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士業に役立つ不動産評価まめ知識

2020/11/20

大阪府から11/18

「府内市町村の基準宅地に係る路線価等(令和3年度)」

が発表されました。

http://www.pref.osaka.lg.jp/shichoson/zei/rosen02.html

 

路線価と言えば、国税庁の相続税路線価ですが、

固定資産税にも、独自の路線価があります。

 

税務署に特定路線価の設定を申請した場合、

市の税務課さんに問い合わせがあったり、

市の路線価を参考にされたり、

相続税路線価と固定資産路線価は密接な関係があります。

 

【基準宅地とは】

 

その市町村における最も価格が高い宅地のことです。

一般的には、駅前一等地が該当することが多く、

この基準宅地を価格の頂点として、

市町村内の価格バランスを図っていくことになります。

 

【大阪府の動向】

 

「令和3年度の府内市町村(大阪市を含む43市町村)

における基準宅地の路線価等の評価額は、

令和2年度からの変動割合は、単純平均でプラス11.9

平成30年度(前回評価替え)からの3年間の変動割合は、

単純平均でプラス11.4

とのことです。

 

前回評価替え(R29.7.1価格)とR2.7.1価格との比較では、


■上昇 28市町


1位 豊中市 新千里東町一丁目(駅前通り)

  576,800/㎡ → 1,155,000/㎡ +100.2


2位 吹田市 豊津町(国道479号線)

 696,000/㎡ → 1,297,555/㎡ +86.4


3位 大阪市 北区角田町(御堂筋)

 12,110,000/㎡ → 20,022,000/㎡ +65.3

 

■下落 13市町村


1位 千早赤坂村 小吹台(バス停前通り)

 23,400/㎡ → 20,500/㎡ ▲12.4


2位 岬 町 淡輪(府道淡輪停車場線)

 32,700/㎡ → 30,100/㎡ ▲8.0


3位 豊能町 東ときわ台三丁目(町道吉川中央線)

 40,415/㎡ → 38,334/㎡ ▲5.1

 

なお、これまでも負担調整措置があるほか、

コロナ禍で固定資産税の据え置きも検討されているため、

この上昇率が来年度そのまま税額アップに

直結するということにはなりません。

 

【固定資産評価額と地価動向】

 

固定資産評価額は、

地価上昇補正は3年に一度の評価替えのみ

地価下落補正は毎年反映されることになっています。

 

地価上昇の場合の例を挙げると、

     実際の地価動向  固定資産評価額

初年度    100       100

1年目    110       100

2年目    120       100

評価替    130       130

 

また、地価下落の場合は、以下のとおりです。

     実際の地価動向  固定資産評価額

初年度    100       100

1年目     90        90

2年目     80        80

評価替     70        70

 

実務でもよく見かける固定資産評価額、

どのように算定されているのか

どこまでの地価動向が反映されているのか

しっかり把握しておくことをご提案いたします。


2020/11/12

11/10の日経新聞に

「関経連、21年度予算でコロナ対策を要望」

という記事が掲載されていました。

 

その中で、固定資産税についての記載がありましたので、

内容を見ていきたいと思います。

 

【関経連の意見】

 

「新しい経済・社会を見据えた税財政に関する意見

〜コロナ感染拡大防止と経済活動の両立、

その先の未来に向けて〜」として、

11/10に公益社団法人関西経済連合会が

プレスリリースを出しました。

 

この中のⅢ.1.(1)a)固定資産税・都市計画税で

2021年度は固定資産税の評価替えの年にあたり、

202011日の公示地価をもとに

今後3年間の固定資産税・都市計画税が算出される。

 

基準時期が新型コロナウイルスの感染が拡大する前であり、

商業地をはじめコロナ禍を経た評価額変動は大きいと考えられる。

そのため、評価替えによって税負担額が増加する場合においては、

例えば 2017年時点の評価額に据え置くなど、

評価額の適正化を図るべきである。」

 

【総務省の対応】

 

総税評第57号(令和20930日)

「令和3年度固定資産の評価替えに関する

留意事項について(追加)」が出ています。

 

「土地の評価替えの実施に当たっては、

新型コロナウイルス感染症による影響その他の要因により

地価動向が変化している場合には、

各市町村の区域内の地価動向を的確に把握し、

改正予定の固定資産評価基準に基づく下落修正を行うなど、

適正な評価事務の執行に努めてください。」

 

そして、上記改正予定の固定資産評価基準では、

基準地価の動向、不動産鑑定士の鑑定評価等を活用し、

R2.1.1R2.7.1の下落状況を把握するとしています。

 

【実務への影響】

 

これまでも固定資産税の評価替えの際には、

価格調査基準日である1/1時点価格を

そのまま採用するのではなく、

1/17/1までの価格変動(下落修正分)を把握し、

適切に下落修正を反映しています。

 

不動産鑑定士も「標準宅地の時点修正業務」として

毎年市町村と契約を結んで地価動向を報告しています。

 

そのため、今回もコロナ禍の影響が無い

R2.1.1時点のまま評価替えされた額が出るのではなく、

R2.1.1R2.7.1までのコロナ禍の影響が織り込まれた

新しい評価額が出ることになります。

 

とはいえ、特に市街地中心部など、これまでの

3年分の地価上昇のほうが大きい地域も多いため、

結果として評価額=税額上昇となる地域が増えそうです。

5%+5%+5%−5%=10%上昇というイメージ)

 

なお、R2.7.1R3.7.1の地価動向(下落修正)は

令和4年度の評価額で反映されることになりますので、

来年の令和3年度の評価額に対するコロナ禍による影響は

R2.1.1R2.7.1までの分ということになります。

 

現在の2017年度評価額のまま据え置くのか、

動向を注視していきたいです。


2020/11/06

11/4の日経新聞に「オフィスビル賃貸料調査」

の結果が掲載されていました。

 

「オフィス賃料に下落圧力」

「業績悪化で解約増」

「在宅勤務 需要減に拍車」

「コロナ禍 ビル事業に打撃」

 

これまで活況を呈していた市況から

一転して調整局面に入りました。

 

【近畿の動向】

 

■京都・四条烏丸

「供給不足から賃料が上昇。

解約の動きもあるが空室率は低水準で、

賃料を下げる動きにつながっていない」

 

■大阪・梅田周辺

「まとまった面積を借りるのは依然困難だが、

小さな空きは出始めた」

 

■大阪・難波駅周辺

「新型コロナウイルスの影響とみられる

複数の大規模な解約があった」

 

■神戸・三宮周辺

「来年竣工の新築ビルは高稼働で開業見通し。
既存ビルもまとまった空室は少ない」


【空室率】

 

空室率が増加すると、賃料は下落する傾向にあります。

賃料が下落すると、不動産価格は下落します。

 

仮に月100万円の賃料が入る物件で試算してみます。


空室率0%だと 年1,200万円÷5.0%=2.40億円 ですが、

空室率5%だと 年1,200万円×95%÷5.0%=2.28億円


わずか5%の空室でも、価格に1,200万円の差が出ました。

 

空室率が上昇し、全体的な賃料が下がったり、

取引利回りが上昇すれば、

さらに価格が下がることになります。

 

【賃貸オフィスビル経営への影響】

 

新型コロナウイルスのまん延が

賃貸オフィスビル経営にどのような影響を

及ぼしているかという調査では、

 

賃料減額の申し入れ 45

テナント退去    26

賃料の支払い猶予  24

賃料滞納      15

 

という大きな影響があったことが伺えます。

 

上記の例で、仮に賃料が30%下がったとすると、

100万円から▲30%ですから月70万円(年840万円)。

 

下落前 年1,200万円÷5.0%=2.40億円 ですが、

下落後 年 840万円÷5.0%=1.68億円


賃料が30%下がると、価格では7,200万円もの差になりました。

 

ここにテナント退去や空室率の上昇、

全体的な市場の様子見などが入ってくると、

さらに大きな差になることも考えられます。

 

【まとめ】

 

このように、路線価や基準地価などで

エリアとしては土地価格が下がっていない地域であっても、

賃料への影響如何では物件価格が大きく変わります。

 

現在考えているスキームの物件価格は適正か、

価格が下落している今だからこそ実行できるスキームは無いのか。

物件毎にしっかり考えていく必要がありそうです。


2020/11/02

10/30の日経新聞(電子版)に

「神戸市は老朽化が目立つ空き家について、

固定資産税の税優遇を

2021年度から本格的に廃止する。」

という記事が掲載されていました。

 

「長年放置され地域の景観を損なう

建物については住宅と見なさず、

所有者などに解体・修繕の意思がなければ

「更地」と同様に固定資産税の支払いを求める。

とのことです。

 

【住宅用地の特例】

 

居住用の家屋の敷地(住宅用地)として

認定されると、固定資産税等が軽減されます。

 

■小規模住宅用地(200㎡以下)

 固定資産税 1/6

 都市計画税 1/3

 

■一般住宅用地(200㎡超)

 固定資産税 1/3

 都市計画税 2/3

 

仮に300㎡の住宅地であれば、

200㎡までは小規模住宅用地として、

200㎡を超える部分を一般住宅用地として

課税されることになります。

 

また、共同住宅では、200/1なので、

仮に10部屋ある共同住宅であれば、

2,000㎡までの敷地が小規模住宅用地として

軽減されることになります。

 

【特定空家】

 

これまでも「特定空家」に該当すると、

税優遇の廃止ができるようになっていました。

 

国土交通省の「特定空家等に対する措置」に

関する適切な実施を図るために必要な指針によると、

特定空家の要件として

以下のとおり定められています。


・そのまま放置すれば倒壊等
 著しく保安上危険となるおそれのある状態

・そのまま放置すれば著しく衛生上
 有害となるおそれのある状態

・適切な管理が行われていないことにより
 著しく景観を損なっている状態

・その他周辺の生活環境の保全を図るために
 放置することが不適切である状態

 

【神戸市の取り組み】

 

神戸市が新たに取り組むのは、

上記の特定空家だけではなく、

さらに次のような空家についても

追加で税優遇を廃止するということです。

 

・構造上住宅と認められない状況にある場合


・使用の見込みはなく取壊しを予定している場合


・居住の用に供するために必要な管理を怠っている場合等で

今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる場合

 

【固定資産税への関心の高まり】

 

近年、固定資産税への関心が高まり、

自分の税金が適正に賦課されているのか

課税説明や問い合わせが非常に増えています。

 

特定空家の場合は説明が容易ですが、

市独自の空家認定となると、どこで線引きしていくか。

 

使用の見込みはあり、取壊しも予定していない。

今後居宅として住む(貸し出す)つもりだった等

様々な問題が出てくることが予想されます。

 

特に、令和3年度は評価替年度でもあり、

コロナ禍による地価動向への関心からも

問い合わせが増える可能性が非常に高いです。

 

その中にあって、市内の空き家を

何とかしていこうという神戸市の姿勢は

とてもすごいことだなと感じました。

 

【更地にすると…】

 

戸建住宅を取り壊して更地にすると、

「固定資産税が6倍に上がる!」

ということを聞くことがありますが、

正確には1/6軽減の税優遇が無くなって

“元に戻る”ということになります。

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