「どの建物価格が正しいのでしょうか?」
というご質問をよく頂きます。
期末簿価、鑑定評価額、固定資産評価額etc.
どれもちゃんとした根拠に基づいているのに、
価格が異なっていることが多いです。
【評価実例】
実際の評価実例に基づいて見てみましょう。
築約30年の鉄骨造工場・倉庫です。
■期末帳簿価格 70,000,000円
■鑑定評価額 65,000,000円
■固定資産評価額 200,000,000円
期末簿価と鑑定評価額は概ね近似していますが、
固定資産評価額は倍以上の差があります。
どの価格を建物価格として採用するかによって、
影響はかなり大きく違ってきます。
【期末簿価】
固定資産台帳における
「建物」及び「建物付属設備」が該当します。
取得価格は実際の建築費でした。
その後の修繕費等も適切に計上され、
減価償却も適切になされています。
経年減価のみで、目視等により確認できる
偶発的な損傷や劣化等は考慮されていないものの、
なんといっても「実額」ですので説得力は大きいです。
【鑑定評価額】
不動産鑑定評価基準に則って、
建物を躯体・仕上・設備に区分し、
再調達原価や経済的残存耐用年数も適切です。
期末簿価より低くなったのは、
経年減価以外の物理的・機能的・経済的減価を
考慮したためです。
【固定資産評価額】
固定資産評価基準に則り、
再建築費(価格)を基準として評価する方法
(再建築価格方式)を採用して適切に評価されています。
ただ、建物を躯体・設備に分けず、
設備も躯体と同じ耐用年数となり、
どれだけ築年を経ても残価率20%です。
さらに、3年に1度しか価格の見直しを行わず、
前年度の評価額に据え置かれる措置(※)もあります。
この場合、経年劣化しているはずなのに、
価格がずっと変わらないこともあります。
【建物価格の比較】
このようにそれぞれの根拠に基づき
適切に評価されている“正しい価格”であるものの、
建物価格は大きく異なることがあります。
評価実例では固定資産評価額が
期末簿価や鑑定評価額より高くなっていますが、
新築から概ね10〜15年程度までは
固定資産評価額のほうが低くなっている場合が多いです。
売買・相続・裁判・株価評価等、
いずれの場面でどの価格を建物価格として採用するか。
しっかり見極めていくことが重要だと考えます。
※【前年度の評価額に据え置かれる措置】※
新基準年度の評価額と前年度の評価額とを比較し、
新基準年度の評価額が前年度の評価額を下回る場合は、
新基準年度の評価額として算定された額が
それ以降の課税年度の評価額となります。
しかし、新基準年度の評価額が前年度の評価額を上回る場合は、
前年度の評価額に据え置かれる措置が採られています。
また、家屋の評価替えは、
「建築物価の変動(再建築費評点補正率)」と
「家屋の建築後の経過年数に応じた減価(経年減点補正率)」
を考慮して全国一律に3年に一度行い、
経年減点補正率は、構造及び用途等の区分に応じて、
下限(最終残価率)が2割として設定されています。