士業専用ダイヤル
前回の業務フローその2(現地調査)に続き、
業務フロー最終回その3では行政調査についてお話します。
行政調査は最初の登竜門
行政調査は、担当者への聞き方ひとつで
「〇が×」にも、「×が〇」にも変わってしまいます。
新人の頃、最も苦労した調査で、
師匠に最も叱られた調査でもあります。
たとえば、その土地に建物を建築できるかどうかで
価格は倍半分くらいあっという間に変わってしまいます。
市街化調整区域は、“原則として”
建物を建てることができません。
しかし、“例外的に”許可を受ければ建築可能です。
この場合、正面から「調区で建築できますか」と聞くと、
原則通り「建築できません」と回答があります。
しかし、「調区ですが、どんな場合に建築できますか?」と聞くと、
「このような場合に建築できます」と回答があります。
一般的に「原則」と「例外」だと、
例外の範囲のほうが狭いことが多いですが、
思いのほか例外の範囲のほうが広いこともあります。
周囲に戸建住宅しかないエリアで、
「戸建住宅だけは建築可能」となった場合、
市街化調整区域の建築規制の影響はほとんどなくなります。
こんな時に、建築不可だから半値だ!
という評価をすると大ヤケドをすることになってしまいます。
行政調査の内容
都市計画、用途地域、市町村道かどうか、認定幅員、
建築基準法の道路かどうか、建築確認・完了検査の有無、
開発許可の可否、上下水道ガスの引込の有無、
周知の埋蔵文化財包蔵地に含まれるかどうか、
土壌汚染対策法・水質汚濁防止法の指定の有無 等々
特に、評価の前提条件について異論がある場合は、
その事項について徹底的に調査を行います。
たとえば、相続税評価において
農地山林の転用見込みの有無についてであれば、
開発許可の具体的内容まで突っ込んで担当部署で話を聞きます。
市町村合併の悲哀
市町村合併により、複数の庁舎に担当課が分かれている場合、
たった1つの項目を調べるためだけに車で20〜30分かかるなど、
予想外の時間がかかる場合があります。
特に、上下水道担当課は別庁舎になっている場合が多く、
その次に都市計画や開発担当部署が別庁舎の可能性が高いです。
すぐ隣の建物だったらラッキーなのですが、
「○○支所(旧○○町役場)です」とあっさり言われることも。
また、特定行政庁といって、建築主事を置き、
その市町村内で全ての建築基準法関係の業務を
行っている場合はいいのですが、
受付だけは当該市町村で、判断は都道府県の場合も多いです。
この場合、都道府県の出先機関(管轄土木事務所)へ
建築基準法関係の調査に別途赴く必要があります。
さらに、規模が大きな建物の建築確認だと、
管轄土木事務所でもなく、「それは本庁!」と言われて
またまた別の場所に行く必要があったりもします。
いかに事前の準備が大切か、
時間が限られている出張ではより一層実感します。
鑑定評価書の内容
鑑定評価書にはさらっと1行で書いていることも、
実際は様々な調査に基づいて記載しています。
鑑定士はしっかりいろんなことを調べて、
ちゃんと評価しているのだなと思って頂けたら幸いです。
前回の業務フローその1(事前準備)に続き、
その2では現地調査についてお話します。
いろんな場所に行けることが
鑑定士の仕事の魅力の1つだと思います。
私は、近畿圏は交通費無料としているほか、
出張も大好きで、「出張に行けることが報酬です!」と
いつも言っています。
今はコロナの影響で出張に行きにくくなっていますが、
またいろんなところに行ってみたいです。
特に、ご飯がおいしいところが一番うれしいです(笑)
現地調査 〜やっぱり現場は大切!〜
評価する不動産を実際に見に行きます。
地図や航空写真などではわかりにくい
現地の雰囲気を体感できるかは大きな違いです。
対象となる物件の周りをウロウロするので、
近隣の方に不審がられて声を掛けられてしまったり、
犬に吠えられたりするのも
鑑定士の宿命なのかもしれません。
スーツより作業着のほうがうまく溶け込めて、
車の色もブラックよりホワイトのほうが悪目立ちしません。
土 地
メジャー、コロコロ、ピッキョリ、歩測など
様々なツールを使って調査を行います。
もちろんカメラでしっかり写真も撮影します。
調べる内容としては、
前面道路の幅員は何mか。
道路との方位や角地かどうかなどの接道関係。
間口2m以上あるかどうか。
境界はどうなっているか。
形状・高低差・がけ地等があるかどうか。
地上の建物や構築物の配置状況 等々
また、地面(地表面)だけを見るのではなく、
上空を見上げて高圧線が通ってないかどうか、
給油タンクなど地下がどうなっているか。
土壌汚染の可能性についてもチェックを行います。
特に、道路との関係は重要で、
一定の幅員がないとそもそも開発できなかったり、
間口が2m以上なければ接道義務を満たさなかったり、
不動産の価格に大きな影響を与えます。
建 物
登記記録との異同について確認します。
登記建物が現存するか。
未登記増築部分や未登記建物がないか。
建物用途、維持管理の状態、雨漏り、クラック、
大規模修繕や耐震補強の有無などを調査します。
評価の大切な前提となります
現況確認は、何色が好きかという価値判断ではなく、
今日の天気は晴れだったか雨だったかという事実の確認と同様です。
事実確認の間違いは、評価の間違いに直結するので、
しっかり入念にチェックする必要があります。
次回はその3(行政調査)
その3は行政調査です。
都道府県庁・市役所・町役場・土木事務所など。
新人の頃、最も苦労したのが行政調査です。
鑑定評価の業務フロー
鑑定の仕事ってどんなことやってるの?
依頼者に言われた価格を適当にエイヤ!って出しているだけ?
それとも、何か緻密な計算やってるの?
よくお伺いするご質問ですので、
実際の流れについてお伝えしたいと思います。
法務局調査
ご依頼を頂いて、最初にすることは
「登記情報提供サービス」で
登記記録、公図、地積測量図、建物図面を取得することです。
ご依頼者から資料として頂いたとしても、
念のためこちらでも最新の情報を確認します。
共同担保目録付きで取得し、
所有権のほか賃借権、地上権、地役権等を確認します。
分筆・合筆されて面積が変わっていたり、
お伺いしていた以外の建物が土地上にあったり、
改めて確認すると様々な発見があります。
基本的な事項だけに、意見の相違とは言えず、
完全なミス=ごめんなさいしか言えなくなるので
最も注意深く確認したい事項です。
ネット謄本ができる前は、
現地調査の際に管轄法務局まで行く必要があり、
法務局の場所から調べたり、大変だった記憶があります。
そう思うと今は全国どこでも取れるので非常にありがたいです。
物件概要の下調べ
広域地図、住宅地図、相続税路線価、全国地価マップ、
公示・基準地価マップ、地番図、用途地域図、
土砂災害等のハザードマップ、航空写真、
ストリートビュー等で事前調査を行います。
その上で、ざっくりと第一弾の概算価格を試算します。
まずは価格が100万円なのか、1,000万円なのか、1億円なのか、
目安だけでも知りたいというご要望にお応えしています。
さらに、周辺の売り希望価格やテナント情報についても、
ネットに公開されている情報をまとめます。
そして、これらが全てセットになったPDF資料一式を
無料の“ちょい聞きサービス”でご提供しています。
「こんなスゴイ資料をすぐに頂けるなんて!」
と言って頂けることが、私にとっての励みです。
この下調べの中で、現地調査や行政調査での
チェックポイントを抽出することが大切です。
市街化調整区域だと建築規制はどうなっているか。
前面道路の建築基準法上の取り扱いはどうなっているのか。
法面やがけ地、擁壁や高低差はどうなっているのか。
建築確認や耐震性能はどうなっているのか。等々
続きはその2で
ここまでの準備をして、
ようやく現地調査と行政調査に赴きます。
どんなことでも同じですが、
事前の段取りや準備で全てが変わってきます。
「段取り八分」とはまさにその通りだなと感じます。
士業の先生の不動産評価に関するご相談、お待ちしています
などなどお気軽に「ちょい聞き」してください!
TEL:077-596-5753(電話受付:平日 9:00〜17:00)
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