士業専用ダイヤル
10/28のニュースで、
「新型コロナウイルスの影響で地価が下がる中、
国税庁は相続税などの計算の基準となる
「路線価」の補正を検討してきましたが、
引き下げないことを決めました。」
と出ていました。
【路線価の補正】
7月に発表された令和2年の路線価は、
令和2年1月1日時点の価格であり、
新型コロナウイルスの影響が考慮されていないため、
地価が20%以上下落する状況が
全国の広範囲に及んでいないかなどを目安に、
国税庁は路線価の引き下げの検討を進めていました。
20%以上の下落というのは、
路線価が時価の80%となっているため、
それを下回るような状況ということになります。
【今年前半の地価動向】
以前のブログにもアップした
基準地価の地価動向によると、
近畿では最大でも
大阪ミナミの半年間▲18.8%でした。
大半の商業地が±0.0%から▲10%まで。
住宅地では横ばいから微減程度が多く、
路線価の補正率を設定するほどの
地価下落は無かったことになります。
【今後の地価動向】
住宅地は大きな下落は無さそうですが、
商業地はこれからも下落が続く可能性があります。
オフィスや店舗では、すぐに退去したくても
3ヶ月〜6か月前に解約通知を
しなければならない契約になっていることも多く、
影響はこれからさらに出てくる可能性も高いです。
【個別物件】
上記はいずれも地域の全体的な地価動向です。
個別物件の価格を検討する場合は、
さらに個別具体的に検討する必要があります。
地域的に大きな下落が無いエリアの物件でも、
テナント退去が相次ぎ、賃料が大きく下がり、
今後も入居がすぐに見込めない場合など、
大きく価格が下がる可能性があります。
このような個別の状況を知りたい場合は、
ゼヒ不動産鑑定士にご相談ください。
<路線価について(国税庁ホームページ)>
「路線価及び評価倍率は、
毎年1月1日を評価時点として、
地価公示価格、売買実例価額、
不動産鑑定士等による鑑定評価額、
精通者意見価格等を基として
算定した価格の80%により評価しています。」
約40年ぶりの民法改正で
新しくできた配偶者居住権について、
不動産鑑定士の立場から
評価の中身を見ていきたいと思います。
絶対的な評価の解説ではなく、
鑑定士として疑問に思ったことを挙げてみた
あくまでも一考察という位置づけです。
以下の3点を問題提起として
取り上げたいと思います。
【基準となる土地建物価格】
国税庁「No.4666配偶者居住権等の評価」によると、
土地:居住建物の敷地の用に供される土地の相続税評価額
建物:居住建物の相続税評価額
となっています。
要は、土地は路線価に基づいた評価額であり、
建物は固定資産評価額を使って評価するということです。
(倍率地域については、土地も固定資産評価額×倍率)
このブログでもこれまで上げてきたとおり、
財産評価基本通達は非常によくできた制度ですが、
千差万別の不動産について、
100%完全に適正な評価を行えるものではありません。
とすると、スタートとなる上記価格について、
適正に評価されていない場合があり得るということです。
適正に評価されていない価格に基づいて
配偶者居住権の価格を評価しても、
適正ではない価格になっている可能性があります。
基準となる土地建物価格が適正に評価されているか
不動産鑑定士にお問い合わせ頂くことも
一手ではないかと考えます。
【現在の価格or将来の価格】
配偶者居住権付の土地の評価額は、
現在時点の評価額×複利現価率を乗じて求めています。
しかし、割引現在価値を求める場合、
本来的には、配偶者居住権が消滅する
将来時点の評価額×複利現価率に
なるのではないかとの疑問が生じます。
具体例を挙げると、
現在時点 5,000万円
将来時点 2,000万円
存続年数20年の複利現価率 0.554
5,000万円 × 0.554 = 2,770万円
2,000万円 × 0.554 = 1,080万円
ただ、現実的に20年後の評価額を
正確に求めることは難しく、
現在時点の価格を将来時点の価格として、
もしくは土地価格の変動なしとして
“取り扱う”ということなのかなと思いました。
しかし、人口減少で長期的には
不動産価格が下落傾向にある日本において、
将来の土地価格の変動(下落)リスクは大きいです。
【 時 価 】
平成24年8月16日裁決によると、
相続税法第22条に規定する「時価」とは、
「取得の時における不特定多数の当事者間で
自由な取引が行われる場合に
通常成立すると認められる価額を示すもの」
とされています。
ここで一般論として疑問に思うのは、
5,000万円の土地を20年後に取得できるとして
2,770万円で買う人がどれだけいるのか、です。
期間が5〜10年と短くて有期であればまだしも、
20年などの長期や、期間が決まっていない場合、
上記の価格で自由な取引が通常成立するのでしょうか。
税務署はこの評価しか受け付けないとのことですが、
本当の“時価”かというと、その他の場面では
不満や争いが生じる可能性もありそうだなと感じました。
大阪市における固定資産税の
過大徴収のニュースについて。
容積率が異なる地域にまたがる土地について、
固定資産税が過大徴収されていたというものです。
数百万円還付された方もいるとのことですが、
地方税法では5年という時効があるため、
さらに国家賠償法による
20年分の還付を求めているとのことです。
不動産鑑定士も固定資産評価業務に携わっているので、
ブログに取り上げてみました。
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前面道路
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| ↑ |
| 容積率 400% | 道路から25mまで
| ↓ | ↓
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| ↑ | ↓
| 容積率 200% | 道路から25m超
| ↓ | ←この部分!!
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固定資産評価実施要領
固定資産評価は、
総務省が定めた固定資産評価基準に基づくほか、
各市町村で独自の評価要領を持っています。
大阪市では「固定資産評価実施要領」を持っていて、
その中に「所要の補正」として
「容積率の異なる地域にわたる土地の評価」が
定められています。
容積率が400%と200%に
またがっているような土地を評価する場合に
適用されることになります。
大阪市の補正率は66%~97%(▲3%〜▲33%)。
最小で▲3%、最大で▲33%もの評価減となります。
固定資産評価額は、道路側の高い容積率に基づいて
評価されていることがほとんどですので、
背後の低い容積率にもまたがっている場合は、
評価の前提条件と対象土地の個別性が異なるため、
何らかの考慮(一定の減価)が必要となります。
容積率の異なる地域にわたる土地
容積率が異なって指定されている土地とは、
広い道路沿いの商業地等が該当する可能性が高いです。
仮に、容積率が400%と200%異なっていると、
大きな方の容積率400%が適用されるのではなく、
面積に応じて加重平均された容積率となります。
仮に土地の半分ずつ400%と200%だったら、
その土地の容積率は300%になるというイメージです。
商業地は高層建物など高度利用されることが多く、
実際の取引でも容積率如何で価格が大きく異なります。
他の市町村ではどうなのか
今回の大阪市はたまたま所要の補正として
減額できる項目を持っていましたが、
必ずしも他の市町村が
同じ補正項目を持っているとは限りません。
実際の業務においても、
容積率がまたがっていることは認めつつも、
補正する項目が無いため減額不可と
回答されたことがあります。
お住まいの市町村ではどうなのか。
一度確認してみるのもよいかもしれません。
< 参 考 >
容積率の異なる地域にわたる土地については、
正面路線に接する部分の容積率に対する
他の部分の容積率の割合及び
当該土地の面積に対する他の部分の面積の割合に応じて、
次に定める補正率表により求めた
補正率によって補正することができる。
ただし、正面路線に接する部分の容積率が
他の部分の容積率よりも低い場合については、
補正を適用しない。」
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