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士業に役立つ不動産評価まめ知識

2020/09/19

家賃支援給付金を申請される際、

契約書が無いことも多いのではないでしょうか。

 

特に、昔からの賃貸借契約であれば、

そもそも作っていない。

過去に作ったが、大事にしまい過ぎて出てこない。

このようなこともあるかと思います。

 

その場合、賃貸借契約書に代わって

賃貸借契約等証明書」を添付する必要があります。

 

この「賃貸借契約等証明書」の添付にあたっては

十分に気を付けて頂きたいというのが今回のテーマです。

 

【家賃支援給付金】

 

売上の減少に直面する

事業者の事業継続を下支えするため、

地代・家賃の負担を軽減する給付金です。

 

添付するいくつかの書類のうち、

賃貸借契約書の写し」があります。

元々作成されていて、現在も有効なものであれば

このブログでの懸念は該当しません。

 

賃貸借契約書が無く、

賃貸借契約等証明書(契約書等が存在しない場合)

を添付する場合が該当します。

 

【賃料の改定(継続賃料評価)】

 

不動産鑑定士の業務の中には、

賃料を改定するための評価があります。

 

現行賃料は月額50万円だけど、

今の相場では月額20万円なので下げたい。


または、現行20万円で相場50万円だから上げたい。

このような場合の賃料評価のことです。

 

【直近合意時点】

 

「継続賃料の鑑定評価は、原則として、

直近合意時点から価格時点までの事情変更

考慮するものであり、直近合意時点は

事情変更を考慮する起点となるものである。」

とされています。

 

契約書が無く、たとえば

昭和初期に契約されている場合は、

その昭和初期の時が「直近合意時点」となります。

 

また、バブルの時の契約なら、

バブルの時が「直近合意時点」です。

 

ここからの経済情勢などの事情変更を加味して

賃料が上がったり下がったりすることになります。

 

しかし、賃貸借契約等証明書を現在時点で作成すると、

この書類の作成時点が「直近合意時点」である

相手方から主張される可能性があります。

 

というのも、賃貸借契約等証明書には、

・物件の所在地

・物件の名称

・契約期間

・賃料等

・共益費・管理費

・賃貸人自署(年月日欄)

・賃借人自署(年月日欄)

を記載することになっています。

 

現在の賃料等を記載した書面に双方が署名するわけですので、

「現在時点において、現行賃料で双方合意した。」

という意味に捉えられかねません。

 

仮に、今この時点でお互い合意したとされてしまうと、

昭和初期からの物価上昇が反映されずに増額できなかったり、

バブル時からの地価下落が反映されずに減額できなかったり、

大きな影響が出てくる可能性があります。

 

必ずしも賃貸借契約等証明書を

作成することがダメだということではありませんが、

将来不測の事態が起きないように

しっかりご検討されることをお勧めいたします。


2020/09/13

99日に不動産鑑定士試験の

令和2年短答式試験合格者が発表されました。

 

合格された方、おめでとうございます。

次は10月の論文式試験、頑張ってくださいね。

 

短答式試験の受験者数1,415人。

合格者468人(男性410人・女性58人)。

平均38.0歳で、35歳未満が全体の8割以上。

最年少は19歳で、最高齢は78歳とのことでした。

 

不動産鑑定士試験

 

私が受験した時は、

第一次試験、第二次試験、第三次試験がありました。

第一次試験は大学の一般教養単位で試験免除、

第二次試験10%、第三次試験30%の合格率でした。

 

現在は、短答式試験→論文式試験となっています。

これらの試験に合格し、実務修習課程を修了し、

国土交通大臣による実務修習の終了確認を受けて

不動産鑑定士となりことができます。

 

年齢、学歴、国籍、実務経験を問わず、受験でき、

民法、経済学、会計学、不動産に関する行政法規、

不動産の鑑定評価に関する理論の5つが試験科目です。


“絶滅危惧士業”??


 「不動産鑑定士、10年で受験者3分の1 PR懸命」

(日経2017228日)

「不動産鑑定士の確保急げ 国交省、受験者減で制度見直し」

(日経2017616日)

という記事が掲載されました。

 

「同省の調査では鑑定士登録者数

8300171月時点)のうち、

60歳以上が4割以上を占める。」と書かれています。

 

さらに、週刊ダイヤモンド(2017926日)でも

不人気資格の不動産鑑定士が「穴場国家資格」に一変!?

と書かれていて、そんなに不人気なんだと

寂しい気持ちになった記憶があります。

 

文系最難関の“国家資格”として、

弁護士、公認会計士と並び称されるのが

「不動産鑑定士」(以下、鑑定士)だ。」

 

「中小の場合、1事務所当たりの売り上げも

年間700万円前後と少ない上、特に地方では

公共事業の減少で苦しくなっている。」

 

なんか昔は良かったけど、今は残念…。

そんなイメージが出てきそうです。

中小&地方の当事務所もそんなに苦しいのでしょうか。。。

 

誇れる仕事に


私は、不動産鑑定士は

可能性いっぱいの仕事だと信じています。


まだまだ活用方法を伝えきれていないだけで、
社会に貢献できる機会はいっぱいあります。

 

こどもたちに、そして、こどもたちが、

パパは不動産鑑定士なんだと胸を張って言ってくれて、

いつか自分もなりたいと思ってもらえるように

これからも頑張っていきたいです。


2020/09/09

95日の日経に閉鎖のオフィス・店舗の

「原状回復」費の過剰請求多発

という記事が掲載されていました。

 

競争原理が働かない、

適正金額より36割高く請求されることがある。

第三者の査定が重要というものです。

 

裁判上の評価

 

裁判上の評価でも、

様々な請求書・見積書を根拠として

不動産価格にプラス評価

もしくはマイナス評価をしている場合があります。

 

出てきた請求書・見積書は

どのような工事を前提に出されているのか。

 

一般的な相場から見て高いのか安いのか。

そもそも信頼できるものなのか。

しっかり確認をしておく必要があります。

 

立退料算定の場合の引っ越し実費なども

オーナー側かテナント側かでかなり変わってきます。

 

請求書・見積書

 

不動産鑑定士も業務の中で

様々な請求書や見積書を参考にしています。

 

本当に不動産は千差万別で、

業者による差だけではなく、

そもそもどのような前提での見積書なのか。

 

全部直すのか、部分的に直すのかだけでも

金額としては大きな差になってしまいます。

 

不動産関係の請求・見積額は

元々の総額が高いこともあって、

金額にするとかなり大きな幅ができてしまいます。

 

それぞれについて、

ざっくりイメージを書いてみようと思います。

 

【土地関係】

 

■宅地造成費(開発工事費)

規模が大きな画地であったり、

田・畑・山林を宅地に造成したりする場合です。

 

評価としては、

「造成後の完成宅地価格−宅地造成費=評価額」

となるのですが、

この宅地造成費もけっこう幅が大きくて、

結果としての評価額もかなり変わってきます。

 

財産評価基本通達では、以下の項目が挙がっています。

整 地 費 (凹凸地面の地ならし工事費)

 伐採・伐根費(樹木の伐採・伐根工事費)

 地盤改良費 (軟弱地盤の改良工事費)

 土 盛 費 (道路面までの盛土工事費)

 土 止 費 (擁壁工事費) 

 

どのような宅地造成を行うのか、

単なる宅地造成だけではなく、

分割の上で住宅地分譲まで行うのか。

 

住宅地分譲まで行う場合は、

さらに分筆測量、開発道路築造、

上下水道ガス敷設等の工事費用がかかってきます。

 

■土壌汚染対策費用

土壌汚染がある土地の評価です。

どのような汚染対策を行うのか、

掘削除去原位置浄化など様々な方法があります。

 

また、どのような有害物質で汚染されているか、

どの程度の深さまで対策工事を行うか。

 

そもそも見積もり段階では、

試掘調査での情報に基づいているので、

実際にやってみたらもっと汚染されていた等、

ふたを開けてみないと誰にもわからない世界です。

 

【建物関係】

 

■解体費用(取壊費用)

建物自体のRCor木造等の構造

建物の規模が大きいのか小さいのか以外にも、

作業環境の良否も大きな影響があります。

 

たとえば、全部機械で解体できる場合と、

狭くて機械が入らず全部手で解体だったら

全く違ってきますよね。

 

■大規模修繕・耐震補強

どのような工事をどこまで行うのか、

そもそもの前提条件が整理されていないこともあり、

同じ大規模修繕、耐震補強といっても、

ビックリするくらいの差になっていたりします。


2020/09/05

93日の日経に<もがくREIT>として、

「物流系に資金、進む二極化

という記事が掲載されていました。

 

「不動産投資信託(REIT)市場で二極化が鮮明だ。

新型コロナウイルスの影響で

稼働率低下や賃料収入の減少が続く

ホテル系や商業施設系の買いが手控えられる一方、

物流施設系は値上がりが目立つ。」

と書かれています。

 

これまでの二極化

 

これまでの「二極化」は、

都市部と地方との二極化、

便利な駅前と不便な郊外との二極化など、

エリア毎に二極化が広がっていたのが特徴でした。

 

コロナ禍による二極化

 

一方、新型コロナウイルスの影響では、

これまでのエリア毎の二極化だけではなく、

物件種別による二極化も広がってきたことが伺えます。

 

■工業地

 

一括りに工業地と言っても、

物流倉庫系、工場(大工場・中小工場)系では

影響が異なってくると考えます。

 

物流・倉庫系は、巣ごもり消費が伸び、

倉庫需要が増加するとの期待で堅調に推移しています。

 

一方、コロナ禍による需要急減などで

操業が停止した工場系はダメージを受けています。

 

さらに、大企業が所有する大規模工場より、

中小企業が所有する中小工場のほうが

大規模工場より大きなダメージを受けていることも。

 

■商業地

 

店舗、ホテル、オフィスビル等で

影響が出てくるタイミングが変わってきます。

 

店舗やホテルは、需要蒸発により

ダイレクトに収益を直撃し、

業績への打撃がタイムリーに顕在化します。

 

一方、オフィスビルは賃貸借契約により

解約まで数ヶ月必要な場合が多く、

店舗やホテルのように

タイムリーには収益に影響を与えません。

 

ただ、今後は在宅勤務の普及等により

オフィスビルについても影響は避けられず、

今後じわじわと影響が出てくるものと思われます。

 

NAV倍率

 

不動産を時価評価した純資産価値に対する

投資口価格の割安度を表す指標です。

株式の株価純資産倍率に相当します。

 

現在は、物流系REIT1倍以上、

商業系REIT1倍未満が多いです。

 

不動産のうち収益物件は、

収益価格(その物件からいくら儲かるか)で

時価が決まります。

 

商業系の店舗・ホテル・オフィスビル等では

テナントからの賃料減額要請も多く、

賃料減額=収益性低下=収益価格(時価)低下です。

 

NAV倍率が最も低いもので0.5倍、

純資産が「1」あるのに「0.5」でしか

評価されていないことになります。

 

仮に、収益や賃料の大きな下落で、

0.5」が市場における適正価格だとしたら、

将来的に純資産価格が半減してもおかしくないかもしれません。

(もちろん単なるイメージで極端な解釈ですが)

 

商業系の不動産価格は下落していくことになり、

これまで地価上昇をけん引していた

ホテルの市場動向からも目が離せなくなります。


2020/09/03

91日の日経に「コロナ禍 不動産売却したい」

という記事が掲載されていました。

 

「保有資産の売却で手元資金を増やしたり、

自己資本を充実させたりするのが目的だ。」

と書かれています。

 

「セール&リースバック」

 

事業用の不動産では、

不動産の信託受益権を譲渡し、

買い主に賃料を支払いながら

同じ場所で営業を続けることができる

セール&リースバックを検討されたりします。

 

信託受益権だけではなく、

普通に所有権を売却し、

改めて賃貸借契約を結ぶ場合もあります。

 

不動産の売却損益を計上できるほか、

なによりコロナ禍で強まる資金需要の中で

手元にキャッシュを確保できることが大きいです。

 

売買価格

 

ホテル、事業所、オフィスビルなど

事業用の不動産は、適正な時価がわかりにくいです。

 

さらに、現在はコロナ禍で地価動向が一変し、

テナント賃料なども大きく変動し、

より一層わかりにくくなっています。

 

普通の戸建住宅等であれば、

ネットですぐに相場を調べられますが、

物件規模が大きかったり、個別性が強かったりする

事業用不動産の売買価格を決めることは難しいです。

 

そのため、このような場合、

不動産鑑定士にご相談されることが多いです。

 

実際の売買実例価格から価格を求めたり、

事業収益などに基づいて評価をしたり、

様々な観点から適正な価格を求めることができます。

 

単なる評価だけではなく、

簿価との関係や税務リスク対策なども

しっかり検討していくことが大切です。

 

賃 料

 

他方、賃料についても同様です。

いくらで貸す(借りる)ことが適正なのか

あまりにあり得ない賃料だと、

税務リスクが高まってしまいます。

 

こちらも事業用不動産は

ネットで相場を簡単に検索!などできないため、

鑑定士にご相談されることが多いです。

 

価格や賃料が高過ぎor低過ぎたりして、

みなし贈与や利益供与のようなことにならないよう、

簿価や決算との関係等にも留意し、

なにより企業活動を継続して頂けるよう

鑑定士としっかりご相談されることをオススメいたします。

 

リバースモーゲージ


なお、普通の戸建住宅の場合でも、

「リバースモーゲージ」といって、

持ち家を担保にして、そのまま住み続けながら

銀行から融資を受けられる仕組みがあります。

士業の先生の不動産評価に関するご相談、お待ちしています

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