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  1. 士業に役立つ不動産評価まめ知識
 

士業に役立つ不動産評価まめ知識

2020/11/18

私道(わたくしみち)の評価について、

「道路だから価値ゼロでいいですか?」

というご質問を頂くことも多いです。

 

もちろん価値ゼロの場合も多いですが、

必ずしも価値ゼロとならない場合もありますので、

順番に見ていきましょう。

 

【私道とは】

 

民間(法人・個人)が所有し、管理する道路で、

国・都道府県・市区町村が法律に基づいて築造管理する

公共性ある道路(公道)以外の道です。

 

私道は、以下の3つに分けられます。

 

■準公道的私道

一般に公衆の用に供されているが、

私人の所有に属し、

多くは行政庁に管理されているもの。

(開発道路や位置指定道路など)

 

■共用的私道

私道に接面する複数の画地所有者によって

共同利用されているもの。

 

■専用私道

特定の一画地のみの私道で、

私道所有者と画地所有者が同じであるもの。

 

【財産評価基本通達における評価】

 

私道の用に供されている宅地の評価として、

宅地価格の30/100で評価するとされています。

 

不特定多数の者の通行の用に供されている場合は、

「その私道の価額は評価しない」として

価値ゼロとなります。

 

【固定資産評価】

 

「公衆用道路」に認定されると、

非課税として取り扱われます。

 

必ずしも登記地目が「公衆用道路」である必要は無く、

現に不特定多数の者の通行の用に供されていて、

アスファルト舗装されているなど、

道路としての形状を有している場合等は、

地目「宅地」であっても、申請により

公衆用道路として認定してもらえる場合があります。

 

【鑑定評価】

 

私道の位置、所有形態、

建築基準法上の道路かどうか、

課税の有無、道路管理者が誰か、

上下水ガス管の埋設の有無、

将来的な宅地転化の可能性などを

総合的に判断することになります。

 

「土地価格比準表」(七次改訂・地価調査研究会編著)では、

標準住宅地域の私道減価として

以下のとおり記載されています。

 

準公道的私道 80%以上

共用私道   50%〜▲80

専用私道   減価の記載なし

 

上記はあくまでも標準的な参考値であり、

その私道の実態に応じて

適切な減価率を求めていく必要があります。

 

但し、現実的に市場において取引の対象となるかと言えば

なかなか難しいのも実情ではないでしょうか。


2020/11/16

昭和40年代や昭和50年代に取得した

昔の山林の価格がわからなくて困っている

このようなご質問も頂きます。

 

宅地であれば、(一社)日本不動産研究所の

「市街地価格指数」を活用されることも

多いのではないでしょうか。

 

ここでは2つの指標をご紹介したいと思います。

 

【山林素地及び山元立木価格調】

 

市街地価格指数と同じ

(一社)日本不動産研究所が出している

「山林素地及び山元立木価格調」です。

 

全国の市町村約1,000を選定し、

山林素地価格は当該市町村の山林を立地条件等によって

「上の中・普通・下の中」の品等に区分した

用材林地(針葉樹林地)・薪炭林地(広葉樹林地)別、

山元立木価格は杉・桧・松・薪炭材別の

3月末現在の価格について、

市町村役場又は森林組合等に調査票を送付

回答を得る方法をとっています。」

 

全国官報販売協同組合のホームページで

注文することができます。

また、Web会員になれば、

調査結果概要を見ることもできます。

 

市街地価格指数を使い慣れている方にとっては、

なじみやすい指標かもしれません。

 

【基準地価(林地価格)】

 

<土地総合情報システム>

https://www.land.mlit.go.jp/webland/

 

こちらのサイトから、

「地価公示・都道府県地価調査」→

検索地域指定で「都道府県単位で検索」にチェック→

調査年で希望の年を指定、

用途区分で「林地(都道府県地価調査のみ)」をクリック。

 

基準地が設定された時期により、

ご希望される年の価格が無いこともありますが、

個別具体的な価格が出てきますので、

より地域を絞った価格を求めることができます。

 

【山林の価格動向】

 

「山林素地及び山元立木価格調」によると、

林地価格は、用材林・薪炭林ともに、

1992年(平成4年)から一貫して下落傾向です。

 

・木材価格が下落した

・買い手が無い

・林業経営の先行き不安

・林業後継者の減少

・高齢化

などが、主な下落要因とのことです。

 

【山林の種類に注意】

 

不動産鑑定評価では、

都市近郊林地、農村林地、林業本場林地、山村奥地林地等に

細分化されて認識されます。

 

また、市街地介在山林など、

宅地地域の中に位置する山林もありますし、

公簿地目だけ「山林」となっていて、

現況は宅地となっている土地もあったりします。

 

価格が知りたい山林がどのような山林か

しっかり見極めた上で価格動向を調べてください。

わかりにくい場合は、もちろん“ちょい聞き”で!


2020/11/14

借地権の評価は、鑑定評価、税務上、裁判上で

それぞれ考え方が異なる部分があります。

 

どれも正しいのに、評価に差が出てしまう。

非常に悩ましいのが実情です。

 

【具体例】


税務では、相当地代なので、借地権価格ゼロ。

 

裁判では、相当地代であっても、

権利が存在し、その場所を占有できるため、

更地価格の20%〜30%程度の価値。

 

鑑定では、不動産鑑定評価基準に基づき、

賃料差額還元法はゼロとなりますが、

割合法を併用するため1040%程度の価値。

 

このようなイメージです。

三者三様の考え方に基づいていて、

どれも正しいのに0%〜40%もの差が出てしまいます。


更地価格が高ければ高いほど、
価格にした時の差は非常に大きいです。

 

【鑑定評価】

 

・賃料差額還元法

・割合法

・取引事例比較法

・収益還元法(土地残余法)

・更地価格−底地価格

 

借地権の取引慣行の成熟の程度の高低に応じて、

上記の手法を併用して評価します。

 

実務上は、賃料差額還元法割合法

最も使われているのかなと感じます。

 

賃料差額還元法は、相当地代を払っている場合は

借地権価格ゼロとなりますが、

路線価の借地権割合を使った割合法も併用するため、

借地権価格ゼロとなることはあまりありません。

 

そして、鑑定の勉強で必ず出てくる点にも注意が必要です。

・借地権+底地=更地 とは必ずしもならない。

・借地権が存在しても、価格が認められない場合もある。

 

【税務上の評価】

 

路線価の借地権割合が基本となりますが、

相当地代の場合は借地権価格ゼロとなります。

 

また、無償返還届の有無による違い、

当初の権利金が借地権として帳簿に計上されている、

駐車場はアスファルト舗装部分の価格計上の要否etc.

税務だからこそ検討すべき事項が出てきます。

 

特に、無償返還届の有無や

当初の設定権利金が割安であった場合等は、

評価の違いが大きくなってきます。

 

【裁判上の評価】

 

使用貸借権であっても

10%程度の価値を認められることが多いため、

借地権であれば、相当地代だからといって

価格ゼロになるとは考え難いです。

 

権利が存在し、その場所を占有できる。

使用貸借権よりも権利として強い。

とすると、少なくとも20%以上の価値は出てきそうです。

 

【実務での評価方針】

 

ご相談頂く際に、どのような依頼目的

しっかりお伺いさせて頂くことにしています。

 

仮に、いくら税務で正しくても、

不動産鑑定評価基準での問題になると

正しくないと言われるかもしれませんし、

その逆もまたしかりです。

 

鑑定、税務、裁判上の評価など

どのような依頼目的で、

どのような借地権を評価するのか。

どのフィールドでの評価なのか。

 

借地権価格がこれだけ変動するのですから、

底地価格も大きく変わってくるのは

言うまでもありません。


2020/11/12

11/10の日経新聞に

「関経連、21年度予算でコロナ対策を要望」

という記事が掲載されていました。

 

その中で、固定資産税についての記載がありましたので、

内容を見ていきたいと思います。

 

【関経連の意見】

 

「新しい経済・社会を見据えた税財政に関する意見

〜コロナ感染拡大防止と経済活動の両立、

その先の未来に向けて〜」として、

11/10に公益社団法人関西経済連合会が

プレスリリースを出しました。

 

この中のⅢ.1.(1)a)固定資産税・都市計画税で

2021年度は固定資産税の評価替えの年にあたり、

202011日の公示地価をもとに

今後3年間の固定資産税・都市計画税が算出される。

 

基準時期が新型コロナウイルスの感染が拡大する前であり、

商業地をはじめコロナ禍を経た評価額変動は大きいと考えられる。

そのため、評価替えによって税負担額が増加する場合においては、

例えば 2017年時点の評価額に据え置くなど、

評価額の適正化を図るべきである。」

 

【総務省の対応】

 

総税評第57号(令和20930日)

「令和3年度固定資産の評価替えに関する

留意事項について(追加)」が出ています。

 

「土地の評価替えの実施に当たっては、

新型コロナウイルス感染症による影響その他の要因により

地価動向が変化している場合には、

各市町村の区域内の地価動向を的確に把握し、

改正予定の固定資産評価基準に基づく下落修正を行うなど、

適正な評価事務の執行に努めてください。」

 

そして、上記改正予定の固定資産評価基準では、

基準地価の動向、不動産鑑定士の鑑定評価等を活用し、

R2.1.1R2.7.1の下落状況を把握するとしています。

 

【実務への影響】

 

これまでも固定資産税の評価替えの際には、

価格調査基準日である1/1時点価格を

そのまま採用するのではなく、

1/17/1までの価格変動(下落修正分)を把握し、

適切に下落修正を反映しています。

 

不動産鑑定士も「標準宅地の時点修正業務」として

毎年市町村と契約を結んで地価動向を報告しています。

 

そのため、今回もコロナ禍の影響が無い

R2.1.1時点のまま評価替えされた額が出るのではなく、

R2.1.1R2.7.1までのコロナ禍の影響が織り込まれた

新しい評価額が出ることになります。

 

とはいえ、特に市街地中心部など、これまでの

3年分の地価上昇のほうが大きい地域も多いため、

結果として評価額=税額上昇となる地域が増えそうです。

5%+5%+5%−5%=10%上昇というイメージ)

 

なお、R2.7.1R3.7.1の地価動向(下落修正)は

令和4年度の評価額で反映されることになりますので、

来年の令和3年度の評価額に対するコロナ禍による影響は

R2.1.1R2.7.1までの分ということになります。

 

現在の2017年度評価額のまま据え置くのか、

動向を注視していきたいです。


2020/11/08

【一物五価】

 

土地の価格は、同じ場所、同じ面積、同じ条件であっても、

必ずしも同じ価格になるとは限りません。

 

土地の価格には「一物五価」といって、5つの価格があります。

公示地価、基準地価、相続税路線価、固定資産評価額、実勢価格です。

 

このうち、実勢価格以外の価格は、

不動産鑑定士が公的土地評価業務として従事しています。

 

不動産鑑定士と聞いても知らない方が多いですが、

実はけっこう身近な存在なんです。

 

【公示地価(地価公示)】

 

地価公示法第2が根拠法令です。

 

国土交通省土地鑑定員会の決定により、

地価公示調査組織規程に基づき、

地価公示に係る鑑定評価員が募集されます。

 

委嘱申請を提出し、要件を満たすと

地価公示の鑑定評価員に委嘱されることができます。

 

応募要件を抜粋すると以下のとおりです。

 

・直近3年間の間に鑑定評価業務に従事し、

 不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価を

 年3件以上行っていること。

 

・各年11日において65歳未満であること。

 

・不動産の鑑定評価に関する法律による懲戒処分、

 国による行政手続法に基づく行政指導、

 (公社)日本不動産鑑定士協会連合会等から懲戒処分

を受けたことが無いこと。

 

その他にも、評価員の業務を適切に実施でき、

幹事就任依頼があった場合に引き受けられること、

地価公示の信頼を損なうおそれがない者等があります。

 

しっかりマジメに仕事してないと委嘱されません。

 

【基準地価(地価調査)】

 

国土利用計画法施行令第9が根拠法令です。

 

公示地価は国から委嘱されますが、

同じように都道府県から委嘱されるのが

地価調査の鑑定評価員です。

 

その年の地価公示の鑑定評価員に

委嘱されている不動産鑑定士であれば、

地価調査の鑑定評価員になれることがほとんどです。

地価公示の場合と同様の要件が必要となります。

 

【相続税路線価】

 

相続税法第22が根拠法令です。

 

「路線価等を定めるための鑑定評価及び

意見価格等の調査等業務」が毎年公募されますので、

希望届出書を提出し、要件を満たすと

鑑定評価員及び土地評価精通者として

委嘱されることができます。

 

地価公示と同じような従事者資格の要件があり、

近畿の場合は大阪国税局に希望届出書を提出します。

 

【固定資産評価】

 

地方税法第341が根拠法令です。

 

3年に一度の評価替業務のほか、

毎年の時点修正業務を行います。

 

市町村が独自に不動産鑑定士を選任しますので、

選任される要件も市町村によって異なります。

 

毎年固定資産税が上がった!下がった!

と話題になりますが、その上昇率や下落率を

判定しているのは不動産鑑定士なんです。

 

【実は身近な鑑定士】

 

公示地価や基準地価は、発表されると

新聞の一面に載るくらい大きなニュースになります。

 

相続税路線価は、相続の時だけではなく、

売買や様々な場面で価格を知るための

身近な情報ではないでしょうか。

 

固定資産税は、毎年納付通知が届きますので、

最も身近なものかもしれません。

 

実は身近な不動産鑑定士

少しでも親近感を持って頂けるとうれしいです。


2020/11/07

【全国対応】

 

「遠方の不動産なのですが、

鑑定をお願いすることはできますか?」

 

ちょい聞き等でご相談頂く際に、

このようなご質問を頂くことがあります。

 

当事務所は「全国対応」ですので、

どこの物件であっても喜んでお受けします。

 

普段は、近畿圏の鑑定ご依頼が多く、

近畿圏であれば交通費も無料でさせて頂いていますが、

日本全国様々なところでの

評価実績がありますので、ご安心ください。

 

【どうして全国対応できるのか?】

 

当事務所に頂くご依頼のほとんどは、

士業の先生からのご紹介です。

 

単に売買実例価格を集めて、

平均値を出すような相場情報提供だけでは

ご依頼目的を達成することができません。

 

相続税評価額、固定資産評価額、

相手が主張する価格などが適正なのかどうか。

また、適正ではないとすれば適正な価格はいくらか。

 

不動産鑑定評価基準に基づき、

説得力ある説明をしていく必要があります。

 

相続税評価額は、財産評価基本通達

固定資産評価額は、固定資産評価基準

相手が主張する価格は、上記のいずれかもしくは

不動産業者の査定、不動産鑑定評価基準に基づく

不動産鑑定士の評価が根拠です。

 

どれも地域性だけで

評価方針に大きな差が付くような基準ではないため、

全国どこの物件でも

基本は同じような目線でチェックが可能です。

(その上で、地域性をさらに考慮します。)

 

土地単価は、実勢価格と整合しているか。

建物価格は、固定資産評価額等が実際の建築費、

帳簿価額、市場価格等と乖離していないか。

収益物件は、適正に収益性が判定されているか etc.

 

見るべき重要ポイントは基本的に同じです。

そのため、全国どこの物件でも対応できるのです。

 

【不動産の地域精通性との関係】

 

不動産は地域性が強く、

地域精通性を重視されることが多いです。

 

その地域のリアルな市場動向をより知っているのは、

やはりその地域の不動産鑑定士だと思います。

 

しかし、もっと言えば、

地域の市場動向だけを知りたいのであれば、

その地域の“実際のプレーヤー”である

不動産業者さんが最もよくご存じかもしれません。

 

それにもかかわらず、

不動産鑑定士にご相談頂いたということは、

市場動向だけではないご依頼目的があるはずです。

 

価格判定が難しい不動産の評価について、

不動産鑑定評価基準に基づいて説得力ある説明ができるのは、

やはり不動産鑑定士が適任だと考えます。

 

当事務所は、その地域の不動産鑑定士等とも連携し、

地域の市場動向をしっかり把握するように努めています。


2020/11/06

11/4の日経新聞に「オフィスビル賃貸料調査」

の結果が掲載されていました。

 

「オフィス賃料に下落圧力」

「業績悪化で解約増」

「在宅勤務 需要減に拍車」

「コロナ禍 ビル事業に打撃」

 

これまで活況を呈していた市況から

一転して調整局面に入りました。

 

【近畿の動向】

 

■京都・四条烏丸

「供給不足から賃料が上昇。

解約の動きもあるが空室率は低水準で、

賃料を下げる動きにつながっていない」

 

■大阪・梅田周辺

「まとまった面積を借りるのは依然困難だが、

小さな空きは出始めた」

 

■大阪・難波駅周辺

「新型コロナウイルスの影響とみられる

複数の大規模な解約があった」

 

■神戸・三宮周辺

「来年竣工の新築ビルは高稼働で開業見通し。
既存ビルもまとまった空室は少ない」


【空室率】

 

空室率が増加すると、賃料は下落する傾向にあります。

賃料が下落すると、不動産価格は下落します。

 

仮に月100万円の賃料が入る物件で試算してみます。


空室率0%だと 年1,200万円÷5.0%=2.40億円 ですが、

空室率5%だと 年1,200万円×95%÷5.0%=2.28億円


わずか5%の空室でも、価格に1,200万円の差が出ました。

 

空室率が上昇し、全体的な賃料が下がったり、

取引利回りが上昇すれば、

さらに価格が下がることになります。

 

【賃貸オフィスビル経営への影響】

 

新型コロナウイルスのまん延が

賃貸オフィスビル経営にどのような影響を

及ぼしているかという調査では、

 

賃料減額の申し入れ 45

テナント退去    26

賃料の支払い猶予  24

賃料滞納      15

 

という大きな影響があったことが伺えます。

 

上記の例で、仮に賃料が30%下がったとすると、

100万円から▲30%ですから月70万円(年840万円)。

 

下落前 年1,200万円÷5.0%=2.40億円 ですが、

下落後 年 840万円÷5.0%=1.68億円


賃料が30%下がると、価格では7,200万円もの差になりました。

 

ここにテナント退去や空室率の上昇、

全体的な市場の様子見などが入ってくると、

さらに大きな差になることも考えられます。

 

【まとめ】

 

このように、路線価や基準地価などで

エリアとしては土地価格が下がっていない地域であっても、

賃料への影響如何では物件価格が大きく変わります。

 

現在考えているスキームの物件価格は適正か、

価格が下落している今だからこそ実行できるスキームは無いのか。

物件毎にしっかり考えていく必要がありそうです。


2020/11/04

前回の土地のみ(更地)の場合に続き、

担保評価・土地建物編です。

 

前回土地について色々触れましたので、

今回は特に建物について

取り上げてみたいと思います。

 

【土地と建物の所有者が同じか】

 

所有者が異なる場合、

借地権など何らかの利用権

設定されている場合があるため、

所有者の確認は基本中の基本です。

 

共有になっていることも多く、

どのような持分割合になっているか

確認することも大切です。

 

土地と建物の持分割合が異なることもあり、

評価目線の違い=価値観の違いではなく、

明らかなミスになるため気を抜けません。

 

一方、土地と建物が共同担保に供されている場合は、

「同一人に属するものして」との評価条件を付して

土地建物の評価をする場合もあります。

 

【建物の増改築の有無、同一性の確認】

 

登記されている建物の情報と

現況が同一となっているかを確認します。

 

増改築をしていると、床面積=評価数量が変わり

建物価格が変わってきます。

 

また、資本的支出に該当する場合等は

建物の経済的残存耐用年数が変わってくるため、

建物価格に影響があります。

 

さすがに主建物ではあまりありませんが、

複数の附属建物がある場合等は、

新しく未登記附属建物が建っていたり、

過去に取り壊し済みであったりすることもあり、

登記情報と現況の異同をしっかり確認します。

 

所有者からは「これが登記の建物だ」と聞いていても、

登記建物と全く違う建物が建っていて、

登記建物=現況建物かどうか

同一性が疑われることもあります。

 

担保権が及ぶ範囲が、担保権者の事前の思いと

異なることが無いように入念な確認が必要となります。

 

【融資期間と建物の耐用年数】

 

融資期間が20年なのに、

建物の経済的残存耐用年数が5年など、

融資期間>建物耐用年数の場合は、

金融機関での稟議の際に問題になる場合もあります。

 

機械的に建物の残存耐用年数を設定するのではなく、

現況に即して適切に耐用年数を判断することが大切です。


2020/11/02

10/30の日経新聞(電子版)に

「神戸市は老朽化が目立つ空き家について、

固定資産税の税優遇を

2021年度から本格的に廃止する。」

という記事が掲載されていました。

 

「長年放置され地域の景観を損なう

建物については住宅と見なさず、

所有者などに解体・修繕の意思がなければ

「更地」と同様に固定資産税の支払いを求める。

とのことです。

 

【住宅用地の特例】

 

居住用の家屋の敷地(住宅用地)として

認定されると、固定資産税等が軽減されます。

 

■小規模住宅用地(200㎡以下)

 固定資産税 1/6

 都市計画税 1/3

 

■一般住宅用地(200㎡超)

 固定資産税 1/3

 都市計画税 2/3

 

仮に300㎡の住宅地であれば、

200㎡までは小規模住宅用地として、

200㎡を超える部分を一般住宅用地として

課税されることになります。

 

また、共同住宅では、200/1なので、

仮に10部屋ある共同住宅であれば、

2,000㎡までの敷地が小規模住宅用地として

軽減されることになります。

 

【特定空家】

 

これまでも「特定空家」に該当すると、

税優遇の廃止ができるようになっていました。

 

国土交通省の「特定空家等に対する措置」に

関する適切な実施を図るために必要な指針によると、

特定空家の要件として

以下のとおり定められています。


・そのまま放置すれば倒壊等
 著しく保安上危険となるおそれのある状態

・そのまま放置すれば著しく衛生上
 有害となるおそれのある状態

・適切な管理が行われていないことにより
 著しく景観を損なっている状態

・その他周辺の生活環境の保全を図るために
 放置することが不適切である状態

 

【神戸市の取り組み】

 

神戸市が新たに取り組むのは、

上記の特定空家だけではなく、

さらに次のような空家についても

追加で税優遇を廃止するということです。

 

・構造上住宅と認められない状況にある場合


・使用の見込みはなく取壊しを予定している場合


・居住の用に供するために必要な管理を怠っている場合等で

今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる場合

 

【固定資産税への関心の高まり】

 

近年、固定資産税への関心が高まり、

自分の税金が適正に賦課されているのか

課税説明や問い合わせが非常に増えています。

 

特定空家の場合は説明が容易ですが、

市独自の空家認定となると、どこで線引きしていくか。

 

使用の見込みはあり、取壊しも予定していない。

今後居宅として住む(貸し出す)つもりだった等

様々な問題が出てくることが予想されます。

 

特に、令和3年度は評価替年度でもあり、

コロナ禍による地価動向への関心からも

問い合わせが増える可能性が非常に高いです。

 

その中にあって、市内の空き家を

何とかしていこうという神戸市の姿勢は

とてもすごいことだなと感じました。

 

【更地にすると…】

 

戸建住宅を取り壊して更地にすると、

「固定資産税が6倍に上がる!」

ということを聞くことがありますが、

正確には1/6軽減の税優遇が無くなって

“元に戻る”ということになります。


2020/10/31

金融機関向けの不動産担保評価も

不動産鑑定士の仕事です。

 

今回はその中でも土地(更地)の場合に

現地調査で特に気を付けていることをご紹介します。

 

【担保評価の原則】

 

担保評価は「現況評価」が大原則です。

 

たとえば、土地上に未登記建物があるが

当該建物が無いものとしてという条件は、

担保処分の際に大きな問題となる可能性があり、

担保価値に影響があるため認められません。

 

【チェックポイント】

 

■境界確定の有無、隣接建物の越境など

境界が決まっていなかったり、

境界紛争があるような場合は、

将来的に地積が変わってしまう可能性や

そもそも売りにくいという問題があります。

 

隣接建物の越境についても、

将来的に問題になることがあります。

 

軒先だけのでっぱりなのか、

建物自体が越境しているのか、

コンクリートブロック塀がいつの間にか

数十センチ移動されていたり。

14条地図が整備されているとホッとします。

 

物件範囲の確定は、

全ての基本だけに非常に重要です。

 

■未登記建物、工作物・構築物等の有無

土地の上に未登記建物があって、

主建物の附属でセットかなと思っていると、

実は他人が所有する建物だったり。

 

既に賃貸借契約を結んでいたり、

担保の範囲に含まれないような

立派な独立した建物が建っていたり。

 

会計監査等では「実在性」が重要だったりしますが、

担保評価の場合は“建物がある”ことのほうが

問題になるケースも多いです。

 

■取壊済建物の登記の有無

本当に現存しないのか

登記が残っていることでの問題があるのかどうか。

可能であれば滅失登記ができるかどうか。

 

■借地権・一時賃貸借・使用貸借・無断使用の有無

わかりやすく建物が建っていると

何らかの権利関係があるのだと予想できますが、

パッと見は何も問題なくても、

実は貸していた、借りていたという場合も。

 

土地の一部ないし全部が使えないことは

担保価値に大きな影響を及ぼします。

特に、借地権が設定されている場合は、

借地権割合からもわかるように多大な影響があります。

 

また、契約書がなく、借地しているものの

どの範囲が該当するのかわからないこともあります。

建物の建築面積÷建蔽率で

最低限の借地面積を類推するなど対応が必要です。

 

■地目変更手続きの有無

現況宅地となっているのに、

登記地目が田・畑となっている場合、

地目変更登記手続きがされているか、

そもそも地目変更手続きが可能かを確認します。

 

特に、市街化調整区域の場合は、

地目変更が必ずしもスムーズとは限りませんし、

無許可で宅地転用し、

無許可の未登記建物が建っているなど

問題になるケースもあったりします。

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士業の先生の不動産評価に関するご相談、お待ちしています

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  • 不動産評価によるメリットがどれくらいあるか知りたい
  • クライアントにどのような戦略的な提案ができるか知りたい
  • 相手方が出してきた不動産評価の内容や意図が知りたい

などなどお気軽に「ちょい聞き」してください!

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※当事務所は士業専門の不動産鑑定サービスを提供しておりますので、一般の方からのお問合せはご遠慮いただいております。ご了承ください。

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