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士業に役立つ不動産評価まめ知識

2020/11/06

11/4の日経新聞に「オフィスビル賃貸料調査」

の結果が掲載されていました。

 

「オフィス賃料に下落圧力」

「業績悪化で解約増」

「在宅勤務 需要減に拍車」

「コロナ禍 ビル事業に打撃」

 

これまで活況を呈していた市況から

一転して調整局面に入りました。

 

【近畿の動向】

 

■京都・四条烏丸

「供給不足から賃料が上昇。

解約の動きもあるが空室率は低水準で、

賃料を下げる動きにつながっていない」

 

■大阪・梅田周辺

「まとまった面積を借りるのは依然困難だが、

小さな空きは出始めた」

 

■大阪・難波駅周辺

「新型コロナウイルスの影響とみられる

複数の大規模な解約があった」

 

■神戸・三宮周辺

「来年竣工の新築ビルは高稼働で開業見通し。
既存ビルもまとまった空室は少ない」


【空室率】

 

空室率が増加すると、賃料は下落する傾向にあります。

賃料が下落すると、不動産価格は下落します。

 

仮に月100万円の賃料が入る物件で試算してみます。


空室率0%だと 年1,200万円÷5.0%=2.40億円 ですが、

空室率5%だと 年1,200万円×95%÷5.0%=2.28億円


わずか5%の空室でも、価格に1,200万円の差が出ました。

 

空室率が上昇し、全体的な賃料が下がったり、

取引利回りが上昇すれば、

さらに価格が下がることになります。

 

【賃貸オフィスビル経営への影響】

 

新型コロナウイルスのまん延が

賃貸オフィスビル経営にどのような影響を

及ぼしているかという調査では、

 

賃料減額の申し入れ 45

テナント退去    26

賃料の支払い猶予  24

賃料滞納      15

 

という大きな影響があったことが伺えます。

 

上記の例で、仮に賃料が30%下がったとすると、

100万円から▲30%ですから月70万円(年840万円)。

 

下落前 年1,200万円÷5.0%=2.40億円 ですが、

下落後 年 840万円÷5.0%=1.68億円


賃料が30%下がると、価格では7,200万円もの差になりました。

 

ここにテナント退去や空室率の上昇、

全体的な市場の様子見などが入ってくると、

さらに大きな差になることも考えられます。

 

【まとめ】

 

このように、路線価や基準地価などで

エリアとしては土地価格が下がっていない地域であっても、

賃料への影響如何では物件価格が大きく変わります。

 

現在考えているスキームの物件価格は適正か、

価格が下落している今だからこそ実行できるスキームは無いのか。

物件毎にしっかり考えていく必要がありそうです。


2020/11/02

10/30の日経新聞(電子版)に

「神戸市は老朽化が目立つ空き家について、

固定資産税の税優遇を

2021年度から本格的に廃止する。」

という記事が掲載されていました。

 

「長年放置され地域の景観を損なう

建物については住宅と見なさず、

所有者などに解体・修繕の意思がなければ

「更地」と同様に固定資産税の支払いを求める。

とのことです。

 

【住宅用地の特例】

 

居住用の家屋の敷地(住宅用地)として

認定されると、固定資産税等が軽減されます。

 

■小規模住宅用地(200㎡以下)

 固定資産税 1/6

 都市計画税 1/3

 

■一般住宅用地(200㎡超)

 固定資産税 1/3

 都市計画税 2/3

 

仮に300㎡の住宅地であれば、

200㎡までは小規模住宅用地として、

200㎡を超える部分を一般住宅用地として

課税されることになります。

 

また、共同住宅では、200/1なので、

仮に10部屋ある共同住宅であれば、

2,000㎡までの敷地が小規模住宅用地として

軽減されることになります。

 

【特定空家】

 

これまでも「特定空家」に該当すると、

税優遇の廃止ができるようになっていました。

 

国土交通省の「特定空家等に対する措置」に

関する適切な実施を図るために必要な指針によると、

特定空家の要件として

以下のとおり定められています。


・そのまま放置すれば倒壊等
 著しく保安上危険となるおそれのある状態

・そのまま放置すれば著しく衛生上
 有害となるおそれのある状態

・適切な管理が行われていないことにより
 著しく景観を損なっている状態

・その他周辺の生活環境の保全を図るために
 放置することが不適切である状態

 

【神戸市の取り組み】

 

神戸市が新たに取り組むのは、

上記の特定空家だけではなく、

さらに次のような空家についても

追加で税優遇を廃止するということです。

 

・構造上住宅と認められない状況にある場合


・使用の見込みはなく取壊しを予定している場合


・居住の用に供するために必要な管理を怠っている場合等で

今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる場合

 

【固定資産税への関心の高まり】

 

近年、固定資産税への関心が高まり、

自分の税金が適正に賦課されているのか

課税説明や問い合わせが非常に増えています。

 

特定空家の場合は説明が容易ですが、

市独自の空家認定となると、どこで線引きしていくか。

 

使用の見込みはあり、取壊しも予定していない。

今後居宅として住む(貸し出す)つもりだった等

様々な問題が出てくることが予想されます。

 

特に、令和3年度は評価替年度でもあり、

コロナ禍による地価動向への関心からも

問い合わせが増える可能性が非常に高いです。

 

その中にあって、市内の空き家を

何とかしていこうという神戸市の姿勢は

とてもすごいことだなと感じました。

 

【更地にすると…】

 

戸建住宅を取り壊して更地にすると、

「固定資産税が6倍に上がる!」

ということを聞くことがありますが、

正確には1/6軽減の税優遇が無くなって

“元に戻る”ということになります。


2020/10/29

10/28のニュースで、

「新型コロナウイルスの影響で地価が下がる中、

国税庁は相続税などの計算の基準となる

「路線価」の補正を検討してきましたが、

引き下げないことを決めました。」

と出ていました。

 

【路線価の補正】

 

7月に発表された令和2年の路線価は、

令和211日時点の価格であり、

新型コロナウイルスの影響が考慮されていないため、

地価が20%以上下落する状況が

全国の広範囲に及んでいないかなどを目安に、

国税庁は路線価の引き下げの検討を進めていました。

 

20%以上の下落というのは、

路線価が時価の80となっているため、

それを下回るような状況ということになります。

 

【今年前半の地価動向】

 

以前のブログにもアップした

基準地価の地価動向によると、

近畿では最大でも

大阪ミナミの半年間▲18.8でした。

 

大半の商業地が±0.0%から▲10まで。

住宅地では横ばいから微減程度が多く、

路線価の補正率を設定するほどの

地価下落は無かったことになります。

 

【今後の地価動向】

 

住宅地は大きな下落は無さそうですが、

商業地はこれからも下落が続く可能性があります。

 

オフィスや店舗では、すぐに退去したくても

3ヶ月〜6か月前に解約通知

しなければならない契約になっていることも多く、

影響はこれからさらに出てくる可能性も高いです。

 

【個別物件】

 

上記はいずれも地域の全体的な地価動向です。

個別物件の価格を検討する場合は、

さらに個別具体的に検討する必要があります。

 

地域的に大きな下落が無いエリアの物件でも、

テナント退去が相次ぎ、賃料が大きく下がり、

今後も入居がすぐに見込めない場合など、

大きく価格が下がる可能性があります。

 

このような個別の状況を知りたい場合は、

ゼヒ不動産鑑定士にご相談ください。

 

<路線価について(国税庁ホームページ)>


「路線価及び評価倍率は、

毎年11日を評価時点として、

地価公示価格、売買実例価額、

不動産鑑定士等による鑑定評価額、

精通者意見価格等を基として

算定した価格の80により評価しています。」


2020/10/13

40年ぶりの民法改正で

新しくできた配偶者居住権について、

不動産鑑定士の立場から

評価の中身を見ていきたいと思います。

 

絶対的な評価の解説ではなく、

鑑定士として疑問に思ったことを挙げてみた

あくまでも一考察という位置づけです。

 

以下の3点を問題提起として

取り上げたいと思います。

 

【基準となる土地建物価格】

 

国税庁「No.4666配偶者居住権等の評価」によると、

土地:居住建物の敷地の用に供される土地の相続税評価額

建物:居住建物の相続税評価額

となっています。

 

要は、土地は路線価に基づいた評価額であり、

建物は固定資産評価額を使って評価するということです。

(倍率地域については、土地も固定資産評価額×倍率)

 

このブログでもこれまで上げてきたとおり、

財産評価基本通達は非常によくできた制度ですが、

千差万別の不動産について、

100%完全に適正な評価を行えるものではありません。

 

とすると、スタートとなる上記価格について、

適正に評価されていない場合があり得るということです。

 

適正に評価されていない価格に基づいて

配偶者居住権の価格を評価しても、

適正ではない価格になっている可能性があります。

 

基準となる土地建物価格が適正に評価されているか

不動産鑑定士にお問い合わせ頂くことも

一手ではないかと考えます。

 

【現在の価格or将来の価格】

 

配偶者居住権付の土地の評価額は、

現在時点の評価額×複利現価率を乗じて求めています。

 

しかし、割引現在価値を求める場合、

本来的には、配偶者居住権が消滅する

将来時点の評価額×複利現価率

なるのではないかとの疑問が生じます。

 

具体例を挙げると、

現在時点 5,000万円

将来時点 2,000万円

存続年数20年の複利現価率 0.554

 

5,000万円 × 0.554 2,770万円

2,000万円 × 0.554 1,080万円

 

ただ、現実的に20年後の評価額を

正確に求めることは難しく、

現在時点の価格を将来時点の価格として、

もしくは土地価格の変動なしとして

“取り扱う”ということなのかなと思いました。

 

しかし、人口減少で長期的には

不動産価格が下落傾向にある日本において、

将来の土地価格の変動(下落)リスクは大きいです。

 

【 時 価 】

 

平成24816日裁決によると、

相続税法第22条に規定する「時価」とは、

「取得の時における不特定多数の当事者間

自由な取引が行われる場合に

通常成立すると認められる価額を示すもの」

とされています。

 

ここで一般論として疑問に思うのは、

5,000万円の土地を20年後に取得できるとして

2,770万円で買う人がどれだけいるのか、です。

 

期間が510年と短くて有期であればまだしも、

20年などの長期や、期間が決まっていない場合、

上記の価格で自由な取引が通常成立するのでしょうか。

 

税務署はこの評価しか受け付けないとのことですが、

本当の“時価”かというと、その他の場面では

不満や争いが生じる可能性もありそうだなと感じました。


2020/10/09

大阪市における固定資産税の

過大徴収のニュースについて。

 

容積率が異なる地域にまたがる土地について、

固定資産税が過大徴収されていたというものです。

 

数百万円還付された方もいるとのことですが、

地方税法では5という時効があるため、

さらに国家賠償法による

20分の還付を求めているとのことです。

 

不動産鑑定士も固定資産評価業務に携わっているので、

ブログに取り上げてみました。

 

-------------------------------

前面道路

-------------------------------

 ↑       | 

| 容積率 400%  | 道路から25mまで

| ↓       | ↓

--------------------------------

| ↑       | ↓

| 容積率 200%  | 道路から25m超

| ↓       | ←この部分!!

--------------------------------

 

固定資産評価実施要領

 

固定資産評価は、

総務省が定めた固定資産評価基準に基づくほか、

各市町村で独自の評価要領を持っています。

 

大阪市では「固定資産評価実施要領」を持っていて、

その中に「所要の補正」として

「容積率の異なる地域にわたる土地の評価」

定められています。

 

容積率が400%と200%に

またがっているような土地を評価する場合に

適用されることになります。

 

大阪市の補正率は66~97%(▲3%〜▲33%)

最小で▲3%、最大で▲33%もの評価減となります。

 

固定資産評価額は、道路側の高い容積率に基づいて

評価されていることがほとんどですので、

背後の低い容積率にもまたがっている場合は、

評価の前提条件と対象土地の個別性が異なるため、

何らかの考慮(一定の減価)が必要となります。

 

容積率の異なる地域にわたる土地

 

容積率が異なって指定されている土地とは、

広い道路沿いの商業地等が該当する可能性が高いです。

 

仮に、容積率が400%と200%異なっていると、

大きな方の容積率400%が適用されるのではなく、

面積に応じて加重平均された容積率となります。

 

仮に土地の半分ずつ400%と200%だったら、

その土地の容積率は300%になるというイメージです。

 

商業地は高層建物など高度利用されることが多く、

実際の取引でも容積率如何で価格が大きく異なります。

 

他の市町村ではどうなのか

 

今回の大阪市はたまたま所要の補正として

減額できる項目を持っていましたが、

必ずしも他の市町村が

同じ補正項目を持っているとは限りません。

 

実際の業務においても、

容積率がまたがっていることは認めつつも、

補正する項目が無いため減額不可と

回答されたことがあります。

 

お住まいの市町村ではどうなのか。

一度確認してみるのもよいかもしれません。

 

< 参 考 >

「オ 容積率の異なる地域にわたる土地の評価

容積率の異なる地域にわたる土地については、

正面路線に接する部分の容積率に対する

他の部分の容積率の割合及び

当該土地の面積に対する他の部分の面積の割合に応じて、

次に定める補正率表により求めた

補正率によって補正することができる。

 

ただし、正面路線に接する部分の容積率が

他の部分の容積率よりも低い場合については、

補正を適用しない。」


2020/09/19

家賃支援給付金を申請される際、

契約書が無いことも多いのではないでしょうか。

 

特に、昔からの賃貸借契約であれば、

そもそも作っていない。

過去に作ったが、大事にしまい過ぎて出てこない。

このようなこともあるかと思います。

 

その場合、賃貸借契約書に代わって

賃貸借契約等証明書」を添付する必要があります。

 

この「賃貸借契約等証明書」の添付にあたっては

十分に気を付けて頂きたいというのが今回のテーマです。

 

【家賃支援給付金】

 

売上の減少に直面する

事業者の事業継続を下支えするため、

地代・家賃の負担を軽減する給付金です。

 

添付するいくつかの書類のうち、

賃貸借契約書の写し」があります。

元々作成されていて、現在も有効なものであれば

このブログでの懸念は該当しません。

 

賃貸借契約書が無く、

賃貸借契約等証明書(契約書等が存在しない場合)

を添付する場合が該当します。

 

【賃料の改定(継続賃料評価)】

 

不動産鑑定士の業務の中には、

賃料を改定するための評価があります。

 

現行賃料は月額50万円だけど、

今の相場では月額20万円なので下げたい。


または、現行20万円で相場50万円だから上げたい。

このような場合の賃料評価のことです。

 

【直近合意時点】

 

「継続賃料の鑑定評価は、原則として、

直近合意時点から価格時点までの事情変更

考慮するものであり、直近合意時点は

事情変更を考慮する起点となるものである。」

とされています。

 

契約書が無く、たとえば

昭和初期に契約されている場合は、

その昭和初期の時が「直近合意時点」となります。

 

また、バブルの時の契約なら、

バブルの時が「直近合意時点」です。

 

ここからの経済情勢などの事情変更を加味して

賃料が上がったり下がったりすることになります。

 

しかし、賃貸借契約等証明書を現在時点で作成すると、

この書類の作成時点が「直近合意時点」である

相手方から主張される可能性があります。

 

というのも、賃貸借契約等証明書には、

・物件の所在地

・物件の名称

・契約期間

・賃料等

・共益費・管理費

・賃貸人自署(年月日欄)

・賃借人自署(年月日欄)

を記載することになっています。

 

現在の賃料等を記載した書面に双方が署名するわけですので、

「現在時点において、現行賃料で双方合意した。」

という意味に捉えられかねません。

 

仮に、今この時点でお互い合意したとされてしまうと、

昭和初期からの物価上昇が反映されずに増額できなかったり、

バブル時からの地価下落が反映されずに減額できなかったり、

大きな影響が出てくる可能性があります。

 

必ずしも賃貸借契約等証明書を

作成することがダメだということではありませんが、

将来不測の事態が起きないように

しっかりご検討されることをお勧めいたします。


2020/09/13

99日に不動産鑑定士試験の

令和2年短答式試験合格者が発表されました。

 

合格された方、おめでとうございます。

次は10月の論文式試験、頑張ってくださいね。

 

短答式試験の受験者数1,415人。

合格者468人(男性410人・女性58人)。

平均38.0歳で、35歳未満が全体の8割以上。

最年少は19歳で、最高齢は78歳とのことでした。

 

不動産鑑定士試験

 

私が受験した時は、

第一次試験、第二次試験、第三次試験がありました。

第一次試験は大学の一般教養単位で試験免除、

第二次試験10%、第三次試験30%の合格率でした。

 

現在は、短答式試験→論文式試験となっています。

これらの試験に合格し、実務修習課程を修了し、

国土交通大臣による実務修習の終了確認を受けて

不動産鑑定士となりことができます。

 

年齢、学歴、国籍、実務経験を問わず、受験でき、

民法、経済学、会計学、不動産に関する行政法規、

不動産の鑑定評価に関する理論の5つが試験科目です。


“絶滅危惧士業”??


 「不動産鑑定士、10年で受験者3分の1 PR懸命」

(日経2017228日)

「不動産鑑定士の確保急げ 国交省、受験者減で制度見直し」

(日経2017616日)

という記事が掲載されました。

 

「同省の調査では鑑定士登録者数

8300171月時点)のうち、

60歳以上が4割以上を占める。」と書かれています。

 

さらに、週刊ダイヤモンド(2017926日)でも

不人気資格の不動産鑑定士が「穴場国家資格」に一変!?

と書かれていて、そんなに不人気なんだと

寂しい気持ちになった記憶があります。

 

文系最難関の“国家資格”として、

弁護士、公認会計士と並び称されるのが

「不動産鑑定士」(以下、鑑定士)だ。」

 

「中小の場合、1事務所当たりの売り上げも

年間700万円前後と少ない上、特に地方では

公共事業の減少で苦しくなっている。」

 

なんか昔は良かったけど、今は残念…。

そんなイメージが出てきそうです。

中小&地方の当事務所もそんなに苦しいのでしょうか。。。

 

誇れる仕事に


私は、不動産鑑定士は

可能性いっぱいの仕事だと信じています。


まだまだ活用方法を伝えきれていないだけで、
社会に貢献できる機会はいっぱいあります。

 

こどもたちに、そして、こどもたちが、

パパは不動産鑑定士なんだと胸を張って言ってくれて、

いつか自分もなりたいと思ってもらえるように

これからも頑張っていきたいです。


2020/09/09

95日の日経に閉鎖のオフィス・店舗の

「原状回復」費の過剰請求多発

という記事が掲載されていました。

 

競争原理が働かない、

適正金額より36割高く請求されることがある。

第三者の査定が重要というものです。

 

裁判上の評価

 

裁判上の評価でも、

様々な請求書・見積書を根拠として

不動産価格にプラス評価

もしくはマイナス評価をしている場合があります。

 

出てきた請求書・見積書は

どのような工事を前提に出されているのか。

 

一般的な相場から見て高いのか安いのか。

そもそも信頼できるものなのか。

しっかり確認をしておく必要があります。

 

立退料算定の場合の引っ越し実費なども

オーナー側かテナント側かでかなり変わってきます。

 

請求書・見積書

 

不動産鑑定士も業務の中で

様々な請求書や見積書を参考にしています。

 

本当に不動産は千差万別で、

業者による差だけではなく、

そもそもどのような前提での見積書なのか。

 

全部直すのか、部分的に直すのかだけでも

金額としては大きな差になってしまいます。

 

不動産関係の請求・見積額は

元々の総額が高いこともあって、

金額にするとかなり大きな幅ができてしまいます。

 

それぞれについて、

ざっくりイメージを書いてみようと思います。

 

【土地関係】

 

■宅地造成費(開発工事費)

規模が大きな画地であったり、

田・畑・山林を宅地に造成したりする場合です。

 

評価としては、

「造成後の完成宅地価格−宅地造成費=評価額」

となるのですが、

この宅地造成費もけっこう幅が大きくて、

結果としての評価額もかなり変わってきます。

 

財産評価基本通達では、以下の項目が挙がっています。

整 地 費 (凹凸地面の地ならし工事費)

 伐採・伐根費(樹木の伐採・伐根工事費)

 地盤改良費 (軟弱地盤の改良工事費)

 土 盛 費 (道路面までの盛土工事費)

 土 止 費 (擁壁工事費) 

 

どのような宅地造成を行うのか、

単なる宅地造成だけではなく、

分割の上で住宅地分譲まで行うのか。

 

住宅地分譲まで行う場合は、

さらに分筆測量、開発道路築造、

上下水道ガス敷設等の工事費用がかかってきます。

 

■土壌汚染対策費用

土壌汚染がある土地の評価です。

どのような汚染対策を行うのか、

掘削除去原位置浄化など様々な方法があります。

 

また、どのような有害物質で汚染されているか、

どの程度の深さまで対策工事を行うか。

 

そもそも見積もり段階では、

試掘調査での情報に基づいているので、

実際にやってみたらもっと汚染されていた等、

ふたを開けてみないと誰にもわからない世界です。

 

【建物関係】

 

■解体費用(取壊費用)

建物自体のRCor木造等の構造

建物の規模が大きいのか小さいのか以外にも、

作業環境の良否も大きな影響があります。

 

たとえば、全部機械で解体できる場合と、

狭くて機械が入らず全部手で解体だったら

全く違ってきますよね。

 

■大規模修繕・耐震補強

どのような工事をどこまで行うのか、

そもそもの前提条件が整理されていないこともあり、

同じ大規模修繕、耐震補強といっても、

ビックリするくらいの差になっていたりします。


2020/09/05

93日の日経に<もがくREIT>として、

「物流系に資金、進む二極化

という記事が掲載されていました。

 

「不動産投資信託(REIT)市場で二極化が鮮明だ。

新型コロナウイルスの影響で

稼働率低下や賃料収入の減少が続く

ホテル系や商業施設系の買いが手控えられる一方、

物流施設系は値上がりが目立つ。」

と書かれています。

 

これまでの二極化

 

これまでの「二極化」は、

都市部と地方との二極化、

便利な駅前と不便な郊外との二極化など、

エリア毎に二極化が広がっていたのが特徴でした。

 

コロナ禍による二極化

 

一方、新型コロナウイルスの影響では、

これまでのエリア毎の二極化だけではなく、

物件種別による二極化も広がってきたことが伺えます。

 

■工業地

 

一括りに工業地と言っても、

物流倉庫系、工場(大工場・中小工場)系では

影響が異なってくると考えます。

 

物流・倉庫系は、巣ごもり消費が伸び、

倉庫需要が増加するとの期待で堅調に推移しています。

 

一方、コロナ禍による需要急減などで

操業が停止した工場系はダメージを受けています。

 

さらに、大企業が所有する大規模工場より、

中小企業が所有する中小工場のほうが

大規模工場より大きなダメージを受けていることも。

 

■商業地

 

店舗、ホテル、オフィスビル等で

影響が出てくるタイミングが変わってきます。

 

店舗やホテルは、需要蒸発により

ダイレクトに収益を直撃し、

業績への打撃がタイムリーに顕在化します。

 

一方、オフィスビルは賃貸借契約により

解約まで数ヶ月必要な場合が多く、

店舗やホテルのように

タイムリーには収益に影響を与えません。

 

ただ、今後は在宅勤務の普及等により

オフィスビルについても影響は避けられず、

今後じわじわと影響が出てくるものと思われます。

 

NAV倍率

 

不動産を時価評価した純資産価値に対する

投資口価格の割安度を表す指標です。

株式の株価純資産倍率に相当します。

 

現在は、物流系REIT1倍以上、

商業系REIT1倍未満が多いです。

 

不動産のうち収益物件は、

収益価格(その物件からいくら儲かるか)で

時価が決まります。

 

商業系の店舗・ホテル・オフィスビル等では

テナントからの賃料減額要請も多く、

賃料減額=収益性低下=収益価格(時価)低下です。

 

NAV倍率が最も低いもので0.5倍、

純資産が「1」あるのに「0.5」でしか

評価されていないことになります。

 

仮に、収益や賃料の大きな下落で、

0.5」が市場における適正価格だとしたら、

将来的に純資産価格が半減してもおかしくないかもしれません。

(もちろん単なるイメージで極端な解釈ですが)

 

商業系の不動産価格は下落していくことになり、

これまで地価上昇をけん引していた

ホテルの市場動向からも目が離せなくなります。


2020/09/03

91日の日経に「コロナ禍 不動産売却したい」

という記事が掲載されていました。

 

「保有資産の売却で手元資金を増やしたり、

自己資本を充実させたりするのが目的だ。」

と書かれています。

 

「セール&リースバック」

 

事業用の不動産では、

不動産の信託受益権を譲渡し、

買い主に賃料を支払いながら

同じ場所で営業を続けることができる

セール&リースバックを検討されたりします。

 

信託受益権だけではなく、

普通に所有権を売却し、

改めて賃貸借契約を結ぶ場合もあります。

 

不動産の売却損益を計上できるほか、

なによりコロナ禍で強まる資金需要の中で

手元にキャッシュを確保できることが大きいです。

 

売買価格

 

ホテル、事業所、オフィスビルなど

事業用の不動産は、適正な時価がわかりにくいです。

 

さらに、現在はコロナ禍で地価動向が一変し、

テナント賃料なども大きく変動し、

より一層わかりにくくなっています。

 

普通の戸建住宅等であれば、

ネットですぐに相場を調べられますが、

物件規模が大きかったり、個別性が強かったりする

事業用不動産の売買価格を決めることは難しいです。

 

そのため、このような場合、

不動産鑑定士にご相談されることが多いです。

 

実際の売買実例価格から価格を求めたり、

事業収益などに基づいて評価をしたり、

様々な観点から適正な価格を求めることができます。

 

単なる評価だけではなく、

簿価との関係や税務リスク対策なども

しっかり検討していくことが大切です。

 

賃 料

 

他方、賃料についても同様です。

いくらで貸す(借りる)ことが適正なのか

あまりにあり得ない賃料だと、

税務リスクが高まってしまいます。

 

こちらも事業用不動産は

ネットで相場を簡単に検索!などできないため、

鑑定士にご相談されることが多いです。

 

価格や賃料が高過ぎor低過ぎたりして、

みなし贈与や利益供与のようなことにならないよう、

簿価や決算との関係等にも留意し、

なにより企業活動を継続して頂けるよう

鑑定士としっかりご相談されることをオススメいたします。

 

リバースモーゲージ


なお、普通の戸建住宅の場合でも、

「リバースモーゲージ」といって、

持ち家を担保にして、そのまま住み続けながら

銀行から融資を受けられる仕組みがあります。

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士業の先生の不動産評価に関するご相談、お待ちしています

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