

相談したいけど、相談料が心配。

頼みたいけど、鑑定メリットがあるか不安。

 

そのような不安をなくして頂くため、

こんな時にちょい聞きサービスを受けていますと

実例を交えて取り上げてみました。

 

「こんなしょーもないこと…」と思わず、

便利にちょい聞きサービスをご活用頂いて、

先生方のお役に立てることがなによりうれしいです。


2020/12/14

12/11の日経新聞の記事

「固定資産税、地価上昇でも負担増回避

コロナ禍に配慮」についてです。

 

「商業地や住宅地など全ての土地を対象に、

2021年度に限って固定資産税の負担増を

回避する特例措置を講じる。」

 

「地価の上昇で税額が増える場合は

20年度と同じ税額に据え置き

地価が下落し税額が減少するなら

そのまま少ない税額を適用する。」

 

「新型コロナウイルスの感染拡大による

影響を配慮し、企業や家計の負担増を避ける。」

とのことです。

 

【固定資産税の評価替え】

 

固定資産税は3年に1度評価の見直しを行います。

地価上昇(税額アップ)の影響は3年に1度のみ。

地価下落(税額ダウン)は毎年反映されます。

 

来年度(令和3年度)がちょうど評価替えの年で、

コロナ禍で厳しい中での税額アップが見込まれていました。

 

【令和3年度税制改正大綱】

 

与党税制調査会の令和3年度税制改正大綱によると、

令和3年限りの措置」として、

「宅地等及び農地については、

令和3年度の課税標準額を

令和2年度の課税標準額と同額とする

とされています。

 

措置が延長されない限り、

3年に1度の評価替え(税額アップ)が

1年先延ばしにされたということになります。

 

さらに、R2.7.1R3.7.1の間で

地価下落があった場合は、

R3年度の税額据え置き分だけではなく、

R4年度の税額アップも少なくて済むことになります。

 

特に、インバウンドの影響が大きかった

都心部の商業地や外国人に人気の観光地等では、

据え置きの効果が非常に大きいと考えられます。

 

【鑑定士としての感想】

 

「課税標準額」を据え置くとされていますので、

「固定資産評価額」は評価替えを反映した上で、

課税標準額を同額とするのかなと思います。

 

固定資産評価額は、遺産分割・相続税評価・

株価算定・M&A・登録免許税など

様々な分野で大きな影響があります。

 

詳細はこれから見ていく必要がありますが、

その評価額がどのような前提(いつ時点)

算定されているか、しっかり確認する必要があります。

 

また、R2課税標準額に据え置くとされていますが、

これまで田んぼだったところに新しく造成された住宅団地や

再開発等で複数の土地が1つになった新築マンションなど、

直近にできたばかりで適正なR2課税標準額が無い場合

どのようにしていくのか興味があります。


そういえば、都市計画税はどうなるんでしょうね。

 

【据え置きの影響】

 

日経新聞によると、

21年度の固定資産税は

数百億円規模の減収になると見込まれる。」

となっています。

 

仮に減収を500億円とすると、税率1.4%ですので、

全国で約3.6兆円(直近3年間・課税標準額ベース)

も地価が上昇した計算になるのでしょうか。


2020/12/12

不動産投資をする時や、

賃料(収益性)から不動産価格を求める際に

重要になってくるのが「利回り」です。

 

利回りにも色々な種類がありますので、

それぞれに合った利回りを使う必要があります。

 

投資としては、高利回りは魅力的ですが、

その利回りがどのような前提で求められているか

しっかり見ていくことが大切です。

 

【表面利回り(グロス)】

 

年間収入合計を物件価格で割った数字です。

不動産広告などでは、一般的に

この表面利回りが使われることが多いです。

 

年間賃料 ÷ 物件価格 表面利回り

100万円 ÷ 1,000万円  10

 

必要諸経費(管理費・修繕費・公租公課等)が

考慮されていませんが、概ねの感覚をつかむ時に

非常に使いやすい利回りです。

 

さらに、不動産広告では「満室想定利回り」もあり、

全室満室だった場合の賃料から求めることもあります。

(表面利回りも、満室想定の場合が多いです。)

 

空室による賃料減は考慮されていませんので、

実際の空室率、今後の空室見込みには

十分注意する必要があります。

 

【実質利回り(ネット)】

 

年間収入から必要諸経費(管理費・修繕費・公租公課等)を

引いた純利益を物件価格で割った数字です。

 

実際の“実入り額”をベースにしているため、

こちらのほうが投資の際には有用かもしれません。

 

賃料が少し高くても、管理費や修繕費などで

多額の費用がかかっていたら仕方ないですもんね。

 

(年間賃料 諸経費)÷ 物件価格 実質利回り

100万円 30万円)÷ 1,000万円  7

 

同じ物件でも、グロスかネットで

簡単にこれだけ利回りが変わってきます。

 

なお、減価償却費は、この必要諸経費に

算入しないことが一般的です。

(減価償却費の計上の有無でも利回りは変わります。)

 

NOI利回り・NCF利回り】

 

不動産鑑定評価においてよく使われるのは、

この2つの利回りです。

 

NOI利回り

Net Operating Incomeの略で、

年間賃料から、実際に発生した諸経費のみを控除して求めます。

減価償却費、支払利息、資本的支出は控除しません。

上記の実質利回りとほぼ同じ内容です。

 

NCF利回り

Net Cash Flowの略で、

上記のNOIから資本的支出を控除したものです。

 

【近畿圏の利回り】

 

一般財団法人日本不動産研究所の

「不動産投資家調査(202010月現在)」によると、

以下のとおりとなっています。

(以下はNOI利回りです。)

 

■賃貸住宅

    ワンルーム ファミリー向け

京 都  5.2%    5.3

大 阪  4.8%    5.0

神 戸  5.2%    5.3

 

■商業店舗

     都心型    郊外型

京 都  5.0%    6.0

大 阪  4.5%    5.8

神 戸  5.2%    6.1

 

■宿泊特化型ホテル

京 都  5.0

大 阪  5.0

 

一般的に、取引価格に比べて賃料は変動にしくいので、

景気が悪くなる 取引価格下落 利回り上昇。

景気が良くなる 取引価格上昇 利回り下落。

という流れになります。


2020/12/10

鑑定評価は、市場代行機能とも言われます。

 

市場に成り代わって、

市場において成立するであろう価格を

鑑定評価によって導き出すからです。

 

とすると、市場には

どのような参加者がいて、

どんなことを考えて行動しているのか。

メカニズムを分析する必要があります。

 

鑑定評価にあたって、欠かせない分析の1つです。

 

【市場分析】

 

以下の内容を分析することによって、

市場の特性を分析・把握していくことになります。

 

■市場参加者の属性

法人or個人、業種・業態、年齢・家族構成・所得水準など。

 

■市場参加者の行動

取引の意思決定する際に何を重視するか。

居住の快適性、利便性、地域性、立地条件、取引条件など。

 

■重視する価格形成要因

取引価格(坪単価)、収益性、投資採算性など。

 

■市場の需給動向

評価の対象となる不動産と類似する不動産の需給動向。

需要が多いor供給が多い、取引が多いor少ない等。

 

これを具体的にあてはめると、

以下のようなイメージになります。

 

【戸建住宅】

 

■市場参加者の属性:居住目的の個人

■市場参加者の行動:居住の快適性、生活利便性を求める

■重視する価格形成要因:取引価格(坪単価)を重視

 

→鑑定評価:取引事例比較法による比準価格を重視

 

【テナントビル】

 

■市場参加者の属性:投資目的の法人・個人

■市場参加者の行動:安定的継続的な収益(利回り)を求める

■重視する価格形成要因:収益性を重視

 

→鑑定評価:収益還元法による収益価格を重視

 

【分譲マンション】

 

■市場参加者の属性:不動産業者(デベロッパー)

■市場参加者の行動:適正な開発利潤を求める

■重視する価格形成要因:投資採算性を重視

 

→鑑定評価:一体利用を前提とした開発法による価格を重視

 

【まとめ】

 

市場分析を行うことで、

どのような価格を重視すればよいかがわかります。

 

たとえば、相続税申告のための評価において、

なんとか価格を下げたい一心で、

戸建住宅なのに収益価格を重視して価格を下げたりすると、

市場分析とは全く異なることになり、

認めてもらえない結果になることは明らかです。

 

その不動産を求める需要者は誰なのか

しっかり把握することが大切です。

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