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士業に役立つ不動産評価まめ知識

2020/12/12

不動産投資をする時や、

賃料(収益性)から不動産価格を求める際に

重要になってくるのが「利回り」です。

 

利回りにも色々な種類がありますので、

それぞれに合った利回りを使う必要があります。

 

投資としては、高利回りは魅力的ですが、

その利回りがどのような前提で求められているか

しっかり見ていくことが大切です。

 

【表面利回り(グロス)】

 

年間収入合計を物件価格で割った数字です。

不動産広告などでは、一般的に

この表面利回りが使われることが多いです。

 

年間賃料 ÷ 物件価格 表面利回り

100万円 ÷ 1,000万円  10

 

必要諸経費(管理費・修繕費・公租公課等)が

考慮されていませんが、概ねの感覚をつかむ時に

非常に使いやすい利回りです。

 

さらに、不動産広告では「満室想定利回り」もあり、

全室満室だった場合の賃料から求めることもあります。

(表面利回りも、満室想定の場合が多いです。)

 

空室による賃料減は考慮されていませんので、

実際の空室率、今後の空室見込みには

十分注意する必要があります。

 

【実質利回り(ネット)】

 

年間収入から必要諸経費(管理費・修繕費・公租公課等)を

引いた純利益を物件価格で割った数字です。

 

実際の“実入り額”をベースにしているため、

こちらのほうが投資の際には有用かもしれません。

 

賃料が少し高くても、管理費や修繕費などで

多額の費用がかかっていたら仕方ないですもんね。

 

(年間賃料 諸経費)÷ 物件価格 実質利回り

100万円 30万円)÷ 1,000万円  7

 

同じ物件でも、グロスかネットで

簡単にこれだけ利回りが変わってきます。

 

なお、減価償却費は、この必要諸経費に

算入しないことが一般的です。

(減価償却費の計上の有無でも利回りは変わります。)

 

NOI利回り・NCF利回り】

 

不動産鑑定評価においてよく使われるのは、

この2つの利回りです。

 

NOI利回り

Net Operating Incomeの略で、

年間賃料から、実際に発生した諸経費のみを控除して求めます。

減価償却費、支払利息、資本的支出は控除しません。

上記の実質利回りとほぼ同じ内容です。

 

NCF利回り

Net Cash Flowの略で、

上記のNOIから資本的支出を控除したものです。

 

【近畿圏の利回り】

 

一般財団法人日本不動産研究所の

「不動産投資家調査(202010月現在)」によると、

以下のとおりとなっています。

(以下はNOI利回りです。)

 

■賃貸住宅

    ワンルーム ファミリー向け

京 都  5.2%    5.3

大 阪  4.8%    5.0

神 戸  5.2%    5.3

 

■商業店舗

     都心型    郊外型

京 都  5.0%    6.0

大 阪  4.5%    5.8

神 戸  5.2%    6.1

 

■宿泊特化型ホテル

京 都  5.0

大 阪  5.0

 

一般的に、取引価格に比べて賃料は変動にしくいので、

景気が悪くなる 取引価格下落 利回り上昇。

景気が良くなる 取引価格上昇 利回り下落。

という流れになります。


2020/12/10

鑑定評価は、市場代行機能とも言われます。

 

市場に成り代わって、

市場において成立するであろう価格を

鑑定評価によって導き出すからです。

 

とすると、市場には

どのような参加者がいて、

どんなことを考えて行動しているのか。

メカニズムを分析する必要があります。

 

鑑定評価にあたって、欠かせない分析の1つです。

 

【市場分析】

 

以下の内容を分析することによって、

市場の特性を分析・把握していくことになります。

 

■市場参加者の属性

法人or個人、業種・業態、年齢・家族構成・所得水準など。

 

■市場参加者の行動

取引の意思決定する際に何を重視するか。

居住の快適性、利便性、地域性、立地条件、取引条件など。

 

■重視する価格形成要因

取引価格(坪単価)、収益性、投資採算性など。

 

■市場の需給動向

評価の対象となる不動産と類似する不動産の需給動向。

需要が多いor供給が多い、取引が多いor少ない等。

 

これを具体的にあてはめると、

以下のようなイメージになります。

 

【戸建住宅】

 

■市場参加者の属性:居住目的の個人

■市場参加者の行動:居住の快適性、生活利便性を求める

■重視する価格形成要因:取引価格(坪単価)を重視

 

→鑑定評価:取引事例比較法による比準価格を重視

 

【テナントビル】

 

■市場参加者の属性:投資目的の法人・個人

■市場参加者の行動:安定的継続的な収益(利回り)を求める

■重視する価格形成要因:収益性を重視

 

→鑑定評価:収益還元法による収益価格を重視

 

【分譲マンション】

 

■市場参加者の属性:不動産業者(デベロッパー)

■市場参加者の行動:適正な開発利潤を求める

■重視する価格形成要因:投資採算性を重視

 

→鑑定評価:一体利用を前提とした開発法による価格を重視

 

【まとめ】

 

市場分析を行うことで、

どのような価格を重視すればよいかがわかります。

 

たとえば、相続税申告のための評価において、

なんとか価格を下げたい一心で、

戸建住宅なのに収益価格を重視して価格を下げたりすると、

市場分析とは全く異なることになり、

認めてもらえない結果になることは明らかです。

 

その不動産を求める需要者は誰なのか

しっかり把握することが大切です。


2020/12/08

「都市計画道路予定地になっているのですが

どう考えたらいいですか?」

というご質問を頂くことがあります。

 

都市計画道路予定地は、減価要因です。

 

道路になることはセットバックとよく似ていますが、

都市計画道路予定地の場合は、

行政が買収してくれるのが大きな違いです。

 

ちなみに、行政が買う時の価格も、

不動産鑑定士が評価しています。

公共用地買収のための評価という

昔から続く鑑定士の業務の1つです。

 

市町村の都市計画課で調べられるほか、

最近はネット閲覧できる市町村も増えました。

 

「都市計画道路○○線 3.4.9号(20m)」

というように記載されていて、

道路名と拡幅後の予定幅員を調べることができます。

 

【都市計画道路予定地とは】

 

都市計画法に基づく道路整備が予定されている土地のことです。

どのような段階にあるかで、

土地利用の制約や減価の程度が変わってきます。

 

既存道路を拡幅するような形で

計画決定されていることが多いですが、

たまに住宅地のど真ん中を貫いていたりもします。

 

■計画決定段階

都市計画道路の計画が決まっただけの段階です。

まだ事業認可まで受けていないため、

将来的に道路になるんだなという程度のイメージです。

 

何十年も“計画決定”されたままのものも多く、

都市計画の見直しにより廃止されることもあります。

 

2階建てまで、地階は無し

木造・鉄骨造・コンクリートブロック造など

容易に除却・移転が可能であれば、建築可能です。

 

逆に言うと、3階建て以上の鉄筋コンクリート造建物は

建築できないことになります。

商業地域など容積率が大きい地域ほど影響が大きいです。

 

■事業認可段階

事業が認可され、予算もつき、

数年のうちに道路として整備されることになります。

 

そのため、予定地上に建物を建設することはできず、

建築基準法上の道路と同様の扱いになります。

建築物の敷地面積に含めることもできません。

 

【財産評価基本通達における評価】

 

24-7「都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価」として、

地区区分、容積率、地積割合の別に応じて定める

補正率を乗じて計算した価額によって評価する。」

とされています。

 

予定地の地積割合が大きいほど、

容積率が高いほど減価の程度は大きく、

1%〜▲50%までの幅広い補正率になっています。

 

【固定資産評価】

 

対象地の中に予定地が占める地積割合と、

固定資産評価上の用途地区の分類に応じて

補正率が定められています。

(補正のイメージは国税と似ています。)

 

【鑑定評価】

 

鑑定評価の場合は、

上記のような地積割合、容積率等はもちろん、

対象地のどの部分が都市計画道路予定地になっているか。

「位置」が非常に重要になります。

 

ある程度の地積割合でも、敷地の端であれば、

土地利用(建物建築)にあまり影響が無い場合もあります。

 

また、地積割合は小さくても、

対象地のど真ん中を都市計画道路予定地が

横断しているような場合は、

土地利用に大きな影響が出てしまいます。

 

また、都市計画道路予定地が実際に道路となり、

既存建築物の敷地面積が減ってしまうことにより、

建て替えの際に同じ建物が建たない場合も出てきますので、

しっかり個別具体的に検討していくことが大切です。


2020/12/04

「親名義の建物を子どもに売りたい」

「社長名義の土地を会社に売りたい」

「会社の土地を社長に売って地代を設定したい」等

 

親族間、同族間、社長と会社、関連会社間などで

名義を変えたい=譲渡したい

というご相談がこの頃非常に多いです。

 

【鑑定士に頼むメリット】

 

不動産鑑定士が作成する書類があれば、

譲渡価格が適正であることの根拠となります。

 

適正な価格を評価することはもちろん、

金融機関からの借入残債、会社との間での貸付金

帳簿価額月々返済額など、

様々な観点から適正価格を検討することができます。

 

【適正な価格とは】

 

“適正な価格かどうか”という観点は、

相続税法の「みなし贈与」に該当しないかどうかが

なにより重要になります。

 

相続税路線価や固定資産評価額をベンチマークとし、

評価の対象となる不動産を個別具体的に

不動産鑑定士の目線から評価していくことになります。

 

相続税法第7

「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、

当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、

当該対価と当該譲渡があつた時における

当該財産の時価との差額に相当する金額を

当該財産を譲渡した者から贈与により取得したものとみなす。」

 

「時価」という概念は奥深いなと感じます。

 

【収益物件(賃貸マンション等)】

 

賃貸マンションなどの収益物件の場合、

親御さんの名義だったものを

子どもに譲渡したいと相談されるケースが多いです。

 

譲渡後の賃料収入が子どもに入るため、

親御さん名義の財産が増えて

将来の相続税が高くなることを防ぐ効果があります。

 

このような場合は、みなし贈与だけではなく、

将来的な相続人間の争いの種にならないよう

気を付ける必要があります。

 

【事業用物件】

 

会社の建物が建っている土地が、

実は社長や社長の親御さん名義だったりすると、

事業とは関係のないところで

会社が相続問題に巻き込まれるリスクがあります。

 

相続問題が起きないうちに、

今一度事業用の土地建物の名義を

整理しておくことをお勧めいたします。


譲渡価格によっては、
譲渡損益が大きく出ることもあり、
会社の決算が大きく変わることもあります。

 

【賃料設定】

 

社長ないし会社の土地建物のうち、

どちらかを譲渡して賃料を設定したいという

ご相談もよく頂きます。

 

このような場合は、譲渡価格の適正さだけではなく、

賃料をいくらにすればよいかというご相談も含めて

ご依頼頂くことが多いです。

 

あまりに高額or低額な賃料設定だと、

将来的に問題になるケースが出てきます。

 

決めてしまってからでは大変ですので、

適正な範囲を知ってから

賃料を決めるほうがよいのではないでしょうか。


2020/12/02

「建物にアスベスト等の有害物質があるかどうか、

どうやったら調べられますか?」

というご質問もよく頂きます。

 

【評価に与える影響】

 

アスベストは不動産価格に対して減価要因となります。

 

・建物利用者の健康リスク増大。

建物解体費が高くなる。

・解体しなくても、アスベスト除去・管理費用がかかる。

心理的嫌悪感や建物のイメージダウン 等

 

実務では「アスベストは考慮外とする」として

評価条件を付して外してしまうことが多いです。

 

現地調査でアスベストが確認できるかどうか、

専門調査機関による調査結果があるかどうか、

個別具体的に判断していくことになります。

 

【新築年次での確認方法】

 

詳細は専門調査機関による調査が必要ですが、

建物の新築年次で概ねの傾向を把握することができます。

 

■昭和5010月まで

アスベスト含有量5重量%超の

吹付アスベスト原則禁止前の建築物

■昭和5010月〜

アスベスト含有量5重量%超の

吹付アスベスト原則禁止以降の建築物

■昭和55年〜

日本石綿協会の自主規制による

アスベスト含有ロックウール製造禁止以降の建築物

■平成元年〜

建設省通則個別指定の石綿含有吹付け材の

製造中止以降の建築物

■平成74月〜

特定化学物質等障害予防規則改定による

アスベスト含有量1重量%超の建材禁止以降の建築物

■平成189月〜

石綿障害予防規則改正による

アスベスト含有量0.1重量%超の建材禁止以降の建築物

 

【不動産鑑定評価基準】

 

建物に関する個別的要因の中に

「有害な物質の使用の有無及びその状態」があり、

建設資材としてのアスベストの使用の有無及び

飛散防止等の措置の実施状況並びに

ポリ塩化ビフェニル(PCBの使用状況及び保管状況に

特に留意する必要がある」とされています。

 

【アスベストとは】

 

厚生労働省ホームページによると、

「天然に産する繊維状けい酸塩鉱物」です。

 

「繊維が極めて細いため、研磨機、切断機などの

施設での使用や飛散しやすい吹付け石綿などの除去等において

所要の措置を行わないと石綿が飛散して

人が吸入してしまうおそれがあります。」

 

「以前はビル等の建築工事において、

保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われていましたが、

昭和50年に原則禁止されました。」


その後も、スレート材、ブレーキライニングや

ブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材などで使用されましたが、

現在では、原則として製造等が禁止されています。」

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