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士業に役立つ不動産評価まめ知識

2020/10/29

10/28のニュースで、

「新型コロナウイルスの影響で地価が下がる中、

国税庁は相続税などの計算の基準となる

「路線価」の補正を検討してきましたが、

引き下げないことを決めました。」

と出ていました。

 

【路線価の補正】

 

7月に発表された令和2年の路線価は、

令和211日時点の価格であり、

新型コロナウイルスの影響が考慮されていないため、

地価が20%以上下落する状況が

全国の広範囲に及んでいないかなどを目安に、

国税庁は路線価の引き下げの検討を進めていました。

 

20%以上の下落というのは、

路線価が時価の80となっているため、

それを下回るような状況ということになります。

 

【今年前半の地価動向】

 

以前のブログにもアップした

基準地価の地価動向によると、

近畿では最大でも

大阪ミナミの半年間▲18.8でした。

 

大半の商業地が±0.0%から▲10まで。

住宅地では横ばいから微減程度が多く、

路線価の補正率を設定するほどの

地価下落は無かったことになります。

 

【今後の地価動向】

 

住宅地は大きな下落は無さそうですが、

商業地はこれからも下落が続く可能性があります。

 

オフィスや店舗では、すぐに退去したくても

3ヶ月〜6か月前に解約通知

しなければならない契約になっていることも多く、

影響はこれからさらに出てくる可能性も高いです。

 

【個別物件】

 

上記はいずれも地域の全体的な地価動向です。

個別物件の価格を検討する場合は、

さらに個別具体的に検討する必要があります。

 

地域的に大きな下落が無いエリアの物件でも、

テナント退去が相次ぎ、賃料が大きく下がり、

今後も入居がすぐに見込めない場合など、

大きく価格が下がる可能性があります。

 

このような個別の状況を知りたい場合は、

ゼヒ不動産鑑定士にご相談ください。

 

<路線価について(国税庁ホームページ)>


「路線価及び評価倍率は、

毎年11日を評価時点として、

地価公示価格、売買実例価額、

不動産鑑定士等による鑑定評価額、

精通者意見価格等を基として

算定した価格の80により評価しています。」


2020/10/13

40年ぶりの民法改正で

新しくできた配偶者居住権について、

不動産鑑定士の立場から

評価の中身を見ていきたいと思います。

 

絶対的な評価の解説ではなく、

鑑定士として疑問に思ったことを挙げてみた

あくまでも一考察という位置づけです。

 

以下の3点を問題提起として

取り上げたいと思います。

 

【基準となる土地建物価格】

 

国税庁「No.4666配偶者居住権等の評価」によると、

土地:居住建物の敷地の用に供される土地の相続税評価額

建物:居住建物の相続税評価額

となっています。

 

要は、土地は路線価に基づいた評価額であり、

建物は固定資産評価額を使って評価するということです。

(倍率地域については、土地も固定資産評価額×倍率)

 

このブログでもこれまで上げてきたとおり、

財産評価基本通達は非常によくできた制度ですが、

千差万別の不動産について、

100%完全に適正な評価を行えるものではありません。

 

とすると、スタートとなる上記価格について、

適正に評価されていない場合があり得るということです。

 

適正に評価されていない価格に基づいて

配偶者居住権の価格を評価しても、

適正ではない価格になっている可能性があります。

 

基準となる土地建物価格が適正に評価されているか

不動産鑑定士にお問い合わせ頂くことも

一手ではないかと考えます。

 

【現在の価格or将来の価格】

 

配偶者居住権付の土地の評価額は、

現在時点の評価額×複利現価率を乗じて求めています。

 

しかし、割引現在価値を求める場合、

本来的には、配偶者居住権が消滅する

将来時点の評価額×複利現価率

なるのではないかとの疑問が生じます。

 

具体例を挙げると、

現在時点 5,000万円

将来時点 2,000万円

存続年数20年の複利現価率 0.554

 

5,000万円 × 0.554 2,770万円

2,000万円 × 0.554 1,080万円

 

ただ、現実的に20年後の評価額を

正確に求めることは難しく、

現在時点の価格を将来時点の価格として、

もしくは土地価格の変動なしとして

“取り扱う”ということなのかなと思いました。

 

しかし、人口減少で長期的には

不動産価格が下落傾向にある日本において、

将来の土地価格の変動(下落)リスクは大きいです。

 

【 時 価 】

 

平成24816日裁決によると、

相続税法第22条に規定する「時価」とは、

「取得の時における不特定多数の当事者間

自由な取引が行われる場合に

通常成立すると認められる価額を示すもの」

とされています。

 

ここで一般論として疑問に思うのは、

5,000万円の土地を20年後に取得できるとして

2,770万円で買う人がどれだけいるのか、です。

 

期間が510年と短くて有期であればまだしも、

20年などの長期や、期間が決まっていない場合、

上記の価格で自由な取引が通常成立するのでしょうか。

 

税務署はこの評価しか受け付けないとのことですが、

本当の“時価”かというと、その他の場面では

不満や争いが生じる可能性もありそうだなと感じました。


2020/10/09

大阪市における固定資産税の

過大徴収のニュースについて。

 

容積率が異なる地域にまたがる土地について、

固定資産税が過大徴収されていたというものです。

 

数百万円還付された方もいるとのことですが、

地方税法では5という時効があるため、

さらに国家賠償法による

20分の還付を求めているとのことです。

 

不動産鑑定士も固定資産評価業務に携わっているので、

ブログに取り上げてみました。

 

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前面道路

-------------------------------

 ↑       | 

| 容積率 400%  | 道路から25mまで

| ↓       | ↓

--------------------------------

| ↑       | ↓

| 容積率 200%  | 道路から25m超

| ↓       | ←この部分!!

--------------------------------

 

固定資産評価実施要領

 

固定資産評価は、

総務省が定めた固定資産評価基準に基づくほか、

各市町村で独自の評価要領を持っています。

 

大阪市では「固定資産評価実施要領」を持っていて、

その中に「所要の補正」として

「容積率の異なる地域にわたる土地の評価」

定められています。

 

容積率が400%と200%に

またがっているような土地を評価する場合に

適用されることになります。

 

大阪市の補正率は66~97%(▲3%〜▲33%)

最小で▲3%、最大で▲33%もの評価減となります。

 

固定資産評価額は、道路側の高い容積率に基づいて

評価されていることがほとんどですので、

背後の低い容積率にもまたがっている場合は、

評価の前提条件と対象土地の個別性が異なるため、

何らかの考慮(一定の減価)が必要となります。

 

容積率の異なる地域にわたる土地

 

容積率が異なって指定されている土地とは、

広い道路沿いの商業地等が該当する可能性が高いです。

 

仮に、容積率が400%と200%異なっていると、

大きな方の容積率400%が適用されるのではなく、

面積に応じて加重平均された容積率となります。

 

仮に土地の半分ずつ400%と200%だったら、

その土地の容積率は300%になるというイメージです。

 

商業地は高層建物など高度利用されることが多く、

実際の取引でも容積率如何で価格が大きく異なります。

 

他の市町村ではどうなのか

 

今回の大阪市はたまたま所要の補正として

減額できる項目を持っていましたが、

必ずしも他の市町村が

同じ補正項目を持っているとは限りません。

 

実際の業務においても、

容積率がまたがっていることは認めつつも、

補正する項目が無いため減額不可と

回答されたことがあります。

 

お住まいの市町村ではどうなのか。

一度確認してみるのもよいかもしれません。

 

< 参 考 >

「オ 容積率の異なる地域にわたる土地の評価

容積率の異なる地域にわたる土地については、

正面路線に接する部分の容積率に対する

他の部分の容積率の割合及び

当該土地の面積に対する他の部分の面積の割合に応じて、

次に定める補正率表により求めた

補正率によって補正することができる。

 

ただし、正面路線に接する部分の容積率が

他の部分の容積率よりも低い場合については、

補正を適用しない。」

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